冗談だろう?
『敵はハルカ共和国?』
『ノー』
え? ハルカじゃないの? どこだ? もしかして……。
『クラントン伯爵家?』
『イエス』
あの馬鹿……。同じ国内の貴族だぞ! あいつに復讐できる機会だ、と素直にはとても思えない。この規模だと、死人がいくらでるか分からない。
個人の喧嘩の結末としては規模が大きすぎる。
「また、何か知ってしまったのかシビル」
シャロンが俺の様子がおかしいことに気付いて尋ねる。
「ああ。戦だ。しかも万を超える軍勢とな」
「本当か!? うちに万を超える軍勢と戦える兵力なんてとてもじゃないがないぞ!」
「知ってるよ」
俺がやはり原因だろうか。これ最悪俺の首をもって和解ルートもありえるじゃねえか。冗談じゃねえぞ。
『俺が原因?』
『イエス』
『俺以外にも原因はある?』
『イエス』
いや、そうだよね。普通。あれだけが原因で一万なんて兵出さないよ。
『交渉の余地はある?』
『イエス』
『俺の命以外で?』
『イエス』
どうやら俺の命以外でも交渉は可能のようだ。なんとか交渉するしかない。
この後もメーティスに尋ねると、どうやら敵軍は一万二千のようだ。こちらは四千。三倍である。
「皆、一旦領内に帰るぞ!」
俺はリズリーにこれを伝えるために一度帰ることを決意する。
馬を駆り、二日後リズリーさんの屋敷に辿り着く。屋敷内に居たようですぐに会うことができた。
「なんだ、シビル。そんなに慌てて。その顔を見るに良いニュースでは無さそうだな」
リズリーさんは俺の顔を見るとすぐにことの深刻さを理解する。
「火急の用でして、突然の訪問失礼いたします。クラントン伯爵家がこちらとの戦闘を画策しております。兵は一万二千。すぐに交渉の準備を」
俺は頭を下げながら、報告する。それを聞いたリズリーはしばらく沈黙した後口を開く。
「そうか。良く報告してくれた。交渉などするつもりはない。奴を叩き潰す」
リズリーさんははっきりとそう言った。
俺はリズリーさんの決断を聞き、耳がおかしくなったのかと思った。
俺はついて行く主君を間違えたかもしれない。
「ご冗談を! 三倍ですよ、三倍! 二か月後にはおそらく戦闘になります!」
「クラントン騎士団を叩き潰し、主要地クロノスを奪い取る。これは確定事項だ」
おいおいおい。いや、だが、これほどの自信。もしかして予め策を練っているのかもしれん。
「リズリー様、何か策が?」
「いや、ない」
リズリーは淡々と答える。
ねえのかよ! なんでそんなクールっぽい表情作ってんの!? 割と我が領滅亡の危機ですよこれは。意外と貴族が滅びる時って一瞬だからね!?
「不敗の軍師と言われている割に、消極的だな。君は二倍以上の差をひっくり返したと聞いているが」
「あの時とは状況が違います。同じ国の貴族でしょう? 勝っても問題になりますよ」
「それは問題ない。それくらいの根回しはしてやる。君も殴ってたじゃないか。あれも原因のひとつだぞ」
それを言われては弱い。実際原因の一つなのだ。
「なんとか勝つ方法を考えてくれ。そのための軍師だろう?」
「できる限り考えてはみますよ。今調べた限りの状況をお伝えします」
俺は詳細を伝えた後に、動き始める。無茶ぶり以外の何でもないが、やるしかない。それにしてもなぜ、リズリーはそんな無理して戦いたいんだ。絶対に何か理由がある。俺が知らない理由が。
『倒したい理由がある?』
『イエス』
『クロノスが欲しい?』
『イエス』
これは嘘ではないのか。
『俺に言っていない理由がある?』
『イエス』
やはり、何かあるな。無理してでもクラントン家を潰したい理由が。
『クラントン伯爵の持っている金が欲しい?』
『ノー』
『情報?』
『イエス』
情報……? 一体何の情報が欲しいんだ? 疑問は尽きないが、今聞いてもおそらく良い返事は返ってこないだろう。
「早速動くか?」
「はい。戦場は既に特定しています。向かってみます」
「期待している」
俺はすぐさま踵を返し、戦場になるであろう場所へ向かった。
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