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裸の付き合いは世界を救う! 最強の回復スキル『温泉』で異世界銭湯始めます  作者: Peace
二章 銭湯建設計画

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16.ドワーフの少女 ルビー

 ダムニスから戻り、ギルドと相談して早速支援を始めた。

 何人もの冒険者や商人たちが、ひっきりなしにダムニスへ旅立っていく。

 食料や支援物資、街の再建を手伝う人足、新たな働き口として、ダムニスのキャンプは大いに賑わっているようだ。


 一方で、復興途中の街では日常生活もままならない。

 そこで、老人や女性、子供を、安全な始まりの街へ移住させたいと要望があった。

 冒険者ギルドと商人ギルドが一致団結して受け入れ態勢を整えるが、増える需要に追いつかないのが問題だった。


 街の規模を広げるためには、人手も物資も足りない現状がある。

 かと言って、ダムニスへの支援は止められない。

 増えてきたとはいえ、冒険者もまだまだ足りない。

 なかなか頭の痛い問題である。


「やはり、どこかに頼むしかないなぁ」


 冒険者ギルドの長、クリフがため息をつく。

 丸坊主で恰幅のいい大男だ。

 お相撲さんみたいな体型だが、こう見えてロイヤルガードというタンク職。

 冒険者時代は、パーティーの守備の要として大活躍していたらしい。

 ちびちびとストローでフルーツジュースを飲んでる姿からは、とても想像もできない。


 開店前のまどろみ亭の酒場、始まりの街の方策を決める会議が行われている。

 俺はダムニスの惨状を見てきた冒険者として、オブザーバー的な立場で参加していた。


「街の規模を大きくするのであれば、結界の強化も必要です。ダムニスでは結界が破られたそうですし、いずれにせよ急務でしょう」


 透き通るような声で話すのは、魔法学院の校長、アメリエットさん。

 冒険者道場に併設された、魔法職のための先生だ。

 美貌のエルフの女性で、スレンダーな体は綺羅びやかなローブに包まれている。

 清楚という言葉を絵に書いたような、典型的なエルフの姿だ。

 どうしてライザは、ああなってしまったのか。


「結界を強化するのであれば、魔鉱石が大量にいるぞ。里に応援を頼むしかないじゃろう」


 職人組合の代表、鍛冶職人のジェラルドが口を開く。

 小柄だがガッシリした肉体で、灰色の髭を生やしたドワーフだ。

 ジェラルドの重々しい声に、クリフやアメリエットさんが頷く。


「ですが、ドワーフの里への道は、高レベルのモンスターが多い。無事にたどり着けましょうか」


 アメリエットさんが懸念の表情を浮かべる。

 すると、クリフがニヤッと笑った。


「リク、そこでお前さんの出番だ。あんたなら、余裕でいけるだろ」


 クリフが俺に向かってウインクをする。

 おっさんがやると気持ち悪いぞ。


「まあ、俺しかいないでしょうね。ただ、できれば道案内が欲しいところです」


 グランドマイスターの転職クエストで、ドワーフの里には一度だけ行った。

 途中には廃鉱山や山脈が連なり、非常に難易度の高いダンジョンとなっている。

 ぼっちプレイヤーだった俺は、金を積んで護衛役を集めたんだ。


「この街から出せるとなると……ハンナしかいねえか。おーい、ハンナ!」

「聞いてたよ。お安い御用さね」


 クリフが腕組みをしながら叫ぶ。

 すると、カウンターにいたハンナさんが叫び返してきた。


「ハンナさん!? 行ったことあるんですか?」

「死んだ旦那とね、世界中を回ったのよ」


 ハンナさんが色っぽいウインクを投げかけてくる。

 うん、ウインクはやっぱり美人がやるからいいんだよな。


「へぇ……それなら安心だ」

「儂も紹介状を書くが、ハンナ嬢がついていってくれるなら確実じゃ。里の連中は気難しいが、ハンナ嬢なら顔が効くじゃろうからな」


 ジェラルドがポンと膝を叩く。

 ハンナさん、相当すごい冒険者だったんだな。


「それじゃ、早速頼む。ギルドからのクエストとして受けてもらうからな。戻ってきたら、相応の謝礼を払おう」

「分かりました」


 クリフたちが帰るのと入れ替わりで、仲間たちが集まってくる。


「さて、そういうわけなんだけど、ハンナさんと俺、あとはハヅキは確定だな」


 同行するメンバーの選定に入る。

 アマゾネスのハンナさん、ソードマスターのハヅキは、レベル的にも申し分ない。


