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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜新たな女王編  作者: 朱坂卿
新・第五翔 魔都バビロン大戦
57/74

#56 かつての女王と新たな女王

「私が誰か、ですって? ああら、変なこと聞くのねえ。」


 ダークウェブ最深部にて。


 久しぶりの赤音らとの邂逅を果たすアラクネとタランチュラだが、赤音からの問いに苦笑する。


「……笑い事やない! あんたは誰やって聞いとるんや、あたしは真剣やで?」

「ああ、騎士団長! そこはあたしじゃなくてあたしら、だろ?」

「そうです、騎士団長!」


 しかし赤音たちは。

 神妙な面持ちで、そう切り返す。


「……ふう。まったく、私って信用ないのね。」

「信用かいな……ああ。アラクネ姐様やないあんたのことなんか、信用できへんな!」


 尚もはぐらかそうとするアラクネだが、赤音は食い下がる。


「……いいわ、教えてあげる!」

「! ア、アリアタン……」

「……素直でええなあ。」


 アラクネは観念したのか。

 赤音たちに、そう告げた。


「でもごめんなさい……もう少し待って。」

「……はあ!?」

「おいおい、往生際が悪いよ偽女王様あ?」

「そうよそうよ!」


 赤音たちは、猛抗議する。


「いいえ、本当に話すわだけど! ……本当に、待ってもらえないかしら?」

「あ?」

「ふーん……」

「き、騎士団長! 姐様!」


 アラクネはしかし、真剣に頼み込む様子である。


「……ええで。但し! あんまり長くは猶予与えられへん、あたしが痺れ切らしたらそれまでや!」

「ええ……ありがとう、赤音。」


 赤音は、どうにか妥協することとした。


 ◆◇


「だけど……魔都バビロン、だったかしら? 都、というには随分寂れているのね……」


 その頃ネメシス星内部仮想世界、新たな女王に先導されて魔都バビロンの低空を飛行する道すがら。


 青夢は周りを見渡し、そう呟く。

 その立派な楼閣立ち並ぶ様は、まさしく空から見た通り魔都と呼ぶにふさわしい威容であるが。


 がらんとしており、人の気配が禄に見当たらないのだ。


「あら、ご挨拶ね……まあ、今は夜ということもあるけど。ここは普段、()()()()()()()()によって賑わっているのよ!」

「!? な……か、仮想通貨の!?」

「何ですって?」

「う、裏取引?」


 が、そこで新たな女王が言った言葉が引っかかる。


「ふふ……それは用意した席についてから。さあ、どうぞこちらへ。」

「え、ええ……」


 新たな女王はしかし、未だ勿体をつけ。

 そのまま、都中心部にほど近い階段のような建造物を指し示したのだった。


 ◆◇


「是……魔男たちが現れてくれたとはね! これはやっぱり、あの凸凹飛行隊とつるんで世界を騙してたのかしら?」

「是! 小鬼!」


 そうして、ネメシス星周辺宙域では。

 突如現れた魔男の混成艦隊と、対凸凹飛行隊世界連合軍。


 この二つの勢力が会敵し合っていた。


