#61 新たな女王、再戦
「ううむ……忌まわしい!」
「ええ……何よ何よお! 凸凹飛行隊の小娘の法騎があんなキラキラして!」
「オオオオ! 本当に、忌まわしいなあ!」
12騎士団総出による魔男連合艦隊では。
各騎士団長が、忌々しげに前を見つめている。
その先には。
「あなた……本当に私たちと戦えるの?」
「本当よね真白……まだ私たちも救いたいなんて宣っている甘ちゃんが!」
魔男連合艦隊の旗艦、新女王の宙飛ぶ三段法騎戦艦バビロンザグレートが睨む相手でもあるもの。
「ええ、そうね! 私は甘ちゃんかもしれない! だとしても……あなたたちを救いたいって気持ちは変わらないわ!」
自身を象った巨大なエネルギー体を纏う法騎ジャンヌダルク。
三段法騎戦艦と、二つの巨大な影が対峙している。
この二つの宇宙に――空気はないので通信により――響き合う声はそれぞれの弛まぬ、譲り合えぬ覚悟が滲むものである。
「……新たな女王の名において騎士団長諸卿、並びに他魔男たちに命じます! この戦い、我らにもはや退路はありません!」
「オオオオ!」
「ええ、その通りよお!」
真白の扇動に、魔男連合艦隊は沸く。
「……故に! あの世界連合軍中央を突破し、地上に攻め入ります!」
「オオオオ!」
「うっひょー! その通りです新たな女王陛下、今度こそ俺様が!」
またも魔男連合艦隊が沸き。
そうして。
「……全艦隊、突撃開始!」
「応!!」
「! 魔男の連合艦隊、高速接近!」
三段法騎戦艦を中心として連合艦隊は、突撃を仕掛けて来る。
「Now……今だ、Ms.Mameki!」
「は、はい!」
それを見て青夢も。
巨大エネルギー体纏う法騎を駆り魔男の連合艦隊へと、単身突撃を仕掛ける。
「な、あれは!」
「凸凹飛行隊の小娘……キー、何よ何よお! 一人だけで突撃なんかかましちゃって、舐めてもらっちゃ困るわ!」
それには各騎士団長も驚き。
各魔神艦の砲門を、法騎ジャンヌダルクへと向ける。
「……hccps://BabylonTheGreat.srow/、セレクト 月の弓矢! エグゼキュート!」
「む!? 真白、黒日……!」
「な……あ、新たな女王陛下!」
が、そんな法騎に一番槍を放ったのは三段法騎戦艦である。
「……騎士団長諸卿は周りの世界連合軍を片付けなさい! ここは私たちと彼女との舞台、何人たりとも邪魔はさせないわ!」
「はっ、ははあ!!」
「!? 敵艦隊、散開しました!」
三段法騎戦艦の真白・黒日からの命令に。
騎士団長らは勢いづき、むしろ法騎には道を開ける形でこれから来るであろう世界連合軍へ各魔神艦を向かわせる。
「……なるほど。真白、黒日あんたたちも私と戦ってくれるつもりなのね! 光栄だわ!」
この様子を見た青夢は、法騎の電使翼機関を最大速とし。
より速く、三段法騎戦艦に肉薄させていく。
「真白、黒日……私は、私の責務を全うしないとね!」
肉薄しながら青夢は、叫ぶ。
そう、青夢の責務。
それは――
◆◇
「……皆さん! すみません、デイヴさん。私から一つよろしいですか?」
「Yes……もちろん、Ms.Mameki! この作戦には、君が肝心だからね!」
そこで青夢は、皆に話し始める。
時は、空宙都市エルドラドにて世界連合軍会議が行われていた時に遡る。
「是……では魔女木さん。何をおっしゃってくださいますか?」
「ち、ちょっと小鬼!」
そんな青夢に鬼苺が、やや嫌味に言い。
女夭は、ハラハラする。
「ええ鬼苺さん……トバラ族との戦争の時は、失礼申し上げてすみません!」
「!? ふ、ふーん……あ、あなたにしては素直じゃない!」
が、青夢に謝られ。
鬼苺は、やや気まずい様子である。
「是……それなら、教えてくれるかしら? あなたが、如何にこの落とし前をつけるのか!」
「はい。私は……うっ!」
「!? m、Ms.Mameki!」
「魔女木さん!」
「魔女木!」
「魔女木!」
鬼苺が気を取り直して青夢に尋ね、彼女も答えようとするが。
その瞬間、青夢は頭痛に襲われ――
「(な、何……これは!?)」
そんな中、彼女の頭に浮かんで来たのは。
――私は"バベルの塔"を、神のお怒りを買わぬやり方で建てたつもりだった。
実際、建てている最中に神の罰は受けなかった。
だが、それは勘違いであることに気づくべきだった。
何故なら神罰は、その"バベルの塔"が完成することそのものだったからだ――
「(これは……あの、クソ親父が書いた空宙都市計画書の文!?)」
忘れもしない、青夢が以前全身全霊をかけて世界を救った際に対峙した"あいつ"に関して書かれた文言である。
更に。
「(バベルの塔……? ……っ!? ま、まさか!)」
青夢はその文言に、想起させられたものがあった。
――! 前方、巨大な建造物! 皆回避!
――む! 言われるまでもなくってよ!
