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愛、愛、愛

「無茶言うな」


「そっちはあんたが考えるのよ。軍師でしょあんた」


「リズリーのために動いているんだろう? ならばれてもいいだろう」


「ハア? 何言ってんのあんた。貴方のために暗殺してますなんて、言えるわけないでしょ! それに……リズリー様は私が手を汚してまで手伝うのを喜ばないわ」


 急に憂いを帯びた顔で言う。乙女心だろうか。


「分かった。このことは言わん。だが、なぜそこまで……」


 ただのメイドにしては忠義心が高すぎる。


「最初に言ったわよね。この屋敷には休みが多いって」


「ああ」


「私の母って病気がちだったの。父は早くに戦争で亡くなって、稼げるのは私だけ。メイドとして雇って貰えただけでも凄くありがたかった。けど、リズリー様は母の看病と仕事を行っていた私の生活を見かねて休みを増やしてくれたの。給料はそのままでね。そのおかげで私みたいなメイドでも母を看病しながら働くことができたわ。おかげで最後も看取ることもできた」


「それは……大変だったね」


「別に私の苦労話はどうでもいいわ。リズリー様は私の大恩人。この命すら捨てても良いと思えるくらいね。私のスキルは『暗殺者』よ。こんな忌み嫌われるスキルでも、リズリー様は笑いながら、君には似合わないね、 と笑ってくれたわ。あの人のためなら私はどれだけでも血を流せる。あの人のためなら……全てを」


 アンネの迫力に俺は思わず、言葉を呑んだ。

 彼女の覚悟と、その献身さに心を打たれたからだ。


「ふう。リズリー様には言わないよ。けど、ちゃんと傷は治療した方がいい。リズリー様だって気付くよ」


「分かってるわ。貴方の策略に従って、ブランを仕留めた。必ずリズリー様にクロノスを献上するのよ」


「ああ、助かった。恋する乙女ってのは無茶をするなあ」


「これは愛よ」


「さようですか。それは失礼した」


 逆らわないでおこう。マジで三枚に下ろされそうだ。


 こうして俺は手の付けられないジョーカー的なカードを手に入れたのであった。そして二つ目も解決した。





 紅葉も終わり始める季節、冬が近いことを風の寒さから感じる。


『ガルシアの子供はクラントン領に居る?』

『イエス』


『今救出に向かっても助けられる?』

『ノー』


 メーティスに色々尋ねてみるも、どうやらよほど厳重に守られているのか、良い返事が貰えない。


 ある都市の地下に軟禁されているようだ。


『一ヶ月後までに地下から出る時はある?』

『イエス』


『二週間以内?』

『ノー』


『三週間以内?』

『ノー』


 その後も尋ねてみると、子供は戦争の五日前に違う場所に移送されるようだ。


「ぎりぎりか……」


 俺は残り時間を計算する。クラントン領から子供を救出して、ガルシア領まで子供の移送はおそらく四日程かかる。前日には、子供をガルシア男爵に引き渡すことができる。


 クラントン領に侵入して、移送中を襲うとなるとそこまで大勢は連れて行けない。俺がガルシア男爵に直接今回の救出作戦について伝え、説得することを考えると、救出はシャロンとダイヤに任せるか。それとも、ガルシア男爵に直接動いてもらうべきか?


『情報をガルシア男爵に伝えて、自ら動いてもらうべき?』

『ノー』


 やはり駄目か。おそらくガルシア男爵領にはクラントン家の見張りが居る可能性が高い。

 俺はシャロンとダイヤに頼むことにした。


「今回の戦、ガルシア男爵の子供の救出は必須だ。俺はガルシア男爵に今回のことを伝え、説得する。二人には子供の救出に向かって欲しい」


「了解した。この間聞いた時には、手の出しようがないと言っていたが、何か良い方法が浮かんだのか?」


「戦の五日前に今の地下室から別の場所に移送される。移送中を狙ってくれ。兵も少しつける。おそらく危険だと思うが、他に任せられる人が居ない。頼めるか?」


「私は副長だ。隊長の命令があれば従おう」


「いいよー」


 シャロンは現在シビル隊の副長をお願いしている。日々、順調に成長しており、今ならハイオーガとも一対一でも勝てるのではないだろうか。

 だが、不安は拭えない。メーティスは大丈夫だと言っているから、大丈夫だと信じたいが。

 救出は二人に任せ、俺は男爵の説得に動こう。

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