いざ、最終決戦へ
『ロックウッド軍の別動隊の人数は五百人以上?』
『イエス』
『千人以下?』
『イエス』
その後も尋ねると、人数はどうやら五百人程度のようだ。
「ロックウッド軍の別動隊の方は俺が向かいます。別動隊は五百人程らしいので、帝国騎士団二百をお借りしたい」
正直言うと、敵の数を考えるとこちらも五百人欲しいが、そんなに人数を出せば本隊との戦いが一気に崩れる可能性がある。
「二百か。だが、別動隊に抜けられても……」
「シビル、ラーゼ軍からも百だそう。土地勘のある者を入れてやる。計三百だ。それで別動隊を仕留めろ。ハイルというガキを仕留めればこの戦も終わりだろう」
「ドルトンさん、ありがとうございます。必ず別動隊を仕留めます」
三百抜けると、正面はかなり厳しいことになるだろう。だが、それでもドルトンは出してくれた。俺が言うべきなのは礼で、心配の言葉ではないだろう。
『おうおう、随分信頼されたじゃねえか相棒! ちゃんと期待に応えねえとなあ!』
『ああ、その通りだ。ランドール、ラストバトルだ。この戦いを終わらせよう』
『おうよ!』
「敵も精鋭を出しているだろうし、こちらも精鋭で向かおう。私も出る」
マルティナが剣を持ちにやりと笑う。
帝国騎士団のトップが出るならこちらも十分だろう。
「頼りになります。時間がありません。どちらの騎士団もすみませんが馬の扱いに長けた騎兵を中心にお願いします」
夜も更けた時間であるが、こっそりと兵を集める。その中にはイブの姿もあった。
『イヴは連れて行った方がいい?』
『イエス』
そうか……。そのためにきたのだ。必ず守って見せる。イヴは俺の姿を見つけて、小走りで走って来る。
「話は少し聞いたわ。まさか別動隊をそんな悪路に送るなんて」
「ああ。完全に出し抜かれたよ。イヴ、おそらく明日でこの戦いは終わる。俺は君に生きて欲しい。戦うななんて言わない。どうか無事で」
俺はイヴを見ながらそう告げる。彼女は戦士だ。後ろに隠れていろ、と言っても聞かない。彼女は民を守るために騎士になったのだから。
「もう、心配性ね。私の強さ忘れたの? シビルよりずっと強いんだから! 私が貴方を守ってあげる」
イヴは笑顔でそう言った。
「知ってるさ。武運を」
俺はイヴにただそう告げた。イブはありがとう、と言った後、帝国騎士団の集団の中に戻っていった。
騒がしさを感じ取ったのか、その後シャロンとダイヤもこちらへやってくる。
「騒々しいね、こんな夜に。敵襲かい?」
ダイヤが聞いてきた。
「敵に出し抜かれた。別動隊が細い裏道からこちらに迫っている」
「なっ! どういうことだ!? なぜそんな大事な所を守っていない。しかもそんな道、聞いてないぞ」
シャロンが大声を上げる。
「酷い悪路で、しかも敵からすると危険が高いらしくてな。普通敵も使ってこないらしい」
「それ故に、こちらの見張りも手薄だった訳か。こちらは見張りの人数もそんなに割けてないだろうからな。このタイミングでそんな手を打って来るとは。敵も中々根性がある」
シャロンは素直にロックウッドへの評価を漏らす。
おそらく父の発案だろうが絶妙なタイミングなのは認めざるを得ない。最初から裏道を使われていたらきっと俺も気付いていただろう。
「だが、なんとか気づけた。今からそちらへ向かう。二人とも来てもらうぞ」
「了解、時期的に決戦かな?」
「勿論だ」
「助かるよ」
「シビル、あまり心配そうな顔をするな。私が居る、何も問題はない」
俺の顔を見たシャロンが堂々と言い放つ。
俺、そんな顔に出てたのかな? だが、頼もしい人だ。
「ありがとう、シャロン。頼りにしているよ」
「私一人でいいくらいだ」
シャロンが笑う。
二人と話していると、どうやら人が集まったようだ。騎兵が半分ほど。集まってくれた騎士達にマルティナが軽い説明を行う。
「既に軽く話したが、現在敵の別動隊が裏道からこちらに向かっている。正直に言うと今挟撃に耐えきれるほどこちらに人数は居ない。我々が敵を返り討ちにする。お前ら、覚悟を決めろ」
「「「はっ!」」」
騎士達の士気は高い。マルティナは信じられているのだろう、とのんびりその様子を見ていた。
「他人事のような顔をしているが、この士気は半分以上君のお陰だ、シビル。勝利ほど、士気が上がるものはない」
マルティナが笑いながら言う。
「なるほど。少しは誇れそうですね」
「十分に誇ってくれ」
俺達は闇夜の中、月の光を頼りに行軍を開始する。
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