お前が言うな
それから三日後、俺は軟禁されながらシャロン達が戻って来るのを待っていた。
『シャロンの救出は成功した?』
『イエス』
どうやら救出は無事成功したようである。その旨をガルシア男爵に伝えても、息子を見ないことにはの一点張りだ。明日にはシャロンがこちらに辿り着くだろう。
屋敷で昼食を食べた後に、屋敷に来客が来たようだ。
「シャロンか?」
だが、軟禁されている俺達に確認する手段はない。すると、部屋の扉が開く。だが現れたのはシャロンではなくガルシア男爵と、部下の兵士だ。
武器を持った兵士達が、俺達を囲む。
「どういうことですか? ガルシア男爵」
嫌な予感がする。俺達を見る目が敵を見る目である。
「悪いが事情が変わった。君達を捕らえさせてもらうよ」
ガルシア男爵は無情にもそう告げた。
「どうしてですか! 明日には息子さんが戻ってきます! 私達は共に歩めるはずです!」
「君達のことは信じたいが、クラントン伯爵から連絡が来てね。もう出陣して欲しいとのことだ。命令には逆らえない。私達はもうここを出る。すまない……許してくれ。確実でないものに、息子の命をかけることなどできん……」
後半は消え入るような声でガルシア男爵が言う。彼にとってもこれは苦渋の決断なのだろう。
こちらの想定よりも、動きが速い! ここから戦場までは一日もかからないはずだ。
「リズリー様は、貴方を微塵も疑いませんでした。貴方をずっと信じていたのです! どうか、もうすこしだけお待ちください! 私の仲間は必ず、貴方の息子さんを救ってここに戻って参ります。命をかけた戦士のために、あと少しだけお時間を頂けませんか?」
俺は精一杯思いを伝える。もう少し、もう少し待ってくれれば、息子さんとも会えるのだ。扉が再度開くと、クラントン家兵士士が中に入って来る。
「貴様、パンクハット軍の者のようだな。敵軍と繋がっていたのか?」
兵士がガルシア男爵を睨みつける。
「違う。どう見ても監禁されているだろう。こちらに助力を求めてきたが、断ったうえで捕らえたのだ」
ガルシア男爵は毅然と言い放つ。
「愚かな。そういえば、ガルシア男爵家と、パンクハット子爵家は親密な仲と聞く。わらにもすがる思いでこちらに助けを求めたのかな? 滑稽だな! 仲が良いと思っていたガルシア家の裏切りによってお前達は滅びるのだ! 所詮その程度の仲ということだ!」
クラントン家の兵士は嘲笑うように言う。ガルシア男爵はその言葉に何も反論できず、唇を噛んだ。
だが、俺はその言葉に我慢ならなかった。
「お前が……お前が言うな! ガルシア男爵の友情は本物だ! それを、子供を盾に取り裏切らせたのはお前達だろう!」
「このクソガキが……! おい、今すぐこの男を殺せ! こいつは敵だ!」
俺の言葉に苛ついた騎士が叫ぶ。
感情的に叫んだが、危険かもしれん。ガルシア男爵は眉間に皺をよせながら沈黙を貫く。
「絆されやがって! 俺が殺してやる!」
クラントン家の兵士が剣を抜く。
やばい……。いざとなれば、実力突破か?
俺はランドールに手をかけた。アンネも構える、ここで死ぬわけにはいかない。俺達は覚悟を決めた。
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