#64 三段法騎戦艦上陸作戦
「ううん、周りの魔男連合艦隊は! 魔女側の奮闘により、中々やられているようであってよ!」
「ええ、マリアナ様! ちょっと複雑です……」
攻撃をしつつ逃げ惑う空宙装甲列車の車窓から、周囲の魔男連合艦隊と世界連合艦隊の戦いを眺め。
マリアナたちは、歯軋りしていた。
今、三段法騎戦艦から分離したバビロンの番人に追い回されている自分たちとは雲泥の差である。
「よし……俺が何とかする!」
「! み、ミスター方幻術?」
「な、何よ?」
が、そんな時。
剣人が、声を上げた。
「……一つだけ確信がある! 行かせてくれれば分かる!」
「な、何をおっしゃって?」
「そ、そうよそうよ!」
マリアナと法使夏は、訳が分からないが。
「ぐっ! Damn……あの怪物たちは、まだ追い縋って来る!」
「ふっ……もう、仕方ないな!」
剣人はそのピンチを、むしろ自分が出るチャンスと捉え。
「俺が出る! ソー軍曹、俺の法機を屋根の上に出してくれ!」
「y、YES! Mr.Hougenji!」
そこで名乗りを上げ。
応じたデイヴは、法機クロウリーを格納している車両上部の飛行甲板を回転させ。
法機クロウリーを、露にする。
「さあて……セレクト 、デパーチャー オブ 空飛ぶ法機、エグゼキュート!」
そうして。
剣人の命を受けて法機クロウリーは、飛行甲板たる車両屋根に備え付けられていて今同機下部に位置している溝状のカタパルトにより加速され空宙装甲列車を発艦する。
「俺のクロウリーも、以前は黒客魔となっていた……ならば!」
剣人は、ある種の確信を持つ。
そして。
「hccps://Hades.char/、セレクト コネクティング! hccps://KentoHougenji:××××××@ophiuchus.mc/ophiuchus.engn、セレクト、コネクティング! ダウンロード 電使翼機関、エグゼキュート!」
そのまま術句を、唱えるや。
「ま、マリアナ様! 方幻術の法機が!」
「ええ……法騎となってよ!」
法機クロウリーは、その機体に電使翼機関を宿し。
更に操縦席部分を人型上半身に変えた法騎の姿となった。
「hccps://crowley.srow/、セレクト アトランダムデッキ! 皇帝――皇帝の威光 エグゼキュート!」
「!? ま、真白! 艦底部分に!」
「ええ、まさかね……二体目が現れるなんて聞いてなかったわ!」
そんな中、真白と黒日は見た。
三段法騎戦艦艦底部分に、またも巨大法騎型エネルギー体纏う法騎が出現した有様を。
その眩さに、空宙装甲列車を追っていたバビロンの番人たちも動きを止める。
「な……あれは、クロウリー……方幻術が!?」
青夢もこの有様を見て、目を瞬く。
◆◇
「魔導香、井使魔……お前たちが何を考えているかは今もまったく分からん! だが、一つ分かるとすればそれは……お前たちが親友の、魔女木のことを何一つ考えていないということだ!」
剣人は通信を三段法騎戦艦に投げながら叫ぶ。
「ええ、もはや考える必要なんてないもの!」
「二体も厄介なデカブツが現れるなんてね……なら考える暇などないわ、ただやるまでよ!」
が、真白と黒日には響かぬとばかり。
むしろ厄介な敵は即刻排除すべきと改めて思われただけであった。
「魔導香、井使魔!」
「バビロンの番人たち、手に余るかもだけどそいつをやっちゃって!」
「く……やはりやるしかないのか!」
真白と黒日の命を受け。
一時動きを止めていた四体の獣たちが、再始動する。
「邪魔だ、あっちに行け! 俺は魔女木を、守らねばならない!」
剣人はエネルギー体の腕を振るい、迫り来る四体の獣たちを払う。
「hccps://camilla.wac/……セレクト サッキング ブラッド!」
「hccps://giganticmandrake.mna/edrn/fs/typhon.fs?stooming=true――Select, 嵐の神!」
「……hccps://rusalka.wac/…… セレクト 儚き泡!」
「hccps://giganticmandrake.mna/GrimoreMark/、Select 泡沫暴風雨 Execute!」
「! 魔法塔華院たちか!」
そんな剣人へ。
援護射撃とばかり、空宙装甲列車からも四体の獣を狙う攻撃が見舞われ。
獣たちはそれぞれに、翼や牙や角で防ぐ。
「今だ、電使翼機関全速! さあ、退け! 俺が目指すは……魔女木が立ち向かう、魔導香や井使魔の座乗する三段法騎戦艦だ!」
その隙を突いて剣人は、電使翼機関を最大速とし。
攻撃を防ぐ四体の獣たちに対し、纏うエネルギー体諸共に突撃を仕掛ける。
それにより獣たちに、エネルギー体がぶつかるが。
獣たちは負けじと、エネルギー体と文字通り火花を散らす。
「くっ、まだ抵抗するか……ならば!hccps://crowley.srow/、セレクト アトランダムデッキ! 世界――天球流星群! エグゼキュート!」
「! マリアナ様、方幻術が!」
「ええ、ついにあの番人たちを押し除けて行きましてよ!」
「Good! よくやったMr.Hougenji!」
獣たちは剣人の、法騎纏うエネルギー体から放たれた無数の光弾により押し除けられ。
そのまま剣人は、法騎の電使翼機関最大速そのままに。
