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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜新たな女王編  作者: 朱坂卿
新・第四翔 空宙都市エルドラド ゴールドラッシュ
42/74

#41 その名はティターニア/イツパパロトル/マヤウェル

「W、Where!? こ、ここはどこ!?」

「ここって……?」

「So、確かソー軍曹の奥さんが言ってた……」


 セーレ、ケイ、レフィは混乱している。


 何やら、突如として飛ばされて来た闇の空間。


 光の線で繋がれた網のようなものが下に見える。 

 しかし三人には、見覚えはないが聞き覚えはあった。


 それは――


「ようこそ……ダークウェブへ。」

「!? ……あ、あなたは?」


 ふと声をかけられ、彼女たちは面食らう。

 そう、やはりそこにいたのは。


「……私はアラクネ、あなたたちの望みをもう一度。」

「……え???」


 アラクネは優しく微笑む。


「Well……思い出したわ! ソー軍曹の奥さん――マギーさんが言っていたダークウェブのQueen! アラクネさん!」

「YES……あなたが!?」

「I understand……あなたが……」


 セーレたちは、予想通りとはいえ驚く。


「サワグナ……ムシケラノゴトキ、コムスメドモガ!」

「What!? ひ、ひいい!」


 しかし、そこへ。

 毎度お馴染み、アラクネが騎乗するダークウェブの王タランチュラが怨嗟を漏らす。


「こらこら、私の王! いつもの悪い癖ですよ、せっかく来てくれたのに。」

「オオ……アリアタン♡」


 これまた毎度お馴染み、アラクネにより窘められるタランチュラである。


「あ、あの……」

「! あら、そうだったわね……さあ、改めて。あなたたちの願いを、もう一度。」

「……え???」


 アラクネに改めてそう言われたセーレたちは、首を傾げる。


 願い?


「あら、もう忘れたのかしら? あなたたちがここに来る前に、心に抱いた願いを。」

「あ……!!!」


 が、彼女たちは思い出す。


 そうエルドラディアンたちと自分たちの戦いに乱入して来たあの者たち、凸凹飛行隊。


 腹立たしかったが、同時に自分たちは無力なのではないかと打ちのめされもした。


 あの法機――いや、法騎ジャンヌダルクが見せた自身を象った巨大なエネルギー体纏う姿。


 あんなものには、自分たちの法機マリアは到底敵わないのではないかと。


「Well……そうよそうよ! 私たちは力が欲しいの! せっかくソー軍曹自ら見出してくれた私たち、だのにこの体たらくじゃ!」

「YES! 私たちには、力が必要よ!」

S()o()! ソー軍曹の顔に泥は塗れないわ、今度こそ!」

「……ふふふ!」

「!? What!?」


 しかし、そんな風に彼女たちが改めて自身の想いを語る中。


 アラクネは、何故か笑い出す。


Maybe(もしかして)……ついに、私のギャグが受けた!?」

Impossible(ありえないわ)、レフィ!!」

「な!? ひ、ひどーい!」


 レフィの勘違いに、セーレとケイは揃ってツッコミを入れる。


「ふふふ、ごめんなさい。あなたたち、そのソー軍曹が好きなんじゃない?」

「Oops!? な、ななな何言ってんの???」


 が、その次にはセーレとケイにレフィも加わり三者揃いの反応をする。


 図星だったのだ。


「照れることないわ……好きな人のために頑張りたい、それは素敵なことじゃない?」

「ウム……ワレニモ、ワカラヌデモナイ……」

「あら? 私の王、それはそれは。」

「へー……」

「!? ナ……フ、フン! ヤハリ、キサマラゴトキムシケラナドワカラヌ……!」

「あらあら。」


 それをアラクネと、そして意外にもタランチュラが肯定し。


 セーレたちも、これには少し驚く。


「ふふふ、さあて……あなたたちの願いを改めて唱えて!hccps://baptism.tarantism/!」 

「……Search!!! Getting the stronger power!!!」


 アラクネの促しにより、セーレ・ケイ・レフィは術句を唱える。


 Getting the stronger power――より強い力を得る、という検索ワード(切なる願い)を。


 そうして。


 hccps://titania.wac/

 hccps://itzpapalotl.wac/

 hccps://mayahuel.wac/


「これは……!!!」


 URLが浮かび上がる。


「これがあなたたちの力よ……さあ、お行きなさい!」

「は、はい!!!」


 戸惑う三人だが、すぐに。


「セレクト、hccps://titania.wac/!」

「hccps://itzpapalotl.wac/!」

「hccps://mayahuel.wac/!」

「ダウンロード!!!」

「hccps://maria.wac/、セレクト 仔羊の誕生(セイヴァーズバース)!!! hccps://maria.wac/GrimoreMark、セレクト 受胎告知(アヌンシエーション) エグゼキュート!!!」


