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裸の付き合いは世界を救う! 最強の回復スキル『温泉』で異世界銭湯始めます  作者: Peace
二章 銭湯建設計画

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29.夢が広がる銭湯計画

 ドワーフたちが到着し、街の拡張工事が始まった。

 今ある家並みはそのままに、街の東側に土地の造成がされる。

 市場や店舗もそちらに移設して、新しいメインストリートが作られることも決まった。

 増えた冒険者に対応するため、冒険者ギルドも建物を新設することとなった。

 また、ギルドの収入源として、新しく宿屋を建てる計画となり、働く人の募集も行われている。


 ダムニスの人々やドワーフたちが移住してくるので、新しい住宅地を作らなくてはならない。

 貯め込んだ私財をつぎ込んで、全員が無償で住居に入れるよう整えるのだ。

 ゲームとは違い、今は俺も生きている大切な世界。

 一人だけ金を貯め込んでいたって、仕方がないのだ。


 俺の計画する銭湯は、冒険者ギルドに隣接して建てることとした。

 銭湯として、多くの人が楽しめるよう、広い敷地を取る。

 まどろみ亭の店舗も移設して、酒場は営業を継続し、宿は俺たちの居室として使うことにした。

 ゴルドンを街の運営会議に招き、様々な人の意見を取り入れながら、新しい街の姿を模索している。


「で、大事な話って?」


 一日が終わり、まどろみ亭の居室で、ライザと過ごしていた。

 ライザが光の精霊を呼び出し、天井にフヨフヨと浮かんでいる。

 電気が無い生活にも慣れてきたが、話をするには明かりがあったほうがいい。

 間接照明みたいな、ぴったりの明るさだ。

 エトリから聞いた話は、ライザにも知っておいてもらいたいことだ。

 やっと落ち着いて夜を過ごせるようになったので、早速呼び出したというわけだ。


「ドワーフの里で、女神エトリと会ったことは話したよな」

「ええ、なんかすごい話だったわね」


 ほんのりと熱を持った頬が、俺の胸に当たっている。

 酒を飲みながら話すつもりが、いつの間にか一戦交えてしまっていた。

 ライザと飲むと、いつもこうなってしまう。


「エトリは女神であり、GMでもあったんだ」

「GM? ゲームマスターのGMってこと?」

「そう。だから、サービス終了のことも、俺たちがプレイヤーだったことも知っていた」

「へぇ……。なんだか不思議な話ねえ」


 まだ物足りないのか、ライザはしきりに肌を擦り寄せてくる。

 三回もしたんだから、そろそろ勘弁していただきたい。

 正直、身が持たない。


「でも、私に何の関係があるの? 重要な役目はリクとカリンでしょ」

「それはそうなんだけど、ライザだって、本来はこの世界に存在しないはずのキャラクターなわけだ。それに、エトリは俺とライザのことを、世界を救う最後の鍵と言っていた」

「ふぅん……。今の状況だと、ピンとこないわね」


 ライザはつまらなそうに唇を尖らせた。

 布団の中で、もぞもぞと手を動かしながらだ。

 変なところをいじりながら話を聞くんじゃない。


「まだ何があるか分からないからな。この先、エルフやダークエルフとも接触をしていかないとダメだ。もしかしたら、そのときにライザの出番が来るのかもな」

「エルフの村かー。ゲーム始めた頃に出たっきりだなぁ」

「あそこには世界樹もあるだろ。エルフの村のシンボルだ。きっと、何か関わりがでてくるんだろう」

「そうかもね。じゃあ、次はエルフの村に行く感じ?」


 頷きながら、ライザの髪を撫でる。


「そうだな。巨人族の里は遠すぎるし、ダークエルフと接触する前には、やはりエルフを味方につけておきたい。ただ、その前に街の工事を終わらせてからだな」

「りょーかい。今度はちゃんと連れてってね」

「もちろんだよ。ライザがいないと物足りなくてな」

「うふふ……。物足りないって、何が? こっちの話かなぁ?」


 再び甘い空気が流れ始め、第二ラウンドと思ったときだった。


 ドンドン! ドンドン!


「リク殿ー! リク殿ー!」

「ひゃっ!」


 荒々しくドアがノックされ、ゴルドンのダミ声が轟いた。

 驚いたライザは、慌てて布団に潜り込む。

 魔力が乱れて、光の精霊が姿を消し、部屋は真っ暗になってしまった。


「なんですか、こんな夜中に」

「すごいものができたのじゃ! 早く見てほしいのじゃ! リク殿ー!」


 のじゃロリみたいな口調だが、立派なダミ声である。

 仕方がないので最低限の衣服を身に着け、ドアを開けた。


「リク殿ー! これを見てくだされー!」

「分かりました、分かりましたから! 先生、落ち着いて!」


 ドタドタと足を踏み鳴らして、ゴルドンが部屋に入ってくる。

 職人気質とでもいうのか、何か新しい発見があると、見せずにはいられないのだろう。

 テーブルに燭台を置いて、ろうそくに火を灯す。


「これじゃ、これ! おっと……これは失礼。お楽しみ中でしたかの」


 ベッドにいるライザを見て、ゴルドンがニヤリと笑った。


「ま、まあ……。すみません、ドワーフとエルフは仲が悪いんですよね」

「ほ? エルフとですか? そんなことはありませんぞい?」


 あれ?

