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猜疑心

 その夜、連合軍の天幕は物々しい雰囲気に包まれていた。


「ハイルさん、どういうことか? 共同戦線ですが、敵に情報が漏れていたとしか思えないくらい見事にこちらは全滅させられていたようだが。情報が予め漏れていたとしか思えません」


 マティアス軍の団長テンドロンがハイルを睨みつける。完全にロックウッド家を疑っている顔である。彼からしたら、この天幕にいる者の一部しか知らない侵攻ルートが漏れているのだ。

 しかもマティアス軍ばかりが被害にあっている。三千居た兵士は既に千を切った。

 ハイルはテンドロンの言いがかりに苛立ちを隠せない。


「なんだ? こちらのせいにするのか? お前達が無能だからばれたんだ。どうせ鎧をガチャガチャ音を立てながら向かってばれたんだろう。こちらのせいにするなんて図々しい。援軍に呼んでおいて、その態度か?」 


 ハイルの煽りに、マティアス軍が殺気だつ。


「なんだ、その言い草は! 明らかに被害が出ている! お前達の誰かが間者に違いない!」


 マティアス軍の将校が、ハイル達を見て叫ぶ。


「ふざけるな! こちらだって言わせてもらうが、この鉱山、金鉱では無くミスリル鉱らしいじゃないか! こちらを騙していたな!」


 ロックウッド軍の将校も怒りをぶちまける。


「ぐっ……! それは今関係無かろう!」


「あるに決まっているだろう! 嘘を吐くような奴等を信じられるか!」


 両陣営とも殺気立ちはじめ、ぶつかるのも時間の問題と感じられた。

 その中でパンッ、っと綺麗な音が響く。レナードが手を叩いた音だ。


「皆の者、落ち着け。ここで揉めては敵の思う壺だ。テンドロンさん、そちらの被害が大きいのは分かっておる。それゆえこちらを疑うのも分かる。正直に言うと、こちらの兵士達もミスリルの件でそちらを信用しておらぬ。これでは十分な連携も出来まい。各々戦った方がまだましだろう。幸いまだ人数はこちらの方が多い。お互い邪魔にならぬように戦い、敵将であるドルトンを討つ。それで終わりだ」


 流石に歴戦の雄であるレナード。最も落ち着いた判断を下したと言えるだろう。


「わ、分かった。ここで揉めるのが得策でないのは分かっている。各自戦うことにしよう」


 テンドロンも頭を冷やしたのか、頭を押さえながら言う。


「なに、ドルトンを殺せばそれで終わりよ。我らに任せよ。戦こそ、我らの得意分野よ」


 そう言って笑うレナードに、テンドロンは安堵の息を吐いた。マティアス軍が天幕を出た後、ハイルがレナードに尋ねる。


「こちらを疑う馬鹿共など、殺しても良かったのでは?」


「お前は強いが、まだ戦を分かっておらぬ。うちも既に二千ほどだ。敵も千七百はおるじゃろう。マティアスの雑兵とて必要なのじゃ」


「だが、ここ最近はどうも敵と嚙み合いませんね。上手くいなされているというか。不利な戦いばかりを強いられているようです」


 ハイルも戦については馬鹿ではない。何か違和感を感じ取ったらしい。


「儂もだ。おそらく凄腕の軍師が就いたのかもしれん。被害が大きくなれば勝利しても、意味がない。それでじゃ――」


 レナードはハイルの耳元であることを伝える。


「なるほど。流石お父様。素晴らしい策です!」


「これで終わらせるぞ」


 レナードとハイルはにたりと笑みを浮かべていた。

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