やったぜ
クラントン領のクロノスの引き渡しは、一ヶ月ほどかかったが、無事に完了した。
エンデが自らの非を認め、正式に謝罪をし引き渡したからだ。こちらの脅しが相当効いたらしい。
カルロはすっかりシャロンと俺に怯えて、俺達を見ると逃げるようになってしまった。
ちなみにこちらを裏切っていた幹部は、しっかりとこの後処刑された。
この一件で、クラントン伯爵家は大きくその名を落としたが、一方パンクハット子爵家は大きく名を上げた。
三倍に近い兵力差をひっくり返したその手腕が大きく評価された。だが、リズリーの顔は暗い。
「奴はやはりたいした情報を持っていなかった。バーナビー公爵は末端に情報など流さないということか……」
メーティスを使っても確認したが、どうやら本当に大した情報を持っていなかった。
メーティスで、奴が裏社会の元締めであることは分かっているが、世間は俺のスキルなんて証拠として扱ってくれるわけがない。
事実だけでなく証拠が大事なのだ。
「まあ、仕方ありません。こちらが権力をつければ、手に入る情報も多くなります。今は力をつける時期です」
「ああ。分かっている。褒美も追って伝える。楽しみにしておけ」
「有難く」
表情を変えずに言ったが、内心はわくわくである。
いったいいくらもらえるのだろうか。もしかしてこれから所有するクロノスもらえたりしないかな?
そんな俺についに褒美の連絡が来た!
土地だ。広大な。これだけ聞くと、素晴らしい褒美だ。これだけ聞くと。
俺は通りに全く人が居ない上に、活気とはすっかり無縁になっているゴーストタウンとなっている村に目をやる。
「え? これ人いるよね?」
広大な土地に、小さな村。人数は全部で五百人程。まあまあの規模である。だが、ようやくあった人の顔は暗い。
そしてシビル隊として正式に百人部下を持った。五百人居たシビル隊から、七十五人。帝国軍から二十五人の計百人だ。
『シビルへ
この間の内戦じゃお世話になった。お礼に土地を譲る。五百人規模の村があるから頑張ってくれ。実を言うと、そこの村は主要産業を失って税金もまともに払えない状態なんだ。君のスキルを使ってなんとかしてくれ
By リズリー』
貰った辞令には、綺麗な字でこう書かれている。
はい? 俺は村の運営なんてしたことねえぞ?
だが、これで村人に活気がない理由が分かった。この村、廃村の危機ってコト?
「都落ちっぽいね」
ぽつりとダイヤが言う。
「言うな……何も。これから村として発達するんだから」
「これのどこが町なのよ」
呆れたように言ったのは、ネオンだ。
「まあ、村と町の違いなんて些細なものだ」
「話が違うじゃない! 町の領主になったから店を建てていい、と聞いてたのにこれじゃ店もできないわよ!」
「いやー、ここまで小さいとは。小さい雑貨屋さんもいいものだぞ」
俺はネオンに胸倉を掴まれ前後に振り回される。
「どうやってそれで大商会になるのよ!」
「あばばばばば。俺にも分からん。そういえば彼が居ないね?」
俺は今なら聞けると、イケメンについて尋ねる。
「え? エバンスのこと? あいつならお父さんに呼ばれて帰ったわよ。父さんに行商人について学べ、って言われて来ただけだからね」
「お父さん?」
「そういえば、言ってなかったっけ? 弟なのよ。うちは親族皆商人でね。親の商会が最近忙しいみたい。うちの実家は結構大商会で人手も足りないの」
弟だったのか。そう聞くとあの親しさにも納得がいく。
考えている俺を見てネオンがにたりと笑っている。
「なにー? 気になったの? エバンスと私の仲を疑っていたのかしら?」
「いや、そういうわけじゃ無いんだけど……」
全て間違っている訳ではないため、言い訳もし辛い。
俺はなんとか無理やり話を変える。
「とりあえず、村長に挨拶するか」
こうして俺は念願の領主になった。
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