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介護士の小話

綺麗ごとでも……

作者: ごわごわ茶葉

 私は何本か虐待やらについてのエッセイを書いてきているが今回もそれについて語ろうと思う。


 一応断っておくが私はバリバリの現場職員だ。

 上で『一応の人員基準満たしてるからオッケー』とか言っている経営者とかではない。

 経営学なども大学で学んだが単位を取った瞬間に忘れてしまった。

 いや、マジで。何か夕張の財政破綻についてやった講義が一番面白かったがそれ以外忘れた。

 日勤と夜勤を繰り返し、勤務が終わると肉体疲労を覚えながら料理をして、その後はコーヒーを飲みながらなろうで執筆活動や読もう活動をしている。


 さて、高齢者虐待について「認知症のお年寄りが相手だとつい手が出てしまうのもわかる気がする」という意見がある。

 いやいや、ちょっと待って欲しい。

 それについてはわかってはいけないと思うのだ。


 まあ、利用者は聖人君子と言うわけでもないので憎たらしい事を言う人もいるし、そもそも年長者だから上から目線の方でイラっとする物言いも多い。

 自分の価値観を押し付けてきて気に入らなかったら大声を出したり唾を懸けたり、そこまでいかなくても都合が悪くなると「わからん」と拗ねたり。

 まあ、自分らしく生きているのだよなと私は思っている。ある意味健全だと思う。

 


 でもさぁ、殴らんよ?

 常識的に考えて欲しい。サービス抜きにしても一般の人同士でそんな程度の事で手が出ていたら日本  中死体だらけである。

 勿論、一般人同士で手が出た結果がワイドショーで騒がれる事件だったりするのだが。


 恥ずかしい事だが私の所属する事業所では数年前に虐待があった。

 トイレを開け放ったままの排泄介助。行った理由は『ホールの見守りが出来ないから』だ。


 これを見て「わかる気がする」と思った人は注意して欲しい。

 自分がケアされる側ならどれだけ恥ずかしいだろう?

 え?年取ってそんな羞恥プレイされたい?

 男は立小便するから問題ない?いやいや、羞恥心はあるよ?

 連載作品の主人公は放尿した時に出会ったヒロインと結婚するけどあれ、特殊だから。


 ところが「わかる気がする」というのが職場で一定数いたりするのだ。

 まあ、思っているけど隠しているタイプの人だが話をしていると何となくわかる時がある。


 介護の世界は人手不足だ。

 綺麗ごとばかりでないことだってわかっている。

 先日も人手不足のおかげで仕事が終わったらなろうの投稿だけして後は泥のように眠った。

 マジでキツイというやつだ。


 でも綺麗ごとを言うのを私は止めない。

 何故なら、口にした瞬間『虐待が仕方の無い』世界が出て来てしまいそれが蔓延してしまったらそこはこの世の地獄になってしまう。


 例を挙げてみよう。

 私が異動して来た時、職員は利用者の部屋に土足で入って行っていた。

 土足と言っても上履きだがまあ、土足としよう。

 ウチは居室の入口に靴を脱ぐスペースがあるので普通に考えれば利用者の個人スペースである部屋に入るにあたって靴を脱ぐものである。


 ところが皆、靴のままバンバン上がっていき居室の床は汚れ放題だ。

 なぜそんな事をしているか聞くと、利用者は尿を散らしたりもして床が汚い。

 だから。誰から始まったかは覚えていないが靴で上がるようになって現在に至るというわけだ。


 いや、それなら床拭けよ!

 反論は『時間がない』だ。

 要するに『汚いし時間がないから土足で上がっております』という世界が出来てそれが蔓延した結果、皆の感覚がマヒしたのだ。

 これを修正し全員が徹底できるまで2か月かかった。何度言っても土足で入ろうとする奴が居たせいで……

 

 もしかしたらこれを見て「似たようなことがある」と思った人もいるかもしれない。

 それ程までに「仕方がないよね」という世界を作るのは怖いのだ。

 「腹立つから虐待しちゃうの仕方ないよね」という世界が出来てしまえばそれはディストピアだと思う。

 

 だから私は綺麗ごとでも言い続ける。


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― 新着の感想 ―
[一言] 綺麗ごとを笑うなら理想も無く、理想が無ければ現実は堕落するのみ 小さな事でも大きな一歩です
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