 そのまま彼女たちは、術句を唱え――


 ◆◇


「く、この!」

「怯むな……前進じゃ!」

「もう……本当に下がってください! さもないと!」

「ぐああ!」


 その頃、仮想大陸上空では。

 一時怯みつつも、やはり勇猛果敢に向かい来るエルドラディアンの戦士団に。


 青夢は、法騎が纏うエネルギー体の腕を振るわせ続ける。


「hccps://mayahuel.wac/! Select、リュウゼツランの酩酊アガヴェコンフュージョン! Execute!」

「!? な……何!?」


 と、その時である。

 突如として高空より、エルドラディアンたちに謎の風が向けられ。


 それにより彼らは、混乱状態になる。


「く……し、周囲が見えぬ!」

「ぐ!? ぶ、ぶつかった!」

「うわああ!」

「な……何が起きていて!?」

「ま、マリアナ様!」


 エルドラディアンたちは前後不覚に動き、互いに騎獣たる電使言獣(スクリプティッド)たちをぶつけ合ってしまい墜落する者たちも続出する。


 混乱しているのはエルドラディアンたちばかりではなく、凸凹飛行隊もであった。


「Good! いいわレフィ、あんたにしちゃ上々よ! 私も負けていられないわ……hccps://titania.wac/! Select、初見恋慕ファーストファーリング! Execute!」

「!? な、何だこれは……せ、戦意が抜けていく……」


 エルドラディアンたちも凸凹飛行隊も置き去りに、更にエルドラディアンたちに放たれた陽光のごとき光線により彼らは骨抜きとなり。


 何とも無防備にも、動きを止めてしまった。


「OK、セーレにケイ! さあ私も……hccps://itzpapalotl.wac/、Select ジャガーの鉤爪(ジャガーズデスサイズ) Execute!」

「ぐああ!!」


 次に、エルドラディアンたちは何やら斬撃に襲われ。


 瞬く間に、細切れにされていく。


「な……あなたたち!」


 青夢は、高空へと振り向く。


 そこにはやはりというべきか、米代表アポストロス法機マリア三機が飛んでいるが。


 これまで放たれた技の数々から、青夢たちには既にそれが新たな法機が取り込まれたものであることが分かっていた。


「や、止めて! これじゃまるで虐殺よ!」

「What、Genocide(虐殺)? ふん……もう沢山よ凸凹飛行隊のcaptain! そんなただのNPC集団に、これ以上かける時間はないの!」

「な……米代表の皆さん!」


 青夢は彼女たち米代表アポストロスに呼びかけるが、セーレからはそんな答えが返る。


「ええ、まあわたくしたちの飛行隊長の無礼さには同感であってよ米代表アポストロスの皆様! 同じ飛行隊として、謝罪させていただきます。」

「申し訳ありません、うちのバカ飛行隊長が!」

「な……ち、ちょっと魔法塔華院マリアナ! 雷魔法使夏! あんたたちねえ!」


 しかしマリアナや法使夏のその言葉に、青夢は憤慨する。


「そうだぞ魔法塔華院、何だその言い方は!」

「そうです!!」

「……ですが。あなた方の行為は、ちょっと品がありませんでしてよ!」

「! 魔法塔華院マリアナ……」


 だがマリアナも次には、そう言う。


「No way! 凸凹飛行隊の皆さん、残念ながら……もう、あなたたちのJokeに付き合う時間はありませんわ……hccps://titania.wac/、Select 取り替え子論争(チェンジリング)! Execute!」

「くっ! これは……」


 とはいえセーレたちにも、もはや聞く余裕はなく。


 そのまま法機ティターニアの能力を発動するや、仮想大陸上空の天候が大きく変わる。


「ケイ、レフィ! さあ今よ……あのNPCたちに、身の程をわからせてあげるわよ!」

「hccps://itzpapalotl.wac/、Select 蝶による最期バタフライパニッシング Execute!」

「hccps://mayahuel.wac/、Select 散骨萌芽ボーンジャーミネーション Execute!」

「ぐああ!!」

「きゃあ! ま、マリアナ様!」

「ぐっ」

「皆、こっちよ!」

「ま、魔女木!」

「青夢!!」


 そのまま、法機ティターニアの天候不順化に加え。


 法機イツパパロトルによる無数の蝶型エネルギー生成とその爆破、法機マヤウェルによる蔦状エネルギー生成とそこからの高エネルギー全方位射撃により。


 エルドラディアンたちは打ちのめされていき、青夢は自身の法騎が纏うエネルギー体を傘に仲間の凸凹飛行隊法機群を守る。


「ぐっ……この! ぐああ!」

「な……米代表アポストロスの皆さん!」


 青夢も仲間の凸凹飛行隊を守ることに精一杯で米代表アポストロスの法機群が放つ攻撃にやられていくエルドラディアンたちの有様を、ただただ見ていることしかできず歯軋りする。


