#62 救国の乙女vs新たな女王
「……青夢、私たちに勝てるかしら!!」
「そうね……分からないけど!」
新女王の宙飛ぶ三段法騎戦艦バビロンザグレートと、戦乙女の宙飛ぶ法騎ジャンヌダルク。
元はまったく大きさの違うこの艦と騎もそれぞれに攻防一体のエネルギー体を纏うことにより、同程度の大きさとなって取っ組み合っていた。
「hccps://BabylonTheGreat.srow/、セレクト 月の弓矢! hccps://BabylonTheGreat.srow/GrimoreMark、セレクト 豪炎の光矢 エグゼキュート!」
「くっ! 主砲撃を!」
が、そのさなか三段法騎戦艦は主砲塔を唸らせ。
そこから吐き出された複数強力な火線が、法騎ジャンヌダルクの纏う巨大エネルギー体を貫く。
「あら残念……中の法騎には直撃させられなかったのね!」
「ええ、大きければいいというものじゃないのね! 面白いわ!」
とはいえ、あくまでエネルギー体を貫いたのみであり。
長大な矢に見立てられたその火線は、中の法騎本体を捉え切れなかった。
「今のは驚いたわ……なら、これはどうかしら! hccps://jehannedarc.srow/、サーチ クリティカル アサルト オブ ジャンヌダルク! セレクト ビクトリー イン オルレアン! エグゼキュート!」
「む!? 黒日、これは」
「ええ……シンプルにかつストレートに来てくれるじゃないの青夢!」
そうして、青夢も法騎ジャンヌダルクに命じ。
必殺技の火線を、さして改造することもなく。
三段法騎戦艦に叩き込まれ、同艦を覆うエネルギー体は貫かれて艦体は最前部より主砲塔から上半身型艦橋下部を一閃される。
「……でも、残念だったわね!hccps://www.Babylon.chal/、セレクト リペアリング 新女王の宙飛ぶ三段法騎戦艦バビロンザグレート! エグゼキュート!」
「む! やっぱり……直せるのね!」
が、真白が術句を唱えるや。
一閃された艦前半部は、瞬く間に修復される。
青夢もそこまでは知らないが、バビロンザグレートが内包している聖血の杯と同等の力たる穢れし金杯の効能である。
「ふふふ、またもこちらからお返しよ……セレクト 豪炎の光矢!!」
「主砲塔を……また私を狙う気ね! セレクト ビクトリー イン オルレアン!」
「……エグゼキュート!!!」
次には法騎に乗る青夢と、三段法騎戦艦に座乗する真白・黒日の術句同時詠唱が発動し。
法騎と三段法騎戦艦、それぞれの火線が互いのエネルギー体を貫く。
「ぐう! ふん、また艦体を……やってくれるじゃない青夢!」
「だけど、敢えて私たちがいる艦橋を避けているようにも見えるわね……覚悟が決まってないの?」
「あんたたちこそ! 今のだって、私の法騎に直撃させようと思えばできたでしょうに!」
またも互いに急所は外しつつ、軽口を叩き合う。
「言ってくれるじゃないの! なら今度こそ直撃させてあげたいわね、でも難しいわ! さあて……どうする、黒日!」
「そうね……どうしたものかしらね!」
尚も取っ組み合いと火線の撃ち合いを続ける法騎と三段法騎戦艦である。
しかし。
――埒が明かないわね、真白・黒日。さっさと葬っておしまいなさい!
――そうよ、早く!
「ふう、女王陛下と姫君のお願いじゃあ仕方ないわよね……hccps://BabylonTheGreat.srow/、セレクト 月の弓矢!」
「ええ、真白!hccps://BabylonTheGreat.srow/GrimoreMark、セレクト 月光集矢!」
「エグゼキュート!!」
そこへ、女王ディアナと姫君アラディアの叱責が飛び。
真白と黒日は促され、術句を唱える。
すると。
「くっ、また艦砲射撃? もうそんなの……なっ!」
青夢も、てっきりこれまで通りの攻撃と思っていたが。
またも三段法騎戦艦から撃ち込まれた主砲撃の火線は、法騎を外してそれが纏うエネルギー体を貫き。
かと思えば貫通せず、分裂し無数の光矢となって内部の法騎ジャンヌダルクに迫る。
「くっ、ここは……一旦離脱ね!」
青夢も、これはさすがに敵わぬと。
法騎が纏うエネルギー体を解除し、上方へと退避しようとする。
が。
「な!? あの光の矢たち、追尾機能付きとはますます厄介ね!」
青夢が歯軋りしたことに。
今の彼女の弁にあった通り、先ほどの光矢たちはその場を離脱した法騎ジャンヌダルクを執念深く追尾してくる。
更に。
「よっと!」
「くっ! 厄介の極みね!」
三段法騎戦艦纏う、そのエネルギー体の艦橋を象った部分は手を伸ばして法騎ジャンヌダルクを掴もうとし。
青夢はすんでの所で、どうにかその動きを躱す。
「なるほど、本当に厄介だわ! だけど……私もそう逃げ回ってはいられないのよだから!」
しかし青夢は、決意を新たにする。
もはや、自分に退路はないと。
そうして。
「hccps://jehannedarc.row/、セレクト! ビクトリー イン オルレアン!hccps://jehannedarc.row/GrimoreMark、セレクト オルレアンの栄光弾 エグゼキュート!」
