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狩場へようこそ

 右の道のある穴の中には前日の夜から帝国騎士団達二百が潜んでいた。


「マルティナ様、本当にここに敵の弓兵がもうすぐ来るのですか? そこまで正確な情報が密偵から得られるでしょうか?」


 部下の一人が密偵から得たという情報に疑問を呈する。


「確かな情報筋だ。信じろ。敵の将校の一人がこちらの者でそいつから全て聞いている。後十分もしたら弓兵が来る。奴等と同時にいる歩兵が去ったら、一気に仕留める。お前ら事前にも言ったが絶対に歩兵達に悟られてはならん。弓兵を音も無く仕留めろ」


「はい」


 兵士達は情報源には半信半疑であったが、マルティナのことは信じている。そのため、前日からという過酷な命令にも嫌な顔一つせずに耐えていた。 

 前方から僅かな足音が感じ取ったマルティナの顔が、軍人の顔に変わる。その足音の先にはマティアス軍の弓兵百が物陰にやってきた。一緒に行軍していた歩兵二百はそのまま帝国軍を狙うために先に進んでいった。


「釣れますかね?」


 弓兵の一人が隣の兵に尋ねる。


「一昨日釣られてるからなあ。まあ大丈夫だろう」


「あんな馬鹿みたいに釣られるくらいですからね。団長のドルトンは脳まで筋肉でできてそうでしたよ。帝国軍は脳筋しか居ないに違いない」


「違いねえ!」


 と無駄話をしていた。マルティナは静かに聞いていたが、その目からは確かな怒りが感じられる。だが怒りで我を忘れることはなく、静かにその怒りを力に変えていた。

 完全に歩兵が去ったことを感じたマルティナは、遂に動き出す。無言で手を振り部下達に合図をすると、百を超える帝国騎士団が弓兵に襲い掛かる。


「て――」


 弓兵は叫び終わる前に顔と胴体が斬り離されてしまった。マルティナ率いる帝国騎士団の動きはまさに疾風迅雷と言える。

 一人一人が音もたてずに速やかに弓兵達を仕留めていく。弓兵は近くに入られると途端に不利になる。更に奇襲をかけられては尚更だ。


 五分程で百を超える弓兵の屍が地面に転がることとなった。マルティナは剣をついた血を布で拭うと、部下達に言う。


「おそらくしばらくしたら、味方が待っていると勘違いした馬鹿共が戻って来る。奴等を挟み撃ちで片付けるぞ。それまでは潜む」


「はっ」


 マルティナは先ほどまで弓兵達が潜んでいた場所に屈み身を隠す。

 数十分後、先ほどここを去っていった歩兵達が戻ってきた。ここが地獄への片道切符だとも知らずに。


 歩兵達は十分に逃げてきた後、弓兵達の援護がないことに疑問を感じ始めた瞬間、マルティナ達が一斉に襲い掛かった。


「なっ!? なぜ敵兵が!」


「狩場へようこそ、坊や達」


 マルティナは獰猛な笑みを浮かべると、一閃。その一撃で何人もの兵士の胴が宙を舞った。


「狩る側と思っていたら、狩られる側になった気分はどうだ!」


 帝国騎士団の男達も昨日の雪辱を晴らそうと敵を斬り裂く。

 マティアス軍は前後から襲い来る帝国騎士団になすすべも無く瞬く間に全滅した。こちらの被害は殆どなかった。


「いやあ、こちらの間者の情報は驚くくらい正確ですね。素晴らしい」


 部下の騎士が、笑顔で言う。


「ああ。素晴らしい。帝国はかけがえのない人材を得たといえるだろう。これは……わが軍にも欲しい」


 マルティナはそう言って笑う。


「マルティナ様がそこまで評価するなんて、珍しいですね」


 部下は少し羨ましそうに言った。

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