「残念だが、今回はシェリルたちはお留守番だ。危険が大きすぎる」


 話を聞いて分かっていたのか、シェリルたちはしょんぼりして引き下がった。


「あとはライザも連れていけない」

「えー、なんでよ」

「ドワーフはエルフを嫌うって言うからな」

「そんなの設定上の話でしょ。関係ないかもしれないじゃない」


 ライザは食い下がるが、下手に連れて行ってこじれても困るからな。

 さて、どう言いくるめたものか。

 なかなか納得してくれないだろう。


「私がついていくんだから、ライザちゃんに宿を任せたいんだけど。ね、お願い」

「うぅ、ハンナさんがそう言うなら、仕方ないか。ハヅキ、抜け駆け禁止ね」

「はいはい、分かりました」


 ハンナさんに抱き締められ、ライザは不承不承うなずいた。

 それでも、ハヅキに抜け駆けするなと釘を刺すところはさすがだ。

 一歩リードしているというのに、相当警戒しているみたいだな。

 ハヅキのほうは、聞く耳持たずというところだが。


「よし、決まりだ。みんなは準備を頼む。俺はジェラルドの工房に行ってくるからな」


 それぞれに準備を任せ、まどろみ亭を出る。

 ジェラルドの工房はまどろみ亭の裏手、歩いて数分もかからない距離だ。

 里への旅程を考えながら歩いていたら、何かにぶつかってしまう。


「わぷっ!」


 ふにょんとした、とても柔らかいもの腿に当たる。

 なんだ、この幸せな感触は。


「んにゅー……いたぁい……」


 足元から、可愛らしい声が聞こえる。

 視線を下げると、小さい女の子が尻もちをついていた。

 オレンジ色の髪をツインテールにまとめた、くりくりした目の少女だ。

 黒を基調に、金糸の刺繍が入った、高級なローブを身に着けている。


 見た目は完全に子供なんだが、胸元の迫力はとんでもない。

 コレット並、いや、それ以上か。

 腿に当たった幸せな感触は、あれだったのか。


「大丈夫か? ごめん、考え事をしてて」


 小さな手を引いて、助け起こす。

 立ち上がっても、俺の腰までしか背丈がない。

 彼女は、ドワーフだ。

 ローブを着ているけど、ドワーフは攻撃魔法を使えないから、神官かもしれない。

 背中に巨大なハンマーを背負っているのは、女の子とはいえ、さすがというところだ。

 ドワーフは力持ちの種族だからな。


「ぶつかってごめんなさい」

「いや、俺のほうが悪い。どこか怪我してないか?」


 膝をついて、目線を合わせて話をする。

 うーん、改めて見ると、ものすごい可愛い子だなあ。


「大丈夫。頑丈なのが取り柄だから!」

「そうか、良かった。どこかに行くところかな?」

「はい。叔父さんにお届け物なの。この街で工房を開いてるって聞いたんだけど、見つからなくって」

「叔父さん……? もしかして、ジェラルドのことかな」

「あれ? お兄さん、叔父さんのこと知ってるの?」


 女の子は、きょとんと首をかしげる。


「仕事仲間だよ。ちょうどジェラルドの工房に行くところだったんだ。案内するよ」

「やった! 初めて来た街だから、迷子になりかけてたの」

「俺はリク。この街で冒険者をしている」

「エトリの司祭、ルビーだよ。よろしくー」


 ルビーは丁寧に頭を下げた。

 エトリというのは、ドワーフが信仰する職人の女神。

 こんな小さいのに司祭だなんて、すごい子だな。

 ドワーフは長命の種族だから、実は俺よりも年上という可能性もある。


「ルビーはいくつなの?」

「今年で100歳になったの! お爺ちゃんに、お前も一人前なんだから、お使いを頼むって言われて、初めて里から出たんだー」


 えっへんと言わんばかりに、ルビーが大きな胸を張る。

 100歳……、人間族の5倍と考えても、20歳くらいか。

 一部を除いて、まったくそう見えないところが怖い。

 この顔立ち、この背丈で、その胸は反則だろ……。


「じゃあ、いこうか。ルビー」

「はーい、お兄さん」


 当然のように、ルビーが俺の手を握ってきた。

 赤ちゃんみたいな柔らかさの、温かい手だ。

 うーむ、現実世界なら、色々とヤバい絵面だな。

 顔立ちも喋り方も幼いし、ニコニコ見上げてくる笑顔は完全に子供だ。


 いやいや、ルビーはドワーフだし、立派な大人なんだ。

 だから、まったく問題はない……はずだ。

 そう自分に言い聞かせながら、ジェラルドの工房に向かった。

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