「ぐっ……撤退! 皆、引け!」

「やったわ! ケイ、レフィ、私たち勝ったわ!」

「YES! これも新たな法機たちのおかげね!」

「So、早くソー軍曹に報告しなきゃ!」


 なす術なく撤退していくエルドラディアンの戦士団を見、米代表アポストロスの面々は勝ち誇る。


「く……結局、止められなかった……」


 青夢は自身の体たらくに、ただただ無力感を覚える。


 ◆◇


「ぐっ……雷雨神砲(トラロックズレイン)への負荷、更に増大!」

「このままでは……ん!?」

「ははは、さあこのまま攻めて……ぐあっ!?」


 その頃、現実世界の蝙蝠男の騎士団と交戦中である空宙都市エルドラドでは。


 それまで一方的に、エルドラド側が魔男に押される展開であったが一転。


 突如として雷雨神砲(トラロックズレイン)の出力が上がり、蝙蝠男の吸血鬼艦艦隊は動きを止められる。


「What!? 急に出力が上がった……いや、威力が戻ったのか? ということは……セーレたちがやってくれたのか!」


 この様子を既にエルドラドを発っていた法機ギガンティックマンドレイクから見ていたデイヴは、歓喜する。


「今だ空宙都市エルドラド! これまで苦しめてくれた礼をしてやれ……誘導柘榴弾ジュノーズアップルバレット雷雨神砲(トラロックズレイン)一斉発射!」

「Yes!!」


 法機ギガンティックマンドレイクよりデイヴは、空宙都市に司令を降す。


 たちまち空宙都市より放たれる雷雨神砲(トラロックズレイン)の威力は強まり、更に多数の誘導柘榴弾ジュノーズアップルバレットも放たれる。


「て、敵空宙都市より攻撃!」

「ふん、ちょっと有利になったからといって調子に乗ってくれちゃったね……だけれど! hccps://baptism.tarantism/、セレクト 波動牙(クラッキンファング)! エグゼキュート!」


 しかしレイブンも、やられっぱなしではすまさぬとばかり。


 先の戦いで放っていたハッキング技を、自艦隊に向け飛来する誘導柘榴弾ジュノーズアップルバレットに向け放つ。


 さあ、これで――


「なっ!? き、効かない……? ぐああ!」


 が、予想に反し。


 飛来した誘導柘榴弾ジュノーズアップルバレットにはまるで効果はなく、むしろ適切なタイミングで飛散し。


 それが吸血鬼艦艦隊に、ダメージを与える。


「くっ……まさか、バックドアがもう」

「Well、雷雨神砲(トラロックズレイン)出力を更に高める! 一気に、敵に打撃を与えるんだ!」

「YES!!」

「ぐ……ぐああ!」


 更に。

とどめとばかりに、出力が高まった雷雨神砲(トラロックズレイン)が吸血鬼艦艦隊を追い詰める。


「れ、レイブン騎士団長!」

「くう……これじゃあ元も子もないね! 早く撤退するよ!」

「YES!!」


 これでは敵わぬと。

 レイブンは、自艦隊を撤退させていく。


◆◇


「……申し上げます。」

「あらターニャ。」


 その頃、仮想大陸の神殿内に潜入中の欧代表アポストロス面々だが。


 そこへ、初花が外の見張りに出していたターニャがやって来ていた。


「外の上空にてエルドラディアンたちと米代表アポストロス、及び凸凹飛行隊との戦いは後者の勝利により決したそうです。」

「oui、初花様! 私からもお聞きください。現実の空宙都市と魔男との戦い、雌雄は決したようです。」

「あらヘーゼル、そう……なら。」


 同じく見張りにつけていたヘーゼルからも、またターニャからも報告を受け。


 初花は今一度、神殿内のエルドラディアン王を見る。


 エルドラディアン王は尚も、あのシパクトリなる鰐の像に向けて祈りを捧げていた。


「Oui……私たちも引きましょう。これ以上探りを入れていると、気取られるわ。」

「Oui!」


 初花は欧代表アポストロス面々にそう告げ、欧代表の諜報もひとまずはお開きとなる。


 かくして空宙都市の三度の戦いは、仮想・現実共に決したのだった。


 ◆◇


「これで、空宙都市に撒くべき種は全て撒き終えましたわ……さあ! 後は楽しみにしていますわよ、発芽の時を! ふふふ……」


 一方、同じくこの様子を別宙域より見つめる者が。

 それは法機マケダに乗る、パール・アブラーム。


 彼女は自軍が押されているというのに、不敵な笑みを浮かべていた――

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