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アンネ

「ああ、すまない。君の運用は後日詳しく考える。戦闘がメインのつもりだったが、内政にも関わって貰いたい。成功するかどうかわかるのならこれ以上便利な物は無いからな」


 俺のスキルはどちらかというと内政向けなのだ。それは良い運用方法だろう。


「勿論。そちらでもお役に立てるかと思います」


「悪いが、最初は少しずつだ。いきなり君を重用すると他の文官と余計な不和を招くのでな。面倒なものだ」


 新参者、しかも軍師待遇の俺が内政においてブイブイ言わせると、成功してもいい顔はされないだろう。


「承知しました」


 話もひと段落したので部屋を出て玄関を目指す。


「ご主人様」


 後ろから突然声がかかる。全く後ろに居たことに気付かなかった。中々影が薄い。だが、その言葉の相手先はどうやら俺ではなかったようだ。

 一人のメイドが廊下を掃除している。


 肩にかからないくらいの綺麗な黒髪を切り揃えた女性である。年は十八前後だろうか、目鼻立ちは整っているが、大人しそうで表情が読み取れない。リズリーさんに似てクールそうで、クラシカルなメイド服がとても似合っていた。シックな装いなのに、ふくよかな胸が目立っている。


「アンネ、挨拶を。新しい軍師だ。優秀な男で、きっと俺の覇道への道を手伝ってくれるだろう」


 それを聞いたアンネというメイドは、スカートの両すそをつまんで美しい仕草で頭を下げる。


「初めまして。リズリー様の専属メイドをさせていただいているアンネと申します。どうかご主人様をよろしくお願いします」


「アンネは俺が子供の頃から仕えてくれている。信頼できる者の一人だ。血も見るのも苦手な優しい子だよ。すまないが、これからは来客でな。アンネ、彼の借家への案内を頼む」


「承知しました」


「来ちゃった!」


 玄関の方から人の好さそうな笑みを浮かべた男性がやってくる。二十代ほどの貴族なのだろうが、健康的に鍛えられた肉体は、騎士と言われた方が信じられる。短い黒色の短髪が爽やかさを醸し出している。


「相変わらず早いな、ガルシア。今日は溺愛している子供といっしょじゃないのか?」


 仲が良いのだろう、弾む声でリズリーが尋ねる。


「……嫁の方がいいのか、来てくれなかったよ。すまんな、お前に息子の可愛らしさを見せたかったんだが。ハハ」


「なに、いつもの息子の自慢話を聞かされなくて助かったよ」


「いや、今回も聞かせるが?」


 げんなりした顔を見せるリズリー。結構長話なのか?


「こっちに顔を見せにきたってことはトラブルもひと段落したのか」


「……まあそんな感じだ。こまけえ話は中でしようじゃないか」


 ガルシアとリズリーはそのまま去っていった。




 アンネはリズリーを見送った後、俺達を先導する。


「こちらです」


 アンネに連れられ領内を歩いているが、皆の顔が他よりも明るい。特に屋敷の人達は笑顔で働いているように見えた。


「ここは良い領地なのでしょうね。皆、笑顔で働いています」


「はい。うちは休みも多く、余暇も取れるような政策を行っています。屋敷は週二日も休みがありますので」


 リズリーの言葉に俺は驚く。ロックウッド領でも休みは週に一日が精々だ。皆あまり休む余裕なんてない。


「へえ。多いですね。ここは領民のために色々頑張ってるんだな」


「はい。リズリー様は領民思いなんですよ」


 その声は少し弾んでいた。彼女はリズリーを信頼しているのだろう。

 辿り着いた借家は小さいが、三人が住むには十分な大きさがある。庭にはカエデの木が植えられている。


「パンクハット領は四季が感じられる領ですので、こちらのカエデの木も秋には綺麗な紅葉になりますよ」


「それはいいですね」


 俺は素直に秋が楽しみになった。


「良い家だね。それにしても、一騎士が、借家なんて贅沢だねえ。中々の好待遇なんじゃない?」


「俺もそう思うよ」


 ダイヤが嬉しそうな言葉に同意を示す。シャロンは無言で中に入って行ったが、少し嬉しそうに見えた。


「ネオンに手紙でも書くか」


 ガルーラン砦ではお世話になったのに、スタンピード後忙しくて連絡も取れていない。近況を伝えておきたかった。

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