「む、これは!」
「なるほど……やるわね!」
三段法騎戦艦艦橋より、上を見上げて真白・黒日が笑うことに。
青夢は自騎に命じ、命を受けたジャンヌダルクが変わる変わる瞬間移動をしつつ光線と化し。
自分に追い縋って来ていた無数の光矢に対し、突撃を仕掛けている。
それにより光矢は、悉く破壊される。
――真白、黒日。
「……分かってるわよ、女王陛下!」
「そうね……私たちは、世界の敵だもん!」
真白と黒日は、またもディアナに釘を刺され。
三段法騎戦艦の主砲塔砲身を、今青夢がいる直上に向ける。
そうして。
「セレクト 月光集矢!」
「エグゼキュート!!」
「む!? なるほど、忘れていたわ……本丸は真下だって! ならまた……セレクト オルレアンの栄光弾 エグゼキュート!」
三段法騎戦艦は直上に主砲撃を放ち、それにより青夢はまたも迎撃の必要性に駆られる。
――(さっきの攻撃といい、今といい……これはまだ情が抜けていないと言うべきかしら。)
が、ディアナは。
真白と黒日の覚悟を、少し疑っていた。
しかし、その時である。
「くっ!? か、艦底部分に衝撃あり!」
「あらあら! 原因は何かしら? まさか……」
突如、鳴動に襲われた三段法騎戦艦だが。
真白は原因を考えながら、今尚頭上を飛び回る法騎ジャンヌダルクを見る。
「なるほど……あれは囮で、本分は別にいるってことなのね!」
真白はそこで、ふと気づく。
それは。
「Well……艦底には着弾! 但し、バリアがちょっと揺らいだだけのようだ。」
「ええ、まあそう簡単にはできなさそうであってよ!」
「はい、マリアナ様!」
「魔女木……」
凸凹飛行隊とお目付役としてのデイヴが乗る、大砲や発射管を多数備えた装甲の施された空宙列車・空宙装甲列車である。
衛星軌道からは外れているが、安定翼を広げ搭載法機の力も借りて軌道外でも飛翔できている。
「hccps://giganticmandrake.mna/edrn/fs/typhon.fs?stooming=true――Select, 嵐の神!」
「hccps://camilla.wac/……セレクト サッキング ブラッド!」
「hccps://crowley.wac/、セレクト アトランダムデッキ! 隠者――黒弾奇襲 エグゼキュート!」
「……hccps://rusalka.wac/…… セレクト 儚き泡!」
「hccps://giganticmandrake.mna/GrimoreMark/、Select 擬似雷雨神台風 Execute!」
すかさずデイヴと凸凹飛行隊は。
その装甲列車搭載の法機たちに命じてグリモアマークレットを発動する。
たちまち空宙装甲列車を覆っていた擬似大気圏は渦巻き、第二波として嵐を纏いエネルギー雨を多数放つ。
「くっ、艦底部分エネルギー体負荷増大!」
「ふん、まあ放っておけばいいわ! それより、私たちはあくまで青夢を」
「hccps://jehannedarc.row/GrimoreMark、セレクト ルーアンの火刑 エグゼキュート!」
「む!? く、青夢……またエネルギー体を!」
そうして艦底の空宙装甲列車に、僅かながらも手こずる間に。
頭上の法騎ジャンヌダルクは再度、自身を模した巨大エネルギー体を纏いその両腕により三段法騎戦艦に掴みかかり。
それに気づいた真白・黒日も三段法騎戦艦のエネルギー体両腕にてそれを受け止め、さながら縦の取っ組み合いとなる。
「Yes、Ms.Mamekiが盛り返した! さあ、僕たちも!」
「勿論でございましてよ、ミスターソー!」
「マリアナ様、行きましょう!」
「魔女木、こっちも行くぞ!」
空宙装甲列車も、尚エネルギー雨を強め。
更に。
「hccps://crowley.wac/、セレクト アトランダムデッキ! 太陽――陽光の槍 エグゼキュート!」
「Well! デパーチャー オブ 誘導銀弾! エグゼキュート!」
「く……真白! 艦底部分エネルギー体負荷、更に増大!」
「あらあら……ますます厄介ね艦底の敵も!」
その車体に備えた、搭載法機に接続された対宙砲や発射管からの弾幕をも多数放ち。
真白・黒日は彼らを鬱陶しがる。
「こうなったら……これはどうかしら!」
「!? あれは!」
が、凸凹飛行隊面々やデイヴが驚いたことに。
三段法騎戦艦艦体に、動きが生じる。
それは表面を蠢かせ。
かと思えば、そこから形を成し分離していく影が四つあった。
「Damn……また!」
「ええ……魔都バビロンを守っていた四つの獣であってね!」
「ま、マリアナ様!」
「何と……」
魔都バビロンで襲いかかって来た鷲の翼を持つ獅子に、三本の肋骨を咥えた熊、翼と頭が四つある豹、十の角と鉄の歯を持つ恐ろしく強い獣が。
親元である三段法騎戦艦のエネルギー体をすり抜け、再び襲いかかって来たのであった。
◆◇
「さあて、まだ来ないのですか魔女木青夢? ……私は、いくらでもお待ちしておりますよ。」
一方三段法騎戦艦メインシステム内仮想世界、魔都バビロンの空宙庭園では。
現実世界の喧騒とは裏腹に、女王側近パールは優雅に茶を楽しんでいた――




