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油断、慢心

 九日目もこちらの戦果は素晴らしかった。そのせいか夜の軍議では皆どこか興奮している。


「右通路の戦いはこちらが勝利した!」


「中央も敵被害の方が大きいだろう」


 皆、笑顔で戦況を語る。


「人数差もましになってきた。ここまで敵を減らせるなんてな」


 将校の一人が話す。


 そこなのだ。人数差が少なくなった感じがした。急にそんなことがあるのだろうか。


「とても良いことだ。だが、何か違和感がある。ここ二日は更に手ごたえがない気がする」


 団長であるドルトンが顎に手をあてながら言った。


「こちらが押してるからそう思うだけでは? ですが、中央にはロックウッド家が少なかった気がしますな。次期当主のガキも見ていない」


「右通路でも見ていませんな。温存しているのかもしれませんな」


 ハイルの姿を誰もここ二日誰も見ていない。温存も考えられるが、こんな状況であの男が後ろにただひっこんでいるだろうか。

 嫌な予感がした。何か逃していたのでは。


『ハイルはここ二日、戦闘に参加していない?』

『イエス』


『ハイルは敵本陣に居る?』

『ノー』


 ノーだって!? ハイルは今どこにいるんだ? だが、この戦場は発掘場に繋がる三つの通路しかないはずじゃ……。


「ドルトンさん、発掘場に繋がるのは今戦っている三つの通路しかないんですよね?」


「ん? ああ、この三つくらいしかまともな道はない」


「まともな? もしかして他にもありますか?」


 背中に冷たい汗が流れる。


「細いし、酷い悪路なら別の道が一本あるな。だがあそこは酷い絶壁を何箇所も超えないといけない上、格好の的になるような所も多い。実際使われたことなんて一度もない。見張りも少数だが立ててあるから何かあれば報告があると思うが」


『ハイル達は悪路からこちらに向かっている?』

『イエス』


『見張りは殺られた?』

『イエス』


 やはりか……。完全に見逃していた。ここ以外にも道自体は必ずあるはずだった。それを警戒しておくべきだった。

 俺は出し抜かれた事実に、歯を食いしばる。油断、慢心、様々な単語が脳内をめぐる。

 父は勝利のためなら危険を冒しその悪路を通り奇襲をかけることを考えていてもおかしくない。


「皆さん、ロックウッド軍は今先ほど言っていた悪路を通りこちらに向かっているようです。見張りも全員殺されたみたいですね」


 俺は皆に正直に告げる。


「なっ! あんな悪路を……! だ、だがまだ途中なら今から向かえば一網打尽(いちもうだじん)にできるはずだ」


 将校が叫ぶ。


『ハイル達は明日の昼にはこちらの本陣に辿り着く?』

『ノー』


『明日の午後三時には辿り着く?』

『イエス』


『明日の午後二時には辿り着く?』

『イエス』


 細かく尋ねると、このままだと午後一時四十分程に本陣にまで辿り着くようだ。


「明日の午後一時四十分頃ここに辿り着くようです。今から行って、絶好の位置から待ち伏せできますか?」


「……おそらく無理だ。そこまで入られているなら、精々一本道の先を塞ぐぐらいだな。高地くらいなら取れるとは思うが」


 ドルトンの返事は予想通りであった。既に足元まで危険は迫っているだろう。おそらく完全に挟撃されてはこちらはかなり厳しいだろう。

 こちらは押していると思ったがどうやらやはり決着は明日らしい。

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