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濁った目

 どこも帝国軍が勝利している中、激しい攻防を繰り広げている戦場があった。中央通路である。


「ふう……敵にあまり被害を出させないようにとは、面倒臭い指令をしてくる軍師だ」


 中央通路を守備していたのは、ラーゼ軍隊長のドルトンだった。

 ドルトンは馬上から巨大な矛を軽々と振るい、その一振りで向かってくる何人もの敵を一刀両断する。


「ちっ、脆すぎるな。手加減したつもりだったが。これでは敵が全滅してしまうわ」


 とにやりと笑った。ドルトンはシビルの命令通り、中央通路を守備していた。ここはロックウッド軍の勢力が来るのは分かっていた。守備しお互いの被害を減らすように言われていた。


「くそっ! あいつがラーゼの巨人、ドルトンか……」


 ロックウッド軍もドルトンの一振りを見て、勢いが完全に止まる。戦いの先頭を切る勇猛な将は敵に恐れを与え、味方に勇気を与える。そう思わせる迫力がドルトンにはあった。


「ラーゼの巨人を越えて進めると思う愚か者だけが出てこい! 一人残らず、一振りで楽にしてやる!」


 ドルトンの叫びが、戦場に響き渡る。ロックウッド軍は完全に呑まれていた。


「ちっ、臆病者共め。ただデカイだけの独活(うど)の大木が調子に乗りすぎだ」


 ラーゼ軍の騎士を何人も沈め現れたのは、ハイル・ロックウッド。ロックウッド軍を率いる若き次期当主である。

 シビルによく似た綺麗な金髪に大きな青い瞳、鼻筋の通った鼻をしている。体はそこまで筋骨隆々ではないが、無駄なく筋肉がついており、鍛えられていることが分かる。


(こいつがロックウッド家の次期当主か。強そうだが……濁った目をしている)


 ハイルを見たドルトンの第一印象は、歪んでしまった少年だった。それはハイルの中身を的確に言い表している。


「お前のような奴が次期当主とは……今ロックウッド家を終わらせてやる」


「デカブツが! その首、斬り落としてやる」


 ドルトンが大矛を振り下ろすと、それに合わせてハイルも剣を抜く。他の騎士達では目で追うことすら難しいほどの速さである。

 二人の魔力の籠った凄まじい一撃がぶつかり合い、魔力が爆ぜる。周囲は衝撃で震え、その一回の交わりでお互いの強さを理解した。


 ドルトンのスキルは『剛力』。単純に全身の力が強くなるシンプルなスキルである。そこまでレアなスキルでは無いが、ドルトンは元々の恵まれた巨躯に合わさり、圧倒的な力を発揮する。


「力だけのデカブツが!」


「スキルに溺れたガキに負けるはずも無し!」


 二人は激しく斬り結ぶ。その激しい剣戟に周囲の皆も手を止め二人の戦いの行く末を見守っている。

 ドルトンの重い一撃に、大きく吹き飛ばされるハイル。それでも剣を離さないのは剣の重要性を感じていたからだろう。


 ドルトンは本気で斬りかかっている。押しているのもドルトンであったが、勝負がつかないのは、偏にハイルの才能といえた。スキル『剣聖』を持つ若き騎士。


(ここで殺しておいた方がいい。奴はその思考といい、残すと面倒そうだ)


 ドルトンが本気でハイルの首を狙う。


「そうはさせん!」


 その鋭い一撃を止めたのは、レナード・ロックウッド。ロックウッド家の現当主である。馬を優雅に乗りこなしながら、鮮やかに登場して見せる。


「お父様! なぜ邪魔を! この程度の雑魚、私だけで」


「時間をかけすぎだ、ハイル。それに右通路に向かった、マティアス軍から連絡もない。おそらく奴は時間稼ぎだ」


 レナードはドルトンを睨みつける。


「なんのことかな?」


 ドルトンは両手を上げ笑う。


「下らぬ芝居を……! まとめてかかれ! 奴は儂とハイルで止める!」


 レナードの檄と共に、ロックウッド軍が再び襲い掛かる。


「流石にそう楽にはいかねえか……」


 ドルトンの守備する中央通路が最も多くの被害が出ることになる。しばらくしてラーゼ軍の援軍を感じ取ったレナードが撤退を命ずるまで中央通路は多くの血で染まった。

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