「ふん、馬鹿をぬかすな! 我らにとりても、凸凹飛行隊など敵でしかない!」

「そうだ! だが、新たな女王陛下はあの魔都バビロンと共にお守りせねばなるまいからな!」

「什么? ふうん……つまらない回答ね!」


 だが中国代表の鬼苺の問いに対し、意外な魔男側の答えであった。


「(まったく……結果的にとはいえ、我らが何故あの凸凹飛行隊を守らにゃならんのだ!)」


 しかしそんな言葉とは裏腹に。


 魔男の艦隊を率いる騎士団長たちの一人たるウィヨルとフィダールは、内心ではそう考えていた。


「hccps://juno.wac/、セレクト ! 嫉妬監視(ジェラシーアイズ) エグゼキュート! さあ見えました敵艦が、尹乃様! 華妖、亜魔導!」

「hccps://hekate.wac/WildHunt.fs?assault=true――セレクト、王神の槍(グングニル) エグゼキュート!」

「hccps://perchta.wac/、セレクト 電霊統率(ファミリアハント) エグゼキュート!」

「hccps://jadwiga.wac/、セレクト 黒き十字架(ブラッククロス) エグゼキュート!」


 が、そう考える間にも。

 王魔女生のヘロディアス艦隊から、攻撃が放たれる。


「…… ギリシアンスフィンクス艦ちゃん! 獅脚主砲(レーザーパーム)咆哮主砲(ハウリングキャノン)旋回! 目標、魔男のあの艦隊!」

「hccps://graiae.wac/pemphredo/edrn/fs/stheno.fs?eyes_booting=true――セレクト ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"!」

「hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズアイ!」

「hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズファング!」

「……セレクト、デパーチャー オブ 誘導銀弾(シルバーブレット) エグゼキュート!!!」

「hccps://sphinx.wac/、セレクト 大いなる謎モーニングデイタイムクリーチャー エグゼキュート!」

「hccps://echidna.wac/! セレクト 、幻獣支配(モンスタードミナンス) エグゼキュート!」

「hccps://harpuia.wac/、セレクト 剥奪腐食バイティングコロジョン エグゼキュート!」


 負けじと、龍魔力のギリシアンスフィンクス艦と法機群からも攻撃が放たれる。


「舐めた真似を! hccps://baptism.tarantism/! セレクト、業火砲(カタストロフバレット)!」

「セレクト、巨人鎚砲(ギガントハンマー)!」

「セレクト、宿木弾ミストルティニックガン!」

「セレクト、泡弾(バブリングバレット)!」

「エグゼキュート!!!!」


 魔男の艦隊たる、やはりというべきか半人半艦の巨大兵器宙飛ぶ悪魔人艦(デビトルシップ)巨人艦(ギガントルシップ)木人艦(トレントルシップ)魚人艦(マーメイドルシップ)からも各主砲撃が放たれ。


