表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜新たな女王編  作者: 朱坂卿
新・第三翔 トバラ族自治区独立戦争 
30/74

#29 空中要塞再攻略作戦

「来たわ……凸凹飛行隊、法機全機発進準備!」

「言われなくってもよ、魔女木さん!」

「そうよ、マリアナ様に命令しないで!」

「ああ、魔女木!」

「了解、青夢!!」


 再び香港上空に現れた空中要塞の姿を見咎めるや。


 青夢は法母プリンセス オブ 魔法塔華院飛行甲板上の自機ジャンヌダルク及び、凸凹飛行隊の他メンバー法機群に発進を命じる。


「来たよ、小鬼(シャオグイ)!」

「是、女夭(ヌーヤオ)! さあ行くよ、金東(ジンドン)呪華(ゾーホア)も!」

「是、鬼苺!!」

(さあ)……行くよ、皆!」

(ええ)陽玄아(ヤンヒョンちゃん)!!!」


 これを見ていた中国・韓国の代表アポストロス法機群も、動き出す。


「是……我ら中国艦隊も行くぞ!」

「是!!」

「韓国艦隊、突撃開始!」

「네!!」

「自衛隊艦隊も突撃開始だ!」

「はい!!」


 日中韓の軍並びに自衛隊艦隊も、動き出す。


「よし……僕たちも!」

「よせ、カイン。まずはお手並み拝見だ、あんな大見得切ってみせた凸凹飛行隊(バンピーエアフォース)隊長様のな!」

「む……盟次君! またそんな意地悪を言って!」


 プリンセス オブ 魔法塔華院の艦橋より、この様子を見ている矢魔道は今すぐ自身も発進しようとするが。


 盟次には止められ、様子見を余儀なくされる。


「レッドラム騎士団長、敵法機群突撃して来ます! 更に敵艦隊も、集結してきます!」

「よし……ならば! お迎えしてやれ、重要な客人を! 雷雲(フォーメーショ)形態(ンクラウド)に移行!」

「了解! ……セレクト、ビーイング トランスフォームド イントゥ 雷雲(フォーメーショ)形態(ンクラウド) エグゼキュート! セレクト! ファイヤリング 雷の雨(サンダリングストーム)! エグゼキュート!」

「!? 敵空中要塞より、雷電攻撃あり!」

「ぐっ……凸凹飛行隊法機、全機散開!」


 空中要塞も、動き出すや。

 雷雲を周囲に纏い帯電し始める。


 それを見た凸凹飛行隊を始めとする日中韓法機群は散開し、様子を見る。


「く、やはりあちらも警戒していてよね!」

「は、はいマリアナ様!」

「ええ……でも何か変だわ。あの空中要塞……手を抜いている?」


 口々に状況分析を伝える凸凹飛行隊の面々だが。


 青夢は空中要塞の帯電に、以前の威力よりも低まった様を感じ取り訝る。


 ――セレクト! ファイヤリング 雷の暴雨サンダリングサイクロン! エグゼキュート!


 そう、青夢は詳しくは把握し切れていないものの。


