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騎士の熊さん

 俺達はすぐさま本陣に戻る。こちらは少し押されているように見えた。マルティナがこちらの勝利を告げる。


「聞け! 敵の別動隊は全てうちが討ち取った! ロックウッド軍の大将は、部下を盾にして逃げた臆病者だ! 後顧の憂いはない。我らの武威を示せ!」


「「「「「うおおおおおおおおおおお!」」」」」


 その報告を聞き、帝国軍から雄たけびが上がる。


「はは、帝国騎士団の別動隊はしっかり勝利を掴んだらしい。この戦は我らラーゼ軍の戦だ。我らが戦わずして誰が戦うのだ! 俺に続け!」


 激を飛ばしたドルトンは敵陣に単騎駆けを行うと、そのまま敵陣に斬り込んだ。

 ドルトンの振るう大矛は敵の一陣目を一閃で吹き飛ばすと、そのまま入り込む。


「我こそがラーゼ軍団長、ドルトン! 死にたい奴はかかって来い!」


 ドルトンが大矛を振るうたびに、敵が吹きとぶ。


「団長に続けェ!」


 団長の行動に感化されたラーゼ軍も敵陣に食らいつく。一方、全く戻ってこないハイル達に、こちらの敗北を悟ったロックウッド軍の動きは鈍い。撤退すべきか、戦うべきか分からないのだ。

 どんどん減っていく騎士達を見て、ロックウッド軍の副官が声を上げる。


「て、撤退だ! お前達、撤退だ! 俺が殿(しんがり)を務める!」


「ハハ、逃がすなお前達。ラーゼの怖さを教えてやれ!」


 逃げる敵兵を殺すことほど簡単なことは無い。逃げるロックウッド軍の背に襲い掛かる。ロックウッド軍は人数を随分減らしていた。既に千をきっているだろう。


「ドルトン……! 撤退の邪魔をするな!」


 ロックウッド軍の副官がドルトンに斬りかかる。だが、ドルトンの方が上手であった。


「弱い!」


 ドルトンの大矛での振り下ろしは、副官を真っ二つに斬り裂いた。

 倒れ込む副官を一瞬だけ見つめると、大声を上げる。


「副官も討ち取った! この戦、我らの勝ちだ!」


 ドルトンが皆に叫ぶ。既に勝敗は完全に決していた。こうして十日に及ぶニコル鉱山をめぐる戦争は、ローデル帝国の勝利で幕を下ろした。


 その後、ひたすら逃げる連合軍の背を追い、敵の数を減らしたラーゼ軍は血塗れの鎧で戻ってきた。

 皆疲れているが勝利のためか顔は明るい。

 俺は外でイヴ達とのんびり休んでいた。


「これだけ痛めつければこちらを襲おうなんて当分思わないだろう」


 ドルトンは血塗れの全身で豪快に笑う。

 人を捕食し終った後の熊みたいだ……とドルトンを見ながら思う。


 ドルトンは俺を見つけると、姿勢を正すと深々と頭を下げた。同様に後ろに居た将校達も一斉に頭を下げる。


「シビル、いやシビルさん。今回は本当に世話になった。貴方のお陰で勝つことができた。正直、あのままの場合、俺達は負けていただろう。最初の失礼な態度も今一度謝らせて欲しい。本当にすまなかった」


 ドルトンがここまで礼儀正しくなると思わなかった俺が、驚きが隠せなかった。俺は咄嗟に立ち上がる。


「い、いや、帝国軍として援軍に来ただけですから気にされなくても大丈夫ですよ」


 イヴのために来ただけなんです、とは言えない雰囲気だ。


「なんという器のでかさだ。ラーゼ軍は貴様の危機の時、必ず駆けつけることを剣に誓おう。これからの帝国を担うであろう軍師シビルという名を心に刻む」


 なんてことだ、なぜかドルトンの中で俺の評価がうなぎ上りだ。それは過大評価ってもんだろ……。


「ふふ、どんどん適切に評価されていくね」


 と横でイヴがにっこり笑っている。


「なんといっても、シビルはまだ無敗だからね。不敗の男ですから」


 なぜかダイヤがどや顔で言っている。お前、余計なこと言うな。ハードルをあげるんじゃねえよ。毎回綱渡りですよ。


「不敗の男、シビルか。頼りになる男が帝国に来てくれて嬉しい。これからもよろしく頼む」


 ドルトンは巨大な手をこちらに伸ばす。俺はその手をしっかりと握り返した。


「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」


 俺は真剣な表情を保ちつつも、しばらく休みたいなあ、とぼんやり考えていた。

 そもそも俺はそこまで体力がない。ずっと外で寝泊まり自体が負担である。お布団で休みたい。


「そういえば、死体の中にあのガキと、レナードのものは無かった。逃げ切ったのかもしれんな」


 とドルトンは言う。

 そうか、二人とも生き残ってしまったか。しぶといね。ロックウッド領の話を聞く限り、良い終わりにはならないと思うけどね。

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