 宇宙の真空に、まだらな爆発を描く。


「呪法院エレクトロニクス、突撃! 王魔女生や龍魔力に遅れを取ったままじゃいけないわ!」

「はい、レイテ様!!!」

小鬼(シャオグイ)!」

「是、女夭(ヌーヤオ)! 中国代表アポストロスも法機群突撃開始!」

「是!!」

「私たちも! 韓国代表アポストロス法機群突撃!」

「네!!!」

「欧代表も、私に遅れないで!」

「Oui!!!」

「行くよ、豪代表!」

「defo!!!」


 呪法院エレクトロニクスに、中・韓・欧・豪代表の法機群も。


 こぞって、魔男の混成艦隊へと突撃を仕掛ける。


 ◆◇


「くっ! 新たな女王陛下の命令とはいえ……何故俺様が留守番していなければならないのだ!」

「まあ仕方ないんじゃないかしら?」

「ああ、我々は……一度しくじった者たちだからな。」


 現実世界と魔都バビロンと、二つの世界の戦いを眺めながら。


 魔男の円卓では、留守を預かるよう言われていたベリットら残りの騎士団長に不満が溜まっていた。


「まあ、ご安心ください。もうすぐあなた方にも出番がございますから。」

「何? もうすぐ?」

「ふふふ……」


 しかしパールはそう、彼らに声をかけ。

 首を傾げる彼らに対し、不敵に微笑む。


 ◆◇


「ようこそ……我が自慢のバビロンの空宙庭園へ!」

「す、すごい……」

「こ、これは……仮想世界とはいえ、魔法塔華院コンツェルン傘下にもこんな建物はなくってよ!」


 そんな戦いが繰り広げられている現実の宙域とはうって変わり。


 新たな女王に青夢たちが連れて来られた場所は、先ほどの階段状建造物屋上に位置する大庭園であった。


「い、いえマリアナ様どうか気落ちなさらず!」

「あら、気落ち? わたくしが、こんなことで落ち込むとでも?」

「い、いいえそんな滅相もありません!」


 マリアナを励まそうとして、むしろ地雷を踏む法使夏であった。


 さておき。


「まあまあ、さあ……こちらに降りて来て。」

「……はい!!」

「……はい!」


 そうして新たな女王の促しに青夢・マリアナと、少し遅れて法使夏は返事をする。


 先ほども言った通り、もはや後戻りはできない。

 ならばと、彼女たちは改めて覚悟を決めて着陸させた法機から降りる。


「はい。青夢さん、あなたはマフィンがお好きだったわよね?」

「え!? な、何でそんなことを……」


 と、新たな女王が指し示した席には。

 茶と、マフィンが置かれていた。


「私たちは、あなたたちをずっと見ていましたわ! そう……ずっとね!」

「ず、ずっと……?」


 新たな女王の言葉に、青夢はますます混乱するが。

 何はともあれ、ひとまず三人は勧められた席に座る。

 と、その時だった。


「!? な!」

「これは……街が!?」

「ま、マリアナ様!」


 青夢やマリアナ、法使夏が驚いたことに。

 突如として、魔都バビロンに立ち並ぶ楼閣に次々と明かりが灯り人々が多数それぞれから出て来る。


 更に。


「な……空に、何か浮かんで来た!」

「し、四角い画面が……? な、何であってこれは!?」

「高級料理のデリバリーに、高い宝石に美術品に骨董品に……た、高いものばかりですマリアナ様!」

「安心なさって。ただ仮想通貨の裏取引として奢侈品の売買が始まっただけよ。」


 無数の四角い、数々の奢侈品の画像が空に浮かび。

 青夢たちが戸惑う中、新たな女王は冷静に説明する。


 明かりの点いた楼閣から出て来た人々は、その裏取引のため地上からこの魔都バビロンにログインしてきたらしい。


「! あの鎖は、救世主捕縛の鎖(ブロックチェーン)? それに、法機マリアたちまで飛んで……まさか!?」

「安心なさって。この裏取引を救世主捕縛の鎖(ブロックチェーン)に記帳するためのマイニングレースが始まっただけよ。……QUBIT GOLDを得ることができる、ね。」

「!? な!」


 尚も突如空に出現した救世主捕縛の鎖(ブロックチェーン)とそこへ向かう法機群に戸惑う青夢たちに、新たな女王は冷静に説明する。


 しかし、QUBIT GOLD。

 それはエルドラドでしかマイニングできないはずでは?


 やはり、ここは特別ということか。


「……さあて、まあ少し騒がしい中だけどお教えしましょう。何からお話すればいいかしら?」

「ええ、まず。……仮想通貨QUBIT SILVERについて話を聞きたいです。」


 青夢は早速、そう切り出す。

 そう、特にあのユダマイニングについて。


 何故、すぐにバレるであろうユダマイニングを皆やってしまうのか。


 そう更に聞こうとした、その時であった。


「そうね……この姿の方が分かりやすいかしら?」

「え? ……そ、その姿は!?」

「あら……あなた。」

「ま、マリアナ様!」


 そうして席についた新たな女王の姿は、不意に変わる。


 それは――


 ◆◇


「!? そ、ソー軍曹これを見てください!」

「What? ……っ!? こ、これは!?」


 その時。

 魔男との戦線で、後方支援に回っていたデイヴたち米代表だが。


 唐突に始まった世界同時生中継に、驚く。


「Hey、girls and guys! DJセレネーの、ウィッチオンエアクラフト〜魔女は空飛ぶ放送電波に乗る〜張り切って行くyo!」


 DJセレネーの配信である。

 いや、彼女は。


「あ、新たな女王が……DJセレネー!?」


 新たな女王の、化身であった――

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