三段法騎戦艦が纏うエネルギー体に自騎のエネルギー体の腕を振るいながら、青夢が取っ組み合っている上部へとたどり着く。
「魔女木!」
「! 方幻術……あんた!」
そのまま剣人の法騎は、青夢が今取っ組み合わせている法騎ジャンヌダルクと並ぶ。
「へえ、方幻術君! あの番人たちを突破してくるなんて中々やるじゃないの!」
「やっぱりあなた厄介ね……パールの言っていた通り!」
「ふん、そりゃありがた迷惑な言葉だな!」
尚も法騎ジャンヌダルクと取っ組み合う三段法騎戦艦より、真白と黒日の声が聞こえる。
「さあ……退け、魔女木!」
「くっ! ほ、方幻術!?」
が、次には。
剣人は何と、自騎のエネルギー体を法騎ジャンヌダルクが纏うエネルギー体にぶつけ。
それにより青夢に代わり、彼が三段法騎戦艦のエネルギー体両腕に自騎のエネルギー体両腕を掴み掛からせる。
「あら! 方幻術君が代わってくれるの?」
「ああ! 魔女木にはどうやら、今一度お前たちと直に顔を合わせる必要があるみたいだからな!」
こうして三段法騎戦艦を止める役を代わりつつ、剣人は真白たちと軽口を叩き合う。
「方幻術……」
「行け、魔女木! 友達と、生身で一旦向き合え!」
「うん……ありがとう!」
青夢は戸惑いつつも、結局は彼に背中を押され。
それにより彼女は法騎のエネルギー体を解除し、元の法騎の大きさのまま三段法騎戦艦の側面に周り込む。
「さあ、行かせてもらうわ魔都バビロン…… hccps://jehannedarc.srow/、セレクト! ビクトリー イン オルレアン!hccps://jehannedarc.srow/GrimoreMark、セレクト オルレアンの栄光弾 エグゼキュート!」
青夢はそうして、術句を唱え。
命令を受けた法騎ジャンヌダルクは三段法騎戦艦エネルギー体へ次々と体当たりを繰り返す。
そして。
「む! エネルギー体側面への負荷増大……くっ、突破されたわ!」
「あらら……まあいいわ! 魔都バビロンへ行く気なのね、パールにお願いしなきゃ!」
法騎ジャンヌダルクにエネルギー体内部に入り込まれ。
真白と黒日はしかしながら、さして気にしていない素振りを見せる。
――ええ、そうね! だけど……真白、黒日あなたたちまさか。こうなること、望んでいたんじゃないでしょうね?
「あら女王陛下……いいえ、予想外の由々しき事態よ!」
「でも……仕方ないでしょ! 私たちが揺らいだって、どうにもならないんだから!」
――……そうね、ではパールにお願いしなきゃ。
女王ディアナは二人を訝りつつも、一応は静観する。
「よし、飛行甲板に乗ったわ! ……さあて。」
hccps://BabylonTheGreat.srow/Babylon
「……セレクト 、ログイン! エグゼキュート!」
一方、青夢は法騎ジャンヌダルクを三段法騎戦艦後部飛行甲板一段目に着艦させ。
そのまま、術句を唱え――
◆◇
「……また、来たわ魔都バビロン!」
青夢はそうして、法騎ジャンヌダルクをコンバートさせ。
再び、魔都バビロンへと入り込んだ。
灰色の空から見下ろすその景色は、城壁に囲まれた楼閣の並ぶ都市が広がる様。
以前見たものと、同じ光景である。
更に、それを麓に構え天高くどこまでも続く塔がある。
「……そう、目指すはあそこね!」
青夢は、改めて意を決し。
法騎ジャンヌダルクを、加速させる。
と、そこへ。
「hccps://emeth.makeda.wac/! セレクト 、大蛇殺し エグゼキュート!」
「む! あんたは……」
「ええ……ようこそ、魔女木青夢! 待ちかねていましたよ……」
青夢に、挨拶代わりとばかりに攻撃を打ち込んで来たのは。
ここで先客として待ち構えていた、パールであった。
◆◇
「マリアナ様! 魔女木が三段法騎戦艦に突入成功したようです!」
その頃、現実世界では。
空宙装甲列車からも、法騎ジャンヌダルクの様子は見えていた。
「ええ、そうであってね……だけど!」
「Well……く、中々これは厳しいな!」
が、空宙装甲列車は。
剣人に先ほど一旦は退けられながらも再び戻って来たバビロンの番人四体に、またも攻撃しつつ逃げ回ることを続けていた。
「hccps://hel.wac/、セレクト 地獄誘い! エグゼキュート!」
「hccps://redserpent.mna/edrn/fs/samael.fs?demon_freezing=true――セレクト、魔王の氷獄! hccps://redserpent.mna/GrimoreMark、氷溶渦巻! エグゼキュート!」
「!? あれは!」
しかしマリアナたちが、驚いたことに。
突如として宇宙に湧いて出た氷塊群が火炎により解けて乱気流となり、四体の番人たちを退ける。
「Well……ようやくスペシャルゲストたちがお越しだ!」
「え?」
「ま、マリアナ様! あれは飯綱法と矢魔道さんです!」
デイヴは知っていたようである。
突如現れたのは、法機パンドラとレッドサーペントであった。
◆◇
「お待ちかねとは光栄ね! だけど……さっきの攻撃からして、私が招かれざる客って感じだけど?」
「いいえ、先ほどの攻撃はむしろ歓迎のご挨拶ですわ! ふふふ……」
そんな中魔都バビロンでは、やはり青夢とパールが対峙している。
しかし、青夢は。
まだ、この邂逅の意味を理解できていなかった――




