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戦の気配

 そして決戦前日、雪が降り積もり始める中、両陣営が決戦の地に辿り着く。最前線の小さな砦は既にクラントン家に落とされたようで、敗北した兵がこちらに合流していた。

 敵も順調に進んでいるようで、ケルル河付近に陣を構えているのが見てとれる。

 河は北から南に流れており、河の東側にパンクハット軍、西側にクラントン軍が陣を構える。こちらは三千。あちらは一万。人数差が一目で分かる。


「雪のせいで、視界が悪いな」


 そう言って、ギザギザの歯を見せて笑うのは、赤髪の大男である。

 身長は百八十後半ほど。真っ赤な髪を後ろに流し、一房だけ前に垂らしている。鋭い人相の悪そうな顔に、鍛え上げられた体は、軍人と言われなければ、悪党にしか見えないだろう。

 大男がリズリーに言う。


「俺は策なんてもんは要らねえとは思うが、アイデア自体は面白かったぜ。まあその策ってのが失敗しても俺がエンデの首を獲ってやるから心配すんなよ」


 この男こそは今回の第一軍の隊長を務める問題児フレイである。

 その強さを認められ騎士団にスカウトされたものの、気に入らない上官を斬り殺し、処刑寸前のところをリズリーに救われた。

 だが、戦争以外の時は女のところをふらついているらしく領内でも見ることはまれな男だ。


「計画通り、動いてもらう。異論はないな?」


「へいへい、分かってるよ。既に五回以上言われたぜ。信用ないねえ」


 と言って笑う。

 どうお前を信用しろと言うのだ、とリズリーが溜息を吐く。

 だが、彼には細かい策を弄する隊には入れていない。斬り合い専門だ。


 彼はスキル『獄炎』を持つ数少ない男である。獄炎を纏わせた大矛で敵を一瞬で斬り裂く姿は赤鬼と恐れられるほどだ。

 既に伏兵は事前に忍ばせている。雪で視界も悪い中、戦は始まろうとしていた。 




 夜、クラントン騎士団の天幕では明日へ向けて軍議が開かれていた。


「エンデ様の狙い通り、敵は三千しか居ませんな。千人は賊退治に狩りだしたのでしょう」


「四千でもたいして変わらんでしょうがな。誤差ですよ、誤差。それよりエンデ様、このたびどこまで戦う予定で? リズリーの若造を討ち取るおつもりですか?」


 それをエンデは黙って聞いていた。


(何か策があるのでは? だが、策があったとしてもあまりにも人数差が大きい。奴等が勝てるとはとてもじゃないが思えん……)


 こちらは既に勝利後の話すらしていた。圧倒的戦力差に、油断していた。


「とりあえずは生け捕れ。その後考えよう」


「はい」


「こんなに要らんかったかもしれんな」


 と幹部が笑う。実際は伯爵家でも一万人の動員は中々辛いものがある。歩兵が八千人とはいえ大きな負担であった。


「あまり油断はしないように。明日、ケルル河を渡り決着をつける。渡河の時に犠牲が出るかもしれんが、それは仕方あるまい。戦力差で一気にリズリーを捕らえよ」


「「「はっ!」」」


 こうして夜が更けていく。

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