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裸の付き合いは世界を救う! 最強の回復スキル『温泉』で異世界銭湯始めます  作者: Peace
三章 救え! 世界樹!

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38.新たな仲間

「リク殿、ライザ殿、先ほど、族長から指示を受けた。エルフの一族が移住するのとは別に、私はリク殿に同行するようにとのことだ」


 急にかしこまった表情で、ティルダが言った。


「おお、それはありがたい。大歓迎だよ」

「強力な仲間ができたわね」


 ティルダと握手を交わし、歓迎の意を伝える。

 弓のスペシャリストであるティルダがいてくれれば、非常に心強い。

 ハヅキと合わせて、物理の遠隔攻撃で優位に立てる。

 俺の仲間たちも、だいぶバランスが良いパーティーになってきた。


 壁役のローザ、近接アタッカーのハンナさん、遠距離物理はハヅキとティルダ、この二人は状況に応じて近接アタッカー役もこなせる。

 魔法攻撃はライザ、自衛もできる回復役がルビー。

 これだけの面子が揃えば、シェリルたちも連れて行って経験を積ませられる。


「リク殿のおかげで、世界樹は救われた。これで我らも全力で戦うことができる。リク殿のお役に立てるよう、身命を賭して……」

「待った。ティルダ」


 真面目な顔でまくしたてるティルダを遮る。


「これからは仲間なんだ。そんなに堅苦しくしなくていいよ。俺のことも、リクと呼び捨てでいい」

「そうよ。私のことも、ライザって呼んで」


 すると、ティルダはにっこりと微笑んだ。


「分かった。リク、ライザ、よろしくな」


 どこか取っ付きにくかったティルダの態度が和らぎ、可憐な笑顔を見せてくれた。


「ところで、リク。一つ教えてもらいたいことがあるんだ」

「おう、なんだ。何でも聞いてくれ」

「世界樹で、不思議な水を出しただろう? 温かく心地良い水。ダークエルフのナターシャを生き返らせた、ものすごい力だった。あれはいったい何なんだ?」

「そうか、ティルダには説明していなかったな」


 あのときは、バタバタしていたからな。


「俺のスキル”温泉”の効果だよ」

「オンセン?」

「ティルダは……というかエルフは風呂に入らないのか?」

「フロ?」


 ティルダはきょとんとした顔をしている。

 エルフには入浴の習慣が無いのかな。


「えーっと、どう説明したものかな」

「ねえ、ティルダ。汗をかいたとき、水浴びはするでしょ?」


 困っていたら、ライザが助け船を出してくれた。


「ああ、もちろんだ。森の奥の川でな」

「その水浴びと同じような感じで、私たちは温かいお湯をためて入るのよ。それがお風呂」

「ほう、なるほど。興味深いな」


 ここは一つ、提案してみるか。


「もし良かったら、一緒に入ってみるか?」

「お風呂とやらにか? いいぞ」

「よし、じゃあ、すぐ準備するから、見ててくれ」


 手近な窪みを探し、スキル”温泉”を発動する。

 せっかくなのでルロナの魔石を使ったら、きれいな薄緑色のお湯が噴出した。


「おお、これは! 世界樹のときと色が違うぞ?」

「ルロナ様にもらった魔石を使ったんだ。エルフにはきっと良い効果があると思うぞ」

「なんと……森の女神様のお力が……」


 ティルダは神妙な表情で祈りを捧げながら、お湯をじっと見つめていた。


「よし、溜まったぞ。早速入ろうか」

「新しい効果、楽しみー」


 とくに意識もせずに脱ぎだす俺たちを見て、ティルダが目を丸くした。


「えっ! なんで脱ぐんだ? 何をしてるんだ?」

「何って、風呂は裸で入るものだぞ」

「そうよ~。うわぁ、気持ちいい~」


 さすがに丸出しはためらわれたので、タオルを取り出して腰に巻き付ける。

 ライザはまったく気にせず、ざぶんとお湯に飛び込んでいった。


「ほら、ティルダもおいでよ。気持ちいいわよ」

「こっ、このままじゃダメなのか!?」

「お風呂は裸の付き合いよ。気にしないで入ってらっしゃいな」

「そう言われても……。リク! 私はどうすればいいのだ!?」


 ここで俺に決定権を渡してしまったか。

 せめて下着姿とも思ったが、ティルダは穿いていないからな。

 諦めて、脱いでもらったほうが、お湯の気持ちよさも体験できるだろう。


「まあ、俺のパーティーに入れば、夜はコレだよ。一緒に入って疲れを癒やし、親睦を深めるんだ」

「男女一緒にか!?」

「ああ、そうだ。と言っても、男は俺しかいないけどな」

「リクのことは、空気だと思えばいいわ。女ばかりだから、慣れたら気にならないわよ」

「そういうものなのか。なんとも、変わった習慣だな……」


 ティルダはタオルを受け取り、木陰に隠れて服を脱いでいる。

 下を穿かないであれほど暴れまわっていたけど、こういうときは別なんだな。

 しばらく待っていたら、タオルを体の前に垂らしたティルダが、真っ赤な顔をして出てきた。


「うぅ、これは勇気がいる……。ライザ、よく平気だな」

「んー? ふふっ、恥ずかしいのも最初だけよ。堂々としてればいいの」

「そ、そうか……分かった。努力しよう……」


 タオルの上から胸元をぎゅっと押さえ、ティルダがお湯に入る。


「ん……。湯に浸かるなど、初めての経験だが、これは心地良いものだな」

「でしょー。遠慮しないで、肩まで浸かって、足を伸ばしてみなよ。気持ちいいよー」

「こうか……? ああ……体に染み渡るようだ……」


 すらりとした足を伸ばし、ティルダが肩まで湯に浸かる。

 ためらいがちにタオルを外して、ティルダは目を閉じた。


「これはすごい……。疲れも何もかも消えていく……」

「最高のお湯ね。んー……気持ちいい……」


 両隣で、ライザとティルダが、ゆったりと体を伸ばしている。

 うむ、絶景かな、絶景かな。

 類まれなる美女エルフと、森の露天風呂で混浴とは最高じゃないか。


「なんか不思議な感じ……体に力が溢れてくるみたい」

「ああ、すごい……。ルロナ様の息吹を感じられる」

「今ならいくらでも魔法撃てそうよ」

「そうだな。体が軽い。神経も研ぎ澄まされていく」


 二人の肌に、薄緑色に輝くオーラがかかっていく。

 気づくと、俺の体にも同じ効果が現れていた。

 これは興味深い発見だ。

 ルロナの魔石でスキルを使うと、また違う効果があるということか。

 まるで、温泉の効能の違いみたいだな。


「今宵は寝ずの番だったが、むしろ昼間よりも元気になってきた。リクのスキルはすごいな」

「どう? ティルダ、お風呂っていいものでしょ」

「ああ、最高だ。これなら毎日でもいい。リク、毎日でもいいのか?」

「もちろんだよ。入れるときは、いつでもいいぞ。それに、始まりの街に戻れば、この数倍ある大浴場に入れるぞ」

「なんと! 素晴らしいな! ぜひ入りたいものだ」


 静かな森の中に、笑い声が響く。

 こうして、エルフのティルダが、新たな仲間として加わった。

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