戦争?
ボルドーを赤子のように仕留めた俺は、シビル隊の騎士達の信頼を完全に勝ち取った。その後、一ヶ月近くシビル隊は国境付近で猛威を振るい続けた。
全ての動きを完全に読み、襲い掛かって来るシビル隊は敵からするとまさに恐怖の象徴であった。
常勝を続けるシビル隊は皆、顔も明るかった。
「最近、国境付近では不敗の隊長シビル、って呼ばれているようだよ」
ダイヤがチキンを食べながら言う。
「まあ、負けなしだからな。良いことだ」
俺も手を鳥の油で汚しながら返事をする。
「最近、僕の出番少なくない?」
とダイヤが俺に言う。
「い、いやダイヤ、お前は……最終兵器だから今は温存だ。来るべき時まで、温存していてくれ」
平地過ぎて、出番がないなんて言い辛いな……。
「分かったよ! やっぱりシビルのことだからなにか考えがあるんだよね? 僕のこと忘れてたんじゃないかと思ったよ」
「そ、そんなわけないだろ、ばか」
ははは……忘れてた。俺は咄嗟に顔を逸らす。話題を変えよう。
「リズリー様が若いから舐められてるのかもなあ。そういえば、若いのになんでリズリー様が継いだんだ?」
俺は騎士の一人に尋ねる。
「俺も詳しいことは知らないんですが、リズリー様が若い頃に事故で亡くなったそうです。若くして当主を継がれ、必死で領の発展に尽くされたんです」
騎士の一人が答える。
「ほう」
若い当主ってだいたい苦労人だよなあ。
「最近、ハルカ共和国の軍のちょっかいもめっきり減ったもんね。こっち見たらすぐ逃げるし」
「シビル隊を避けてるみたいだな。利口だが、少し困る。若いから舐められて襲ってくると思ったが」
「あれだけ負けたら、そんな馬鹿なことしないでしょ」
既に二回くらいハルカ共和国の騎士団をぼこぼこにしている。一度、隊長を討ち取ってからはすっかり大人しい。
「ちなみにダイヤの予想は外れだ。今日もハルカ共和国の軍がこちらに向かっている。数は千。前より数は揃えてきたみたいだが……」
「その程度で我が軍を潰せると思われては困りますね」
騎士の一人が笑う。その通り。
「ハルカの軍千がこちらに。おそらく軽い偵察でしょう。どうされますか?」
俺が立ちあがるに合わせて、斥候の一人が報告に来る。
「知っている。既に伏兵を潜ませている。シビル隊の強さを教えてやる。いくぞ、徹底的に叩く」
普通であれば、人数差が倍あれば逃げるだろう。だが、シビル隊は人数差など気にもとめず猛威を振るった。ハルカの軍は隊長を再び討たれ、敗走することになった。
「うーん……最近小さい戦ばかりだな」
国境付近であるため小競り合いが多い。
『ここ三か月の間に敵が二千を超える戦はある?』
『イエス』
あるのか。二千は流石に今の隊の規模だと厳しいな。
『三千を超える戦はある?』
『イエス』
OH! これ結構な規模だろ……。ハルカ共和国を怒らせすぎたか?
『五千を超える戦はある?』
『イエス』
『一万を超える戦はある?』
『イエス』
嘘だろ? 一万? そんなの小競り合いじゃない。本当の戦争じゃねえか。
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