――は、はいマリアナ様!
魔都バビロンに初めて乗り込んだ際の、あの光景である。
「m、Ms.Mameki! だ、大丈夫かい?」
「は、はいデイヴさん……うっ!?」
「w、What's wrong!?」
そのまま気分が安定したかに見えた青夢だったが、また頭痛に襲われ。
――ああ……イエス様! そして……真なる王! 私に……私に勇気を! hggpに基り雷賛魔導書目録閲覧! サーチ……
「(これ、は……?)」
青夢は、再び見る。
かつて見た、燃え盛る炎の中苦しむ少女。
いつも夢に見ていた、あのラピュセルの姿を。
「什么……そんなに苦しんで、私への当てつけかしら!?」
「し、小鬼!」
そんな青夢の様子に、鬼苺は痺れを切らすが。
「何なんだあんた! 魔女木さんにそんなに噛み付いて!」
「什么……あなたも、凸凹飛行隊とグルなのかしら?」
「待ちなさい、英乃!」
「姉貴、だけどよ!」
それを龍魔力姉妹次女の英乃に咎められ、更に英乃が姉・夢零に窘められ。
場はますます混乱してしまう。
「……待ってください! 私のせいで、これ以上世界連合軍が争わないでください。」
「! 魔女木さん……」
「是……ふ、ふん! 分かっているならいいの!」
その場を制したのは、青夢だった。
「m、Ms.Mameki……」
「魔女木さん。」
「魔女木。」
「魔女木!」
「……大丈夫。」
青夢に対し、デイヴや凸凹飛行隊面々が声をかけてくれた。
青夢はそんなデイヴたちに、笑みを返し。
そして。
「……私たちを信じてくれというのも、無理な話でしょう! なら……私が新たな女王に対する囮となります! だからその隙に世界連合軍の皆さんで他の魔男を倒して!」
「Ms.Mameki……」
「……ふっ、まああなたにしてはいい落とし所じゃなくって?」
「ま、マリアナ様……」
「魔女木……」
青夢は、そう宣言した。
「是! 私たち中国代表アポストロスは了承したわ!」
「是、小鬼……」
「네!」
「それでいいんだな、魔女木……」
「ふーん、それがあなたの落とし前なのね。」
「はい、レイテ様!!!」
「それはそれは……」
「defo!」
「Oui!」
青夢のその宣言に、世界連合軍は様々な反応を見せるが。
「……お姉さん、もしかして」
「ええ、そうね愛三。魔女木さんは、あの時の私たちを真似てくれたのね。」
龍魔力の夢零と愛三は、感慨深げだった。
というのも。
―― ……私たちは座乗艦たるゴルゴン艦諸共、囮となります! だからその隙に凸凹飛行隊の皆さんとマルタの魔女さん、あなた方で止めを刺して!
かつて、初めて幻獣機父艦を魔法塔華院・龍魔力で連合して迎え撃つべく夢零と愛三がマリアナたちに交渉した時の話だ。
あの時夢零たちは魔男側の技術を奪い使っていたことにより魔男とのよからぬ関係を疑われてしまい、あわや交渉決裂になりかけたのだが。
その時は、自ら囮となることを提案し交渉を成立させていた。
まさに青夢は、そのやり方を踏襲してくれたからである。
「(そうよ……そしてありがとう、さっきの頭痛! おかげで分かったわ、私が何をすべきか……)」
そうして、青夢は。
経緯は不明ながらも、先ほど頭痛と共に見えたビジョンから自分の責務を見出していた。
◆◇
「ふふふ、いいわ青夢!」
「ええ、それがあんたの覚悟なら見届けてやろうじゃないの!」
そうして、現在に戻る。
自分たちに対し突撃をかましてくる青夢の法騎に、真白と黒日はもはや歓喜すらしていた。
「hccps://BabylonTheGreat.srow/、セレクト 月の弓矢! 叛逆の魔術 ! hccps://BabylonTheGreat.srow/GrimoreMark、セレクト 月の女神光像 エグゼキュート!」
「な!? さ、三段法騎戦艦も!」
そのまま、真白と黒日は。
三段法騎戦艦に向けて、術句を唱える。
その艦体に備えた全砲門より放たれた無数の光矢と火線は、艦体にエネルギー体として纏わりつき。
さながら法騎ジャンヌダルクと同じく、己を象った防壁となる。
「ええ、行くわよ黒日!」
「承知よ真白!」
「ぐっ! この……何の!」
そうして会敵し合う三段法騎戦艦と法騎ジャンヌダルクは。
互いにエネルギー体の両腕にて掴みかかり、取っ組み合いとなる。
「青夢、どうしたのよ! 私たちを倒すんじゃないの?」
「それどころか、いつも以上に青いわよ!」
「ええ……誰のせいだと思ってんの!」
かつての親友たちの挑発に、青夢は敢えて乗る。
◆◇
「素晴らしい景色ですわ新たな女王陛下……そして魔女木青夢! さあ……早くその時をお迎えしましょう!」
その頃。
今や三段法騎戦艦内に遷都された魔都バビロン空宙庭園より。
空を見上げ、鈍く光る点として見える法騎ジャンヌダルクの姿を認めたパールは歓喜する。
かくして新たな女王と救国の乙女は、相見えたのだった――




