パンクハット領へ
パンクハット領は、ローデル帝国の最東に位置し、東にあるハルカ共和国に隣接する領地である。のどかな田園風景が広がっているが、北東には鉱山が聳え立つ。
夏も終わりに近づいてきたのにも関わらず、日差しがシビル達を照り付ける。数日馬車に乗り、俺達はようやくリズリーさんの治めているパンクハット領の都市『ゲイン』に辿り着く。
都市は四メートルほどの壁に囲まれており、四方の門には兵が厳重に警備をしている。都市自体に活気があり、規則正しく家や店が建てられていた。
都市の規模としては以前居たデルクールより少し大きいくらいだろうか。
綺麗な煉瓦で敷かれた道路を通り、リズリーさんの屋敷へ辿り着いた。すぐにリズリーさんの執務室に案内される。中に入ると、先に戻っていたリズリーさんがペンを置いて立ち上がる。
「ようこそ、パンクハット領へ」
リズリーさんはニヒルに笑う。
「こちらこそこれからよろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げた。
「後で君達の住むところを案内させるよ。小さな一軒家だが、三人で住むには十分だろう」
「色々ありがとうございます」
「なに、これは先行投資だ。これから君の力をたくさん借りることになる。これも全て俺の野望のためだ」
「野望ですか?」
「ああ。まだ言っていなかったな。俺は子爵如きで終わるつもりはない。俺は最も大事な物は人材だと思っている。良き人材を揃え、公爵、そしてゆくゆくは更に上を狙うつもりだ」
クールな表情で熱いことを語るリズリーさん。更に上、それはすなわち王。皇帝の座ということだ。
「そ、それは……」
「なに、すぐに謀反など起こさん。そのために優秀な人材は一人でも欲しい。最近は多少癖が強くても有能な者を採用している。たとえ、クラントン家に目をつけられていてもな」
やっぱり分かるよなあ。露骨だったもん。
「やっぱり分かりますか」
「どう見てもそうだったからな。だが、あのガキへの啖呵はクールだった。男ってのはああじゃないとな。それにクラントン家と揉めるのも……いや何でもない」
なにか言いかけてなかった?
リズリーさんは煙草に火をつけると、煙を吐き出した後、話を続ける。
「なに、悪いことじゃない。君のことをスカウトしたのもドルトンから話を聞いていたからだ。とても優秀な軍師がいるから是非スカウトしろとな。あいつは俺が部下を集めているのも知っている。俺とあいつは昔からの付き合いでな。奴は元々よそ者には厳しい。そんな奴が言うなら本物だろう」
ドルトンさん、最初確かに厳しかったよなあ。最後にはそこまで評価して貰っていたのか。その事実は嬉しかった。
「ありがとうございます」
「詳しいスキルについては聞いていない。教えてくれないか?」
直属の上司に話さない訳にいかない俺はスキルについて詳細を説明する。
「それは……驚異的なスキルだな。使い方によっては世界をひっくり返せるスキルだ。面白い。政治にも戦闘にも使えるな。他にも……」
リズリーさんはぶつぶつと利用方法について考え始める。
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