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謁見

「まさか本当に皇帝に謁見することになるとは……」


 俺は白を基調とした巨大な城を前に呆然と呟いた。


『それだけの手柄を挙げたってことよ! 胸を張りな!』


 ランドールが嬉しそうに言う。

 俺は今、帝都ブルーディンの城に居る。皆人間ができていたのか、今回の勝利は俺のお陰だと報告したようで式典での叙勲が決定した。


 大変嬉しい話だ。だが、突然の幸運に俺の心はついていっていなかった。

 城内の調度品はどれも素晴らしい物で、ただの農民では一生かけても買えないものが並んでいる。

 昔、貴族だった頃、アルテミア王国の王城に行ったことがあったが、それよりも遥かに立派だ。


「思ったより似合うね」


 呑気にダイヤが言う。ダイヤとシャロンも今回の叙勲に着いてきてくれた。式典用の華美な軍服を着ているが、中々窮屈。


「皇帝と謁見できるなんて、平民ではありえないことだ。素直に喜べ」


 シャロンはそう言うが、自分だったら絶対嫌がってただろ、お前。


「失礼してはいけない貴族とか居るか?」


「うーん。うちの二大貴族と言えば、グラシア公爵家と、バーナビー公爵家だろうね。王に近い権力すら持ってると言われているよ。逆らうと消されるんじゃない?」


「嫌なこと言うなよ。その二人には逆らわないようにするわ、とりあえず」


 ダイヤから貴族豆知識を聞いたが、あまり役には立ちそうもない。何と言っても、顔すら分からん。


「貴族の会合のおまけみたいなもんらしいし、気軽に行ってくるよ」


 俺は二人と別れ、控室に向かった。控室には誰もおらず、椅子に座り静かに待つ。


『皇帝って怖いの?』


メーティスからの返事がない。怖いって、曖昧なものだからだろうか。というか何を聞いているんだ俺は。


「シビル様、お時間です」


 名前を呼ばれ、遂に謁見の場に向かう。




 部屋に入ると、周囲は貴族のおっさんばかりである。眩しいくらいの明りの中、中央には立派な玉座に座る皇帝の姿があった。

 まだ五十くらいだろうか、聡明そうな面差しの中には、鋭さが感じられる。命令されると、黙って従ってしまいそうな迫力があった。整った顔に、口髭が蓄えられている。


 俺は前に進むと、跪く。緊張でよく見えなかったけど、もう一人跪いている男が居た。


「面を上げよ、ヘルク。シビル」


 俺達はしばらく跪いた後、ようやく顔を上げる。


「ヘルク、息災そうだな」


「はい。おかげさまで」


 横のヘルクとやらはどうやら皇帝と知り合いらしい。


「お主の活躍は儂の耳にも届いておる。グラシアには儂もいつも助けられている。お主もこの帝国を守る両翼となってくれることを期待しておる」


「必ずや」


 ヘルクは跪いたまま、頭を下げた。

 グラシアってさっきダイヤが言っていた二大貴族じゃねえか。超大物である。


「お主には、帝国騎士団中隊長の称号を与えよう。これからも励むがいい」


「有り難く」


 その言葉と同時に、周囲の貴族達が大きな拍手で祝福した。


「続いては、シビルとやら。まだ新人軍師にも関わらずスタンピードを治め、先日のアレクシア王国との戦いでも活躍したと聞いておる。素晴らしい若者が出たのは良きことだ」


「勿体なきお言葉です」


「お主には騎士爵を授けよう。これからも励め」


「必ずや」


 さっきとは違い、まばらな拍手が部屋に響く。お前ら興味無さ過ぎるだろ。


「お主の所属は北の砦らしいな。今後は帝国騎士団を望むか?」


「それは――」


「お待ちを陛下」


 俺の言葉を遮る男が居た。五十代くらいで白髪交じりの男だ。動かない機械のような表情で俺を見つめている。

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