陰の者
俺はその後もメーティスに尋ね続け、ある事実に辿り着く。俺はその事実に息を呑んだ。
数日後、俺は深夜とも言える時間にも関わらず、借家を出てリズリーさんの屋敷に向かう。そして、目的の人物がやって来るまで茂みに隠れじっと待っていた。
すると、暗闇に紛れて屋敷に近づく人物をその目で捉える。その人物は、全身を黒装束で固め、静かに屋敷に侵入しようとする。
「何をしているんだ? その恰好、見つからないように隠れているみたいだね? まるで暗殺者みたいに」
俺はその人物に声をかける。声をかけられた人物は、驚いたように振り向くも、口は開かずに沈黙を貫いた。
動きが少しだけ鈍い。よく見ると、左脇腹の服に血が滲んでいる。
「怪我をしているようだね。大丈夫かい、アンネ?」
黒装束を纏ったアンネから返事はなかった。
しばらく沈黙が続いた後、ようやく口を開く。
「……いつ気付いた?」
アンネから殺意が漏れ始める。
「数日前だ。俺はある事実を知った。ブランの死だ。いかにしてブランを仕留めるか、と策を練っていた。なのに突然死んだ。不自然にもほどがある。明らかに誰かの仕業だ。こちら陣営のな。アンネ、貴方は只のメイドの割に随分度胸があるようだな。喧嘩している男達の攻撃を躱し、悠然と進むくらいにはな」
「見ていたのね」
「その情報だけじゃ、勿論確信にはならない。あんたの存在が薄いのもな。だが、俺には疑問をすぐに解決するスキルがある。スキルが言ったのさ、アンネ、あんたがブランを仕留めたとな!」
俺の言葉を聞き、アンネは短剣を両手に構える。俺は同時に弓を引く。
「本当厄介なスキル。貴方の弓と、私の短剣、どちらが速いかしら?」
「落ち着け! 俺は手を組もうと言いに来たんだ!」
俺の言葉を聞き、疑うような目を向けるアンネ。
「リズリー様には言ってないでしょうね?」
「勿論だ! リズリー様は、君が他に仕留めてきた者についても知らなかった。内緒で動いているんだろう?」
「……そうよ。もしリズリー様に話したら、必ず殺すから」
怖っ! 俺もできれば知りたくなかったよ、こんな事実。メイド暗殺者とか属性てんこ盛り過ぎて嫌だよ!
そして、彼女……結構強いんだよね。おそらくこの距離じゃ勝てない。乱戦時なら……。
「まあいいわ。ソロじゃ限界もあったもの。これからはあんたが私に情報を流しなさい。リズリー様の覇道の邪魔をする者は私が全員殺してあげる」
そう言って笑うアンネ。うーん、これはホラー。
「そんなに殺していたらいつかばれるぞ?」
「あんたの手先が仕留めたことにすればいいでしょ? 私ってばれても殺すから」
おいおい、冗談じゃねえ、そんな手先いる訳ねえだろ!
「そんな物騒な手先居ねえよ」
「あのぱっとしない魔法使いが殺したことにすればいいでしょ?」
ダイヤのことだろうか。どう見ても暗殺者には見えんぞ。
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