プレゼントは?
しばらくは共に行動していたが、シャロン達の行き先はクラントン領である。クラントン領、ガルシア領はパンクハット領から見て西側、南側にある。行き先が違うのだ。
「シャロン、任せたよ」
男装したアンネこと、アイクがシャロンに声をかける。なぜか二人は馬が合うのか道中仲良く話していた。
「ああ。任せておけ」
シャロン達は、クラントン領に向かった。
「子供の救出は彼女達だけで大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫だ。俺達は、このことをガルシア男爵に伝えに行く」
馬を駆り、俺達は男爵家に向かった。
男爵領はパンクハット領よりも、のどかな場所だった。自然が多く、子供がのびのびと過ごしやすそうな場所である。
ガルシア男爵の屋敷はリズリーさんの屋敷より少し小さいが、住みやすそうな屋敷だった。
俺はリズリー様の代理人として今回訪問する。
「ようこそ、シビル君。パンクハット騎士団の軍師だって? この前会ったね」
ガルシア男爵は気さくにこちらを見ながら挨拶する。笑顔だが、どこかぎこちなさを感じる。時期が時期だからピリピリしているのかもな。
『近くにクラントン家の見張りが居る?』
『イエス』
やはり見張られている。
俺は、近くに控えている部下の中から、クラントン家の見張りを特定する。
「奥様の誕生日がそろそろと伺っています。リズリー様からプレゼントを預かって参りました。個室でお渡ししたい」
俺がそう言うと、ガルシア男爵は一瞬見張りに目を向けた後、頷く。
「ありがとう。あっちで頂くよ」
ガルシア男爵に連れられ、個室に案内される。
「プレゼントは何だい?」
「プレゼントは、お子様です。ガルシア男爵」
俺の言葉を聞き、ガルシア男爵の動きが止まる。
「……知っていたのか。勿論、リズリーも――」
「はい。存じております。貴方達が五日後に挙兵して、クラントンと共にこちらを襲おうとしていることも」
「……そうか。あいつには、知られたくなかったな」
ガルシア男爵はポツリと呟く。
「現在こちらの者が、息子さん救出のために動いております。無事お救いできた暁には、こちらの援軍として戦って貰えないでしょうか?」
俺は頭を下げる。
「勿論、本当に息子を救出してもらえたら、リズリーのために剣を振るおう。だが、こちらも息子を救出するため手を尽くした。だが、厳重で近づくことすらできなかった。そう簡単に行くとは思えないが……」
ガルシア男爵が難しいのではないか、と言外に伝えてくる。
「こちらには情報があります。今、お子さんは別の場所に移送されています。地下に閉じ込められていたら、こちらも手は出ません。ですが、移送中の今なら、少数でお子様を狙うことは可能です」
「……君を信じよう。だが、もし失敗により息子が死んだ場合には、血で贖ってもらう」
ガルシア男爵が殺気を漏らす。
「勿論。この作戦が失敗した場合、パンクハット家は滅びるでしょう。それだけの覚悟でこちらも来ています。今から四日後、戦の前日には息子さんと再会できますよ」
「なるほど。良い報告を期待しよう。俺も友人に剣など、向けたくない。自分の命だけで済むならどれだけ良かったか……。悪いがしばらくはここで滞在しておいてもらう」
何かあったときのための人質だろう。これは予想していた。
俺とアンネの二人はガルシア男爵の屋敷で軟禁されることとなった。
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