 ゲームでは、そんな話を聞いた気がするんだけどな。


「里では、エルフたちとも普通に取引がありますしの。いやあ、ライザ殿をモノにするとは、さすがはリク殿。お目が高い」

「あ、あれ……?」

「だから、関係ないって言ったのに……ぶーぶー」


 布団から半分だけ顔を出して、ライザが小声で文句を言っている。


「とっ! ところで、見せたいものというのは」

「おお、これじゃこれじゃ」


 ライザは服を着ていないので、ゴルドンにマジマジと見られるのは困る。

 話を戻すと、ゴルドンは嬉しそうに大きな包みを取り出した。


「見てくだされ。不純物の一切ない、最高の魔鉱石ができたのじゃ」

「おお……これはすごい」


 魔鉱石の精製は、とても難しい作業だと聞く。

 不純物が多ければ、その分の力が弱まってしまうからだ。

 熟練のドワーフでも80%程度で、90%のものができれば大成功だと聞く。


「こんな魔鉱石を作れたのは初めてじゃ。こいつはリク殿にぴったりのものですぞ」

「俺に? それはどういうことです?」

「これを加工して、魔石を埋め込むのじゃ。そして、スキルの力を発動させる。すると、魔鉱石の中でスキルが保たれるのじゃよ」

「スキルが、保たれる……」

「うむ。大規模な銭湯を作るというリク殿の計画。最大の懸念は、湯を出すスキルの持続性ですじゃ。これを使えば、その悩みは解決しますぞ。せいぜい月に一度、スキルの力を補充するだけで済むのじゃ」


 なんという素晴らしい提案か。

 ゴルドンが言うとおり、大規模な銭湯にするためには、スキル”温泉”の持続性が問題だった。

 グレードの高い魔石は豊富にあるが、毎日使うとなると話は違ってくる。


「素晴らしいじゃないですか。さすが先生!」

「そうじゃろ、そうじゃろ。長年作っておるが、儂も初めてのことじゃ」

「これで準備は整いましたね。あとは銭湯の具体的な計画に移りましょう」

「おう、明日、また新しい設計図を持ってくるでの」


 ニコニコ上機嫌で、ゴルドンは部屋を出ていった。


「なんか面白いことになってるみたいね」


 ベッドから起き上がり、ライザが身を寄せてくる。


「お前……なんか着ろよ」

「いいじゃない、どうせすぐ脱ぐんだから、最初から着なくていいわ」


 まったく、やる気まんまんだな。

 逆に、俺のほうが恥ずかしくなってくる。


「これに、エトリ様からもらった魔石を設置したらどうかなと思ってる」

「いいわね。女神の魔石から出るお湯でしょ。目玉になるわよ!」

「かなり贅沢なお湯だよな。なんでも回復しちゃうんだぜ」

「みんな安心して冒険に出れるわ。ゲームのときも、そうだったじゃない。死んでも街に戻るだけだったんだし」

「そうだな。あとは、どんなお風呂を作るか考えないと」


 ゴルドンが書いてくれた図面を広げ、計画を練る。


「銭湯なんだし、男湯と女湯は分けるの?」

「それなんだけどさ、人々の交流も目的にするなら、混浴にできないかなと思ってる」

「マジ? でも、男はともかく、女は厳しいんじゃない?」

「この世界の人たちって、割と抵抗少ないんじゃないかなって思ったんだ。でも、さすがに素っ裸ってわけにはいかないから、脱衣所と洗い場を別にして、湯浴み着みたいなのをレンタルしたらどうかなって思ってる」


 目を輝かせながら、ライザは話を聞いている。


「なるほどね! 混浴温泉だと、そういうのあるもんね」

「まあ、他の女性たちにも相談してからだね」

「私はいいと思うよ。裸の付き合いってやつだね!」


 これから多数の種族が入ってくるとなると、やはり相互の交流は不可欠だ。

 まどろみ亭で簡易的な銭湯をやってきたけど、受け入れられそうな気はする。

 俺が入っていっても、あまり気にしていないようだったし。


「そうだね。あとは大浴槽かな。全員で入れる風呂を作ろうと思ってる」

「ジェットバスや、泡風呂なんかも、面白いんじゃない?」

「うーん。電気があるわけじゃないからな。魔法を使ったらできるかもしれない。ゴルドンと研究が必要だね」

「あとはやっぱり、サウナと水風呂は欲しいわよ。整う~ってやつ」

「それならできそうだな。ゴルドンに話してみよう。あと、打たせ湯もできそうだね」


 現世の知識があるライザとなので、銭湯の話をすると夢が広がっていく。

 設計図にメモを取りながら、お湯を楽しむ人々の姿を思い浮かべた。


「あと、僕らが入るための、特別な風呂を作ろうと思ってるんだ」

「へえ、いいじゃない。プライベートなお風呂ね」

「うん。そんなに大きくなくてもいいから、仲間たちで気兼ねなく入れるような、露天風呂みたいなのがいいかなって」

「あー! すごくいいわ! みんなで飲みながら入れるわね。でも、仲間たちって言っても、リク以外みんな女の子じゃない。まったく、エッチなんだから」


 ライザはニヤニヤ笑いながら、俺の頬をつついてくる。


「うっ……否定はしないよ」

「みんなリクにメロメロだから、誰も反対しないと思うよー。なるほどー、露天風呂ねー」


 ライザもノリノリになってきた。

 アイデアは尽きることなく、あっという間に夜が更けていく。

 遅くまでライザと話し合い、その後は濃密なひとときを過ごした。

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