表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/362

何が目的だ?

 ずぶ濡れで縄で縛り上げられたエンデが、俺やリズリーの前に現れる。その顔は悲壮感よりも、怒りが勝っていた。


「やってくれたな、小僧。伯爵を殺せばただじゃ済まんぞ。予め、山賊狩りの名目でそちらに来たことは伝えてある。うちの親族がなんというかな?」


「それはご心配なく。バルデン侯爵が保証人となってくれますので」


 リズリーの言葉の後に、バルデン侯爵が現れる。年は四十後半くらいだろうか。横分けにした銀髪に、銀の髭が特徴である。細く、背が高いためほっそりとした印象を受けた。


「随分暴れたね、エンデ」


「くっ、バルデン。お前まで手を組んでいたとはな」


 エンデはバルデン侯爵を睨みつける。


「手を組んだも何も、こちらに非がないことを証明してくれと言われただけだ。兵は一人すら出してはいない。寄子のためにそれくらいはするさ。面白いものを見せて貰ったよ。証言はしっかりしよう。ではな」


 バルデン侯爵はそのまま馬に乗ると、部下と共に、去っていった。


「ちっ! で、リズリー、何が目的だ? 金か? 息子は生きているんだろうな?」


 諦めたのか、エンデが交渉に入る。


「息子さんが生きたまま帰れるかはあなた次第だ。クロノスと、情報を寄越せ」


「クロノスを!? 冗談じゃない! あれはうちの主要都市だぞ! 渡せる訳がない」


「いやー、渡せる。クラントン家滅亡の危機だろう?」


「ふざけるな、小僧! 儂を今殺しても、お前の物にはならんわ。帝国が貰うだけよ!」


 殺される覚悟ができているのか、吠えるエンデ。


「シビル」


「はい」


 リズリーの言葉を聞き、俺はエンデの前に一枚の書類を出す。それを見たエンデがわなわなと震え始める。


「どこでこれを知った!」


「秘密です。あんた、愛妻家で有名らしいね。ラブラブで羨ましいねぇ」


 俺が笑うと、エンデは怒りで鬼のような形相に変わる。

 俺がエンデに見せたのは奴の不倫の情報である。諜報員の一人が、エンデが女と密会しているのを見たというので、メーティスで調べ上げた。すると驚くべき情報が手に入った。奴は愛妻家という肩書の裏で、愛人を作り、子供まで生ませていた。


 貴族としてはよくある話だが、愛妻家として知られているため隠していたのだろう。


「あんたがうちの条件を呑まなかったら、この情報は全てあんたの奥さんに流すぜ。子供も、愛人の情報も全てな。どうなるかな? この情報を聞いた後でも、奥さんはあんたを庇ってくれるか確かめるかい?」


 それを聞いたエンデは震えていた。よほどばれたくないらしい。愛人の子供は男だし、下手をしたら跡目争いすら起こるだろう。


「……む」


「え?」


「そちらの条件を呑むと言っているんだ!」


 エンデは怒鳴る。俺はにっこりと笑い、リズリーの方を見る。


「ありがとう。クラントン伯爵。決断が早くて助かるよ。あんたと息子の解放は完全にクロノスを頂いてからになるからしばらくかかると思うが、許してくれ」


「分かっておるわ」


 エンデは全てを諦めたような顔をして頷いた。


「おい、お前が今回の戦の軍略を練ったのか?」


 エンデが俺に尋ねる。


「ああ」


「未来が読めるというのは本当らしいな」


「なんでもでは無いですよ」


「ちっ! 化物に手を出してしまったようだな。あまり目立ちすぎないことだ。出る杭は打たれるぞ」


 エンデの忠告に俺は唾をのむ。


「ご忠告感謝する」


 エンデはその後、兵士に連れていかれた。


「今回はよくやってくれた、シビル。褒賞は約束しよう」


 リズリーが俺の肩に手を置き、言う。


「ありがとうございます」


 俺はそう言って連れていかれるエンデの姿を見送っていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