始まり
「敵襲! 敵襲! パンクハット騎士団の者が夜襲に! 火をつけて回っています!」
エンデを起こしたのは、明け方前の部下の叫び声であった。エンデはすぐさま武器を取ると、部下に話を聞く。
「敵勢は何人だ?」
「百程度かと」
「なんだ、その人数は。嫌がらせか?」
「建物に火をつけると同時に、味方が何人も斬られています」
「その程度の人数、さっさと殺せ」
「ですが、中々手練れでして……。今追ってます」
「勝てないから、と嫌がらせに出たか?」
エンデが眉を顰め考えていると、幹部の一人が天幕にやってきた。
「エンデ様、追って殺すべきです。今ならまだ追えます。ご決断を。既に犠牲者が何人も。このままじゃ士気に関わります」
続々と部下が追撃の許可を取りに現れる。
(罠の可能性もある……。が、百程度すら逃がしては士気に関わるのも事実。さっさと殺すべきか)
「お前ら、全員叩き起こせ! 奴等にクラントン軍の強さを教えてやれ!」
エンデの号令と共に、幹部含めた兵士達が一斉に動き始める。
すぐさま用意を終えた一万の兵士達が奇襲をかけてきたパンクハット軍を追う。
「奴等、ケルル河を渡って逃げている! 逃がすな!」
奇襲をかけてきたパンクハット軍は全員騎兵であり、素早い撤退を見せる。
河は連日の雪により、いつもより深く冷たくなっていた。
一万のクラントン軍の兵達が河を渡り始める。
動きの速いパンクハット軍の騎兵達は皆、渡河を終え、自陣に逃げ込む。
「何が目的だ? 渡河中を狙うつもりかと思ったが……」
エンデは精鋭に囲まれつつも、渡河をしていたがまだ矢が降り注ぐ気配はない。それどころか、先陣を切っていた騎兵も渡河を終える。
(まあ、いい。予定より早くなったが、もう終わらせる!)
「全軍、突撃せよ!」
エンデの叫び声と共に、渡河を兵が一斉にパンクハット軍へ向かう。
「見事に釣れたな」
エンデは冷めた目で戦場を見つめる。奴等が渡河を警戒していることには気付いていた。だが、シビルが狙っていたのは渡河中の隙だけではない。
馬に乗っている騎兵は関係ないが、真冬の早朝、冷え切った河を渡った歩兵は動きが格段に落ちる。体が冷え切り、思う通りに動かないからだ。
歩兵が八割を占めるクラントン軍の弱体化を狙うことが目的である。
「弓兵、構えよ! 放て!」
命令と共に、クラントン軍へ矢の雨が降り注ぐ。こちらは既に布陣を終えている。だが、クラントン軍はまだ半分以上が渡河の途中である。
「狙い放題だ! 一気に勝負を決めろ!」
雪で視界が埋まる中、矢を避けることは非常に厳しい。
「ぎゃああ!」
相手側から悲鳴が聞こえる。まだ歩兵が渡河をしている今がねらい目である。
「どんどん狙っていけ」
そう言いつつも、既に次の策への命令を下す。矢を受けつつも、クラントン軍の騎兵はこちらを狙い襲い掛かって来る。もうクラントンの一陣目である騎兵は直前まで来ている。
「投槍に変えろ。そして、第一軍、出番だ」
「はっはっは! やっと出番か! 血沸く血沸く!」
そう言って、馬に騎乗したのは第一軍隊長フレイである。
「歩兵の戦力は落としたが……、人数差はそこまで変わっていない。血を流させることになる」
「血も流さない戦なんて、戦と呼べねえよ! エンデの首を落として、戻ってきてやる」
リズリーの言葉に、笑いながら言うフレイ。リズリーはフレイを信用しているのか、ただ笑った。
「お前ら、奴等を殺しに行くぞ! 全軍、突撃ダア!」
「「「「「応!」」」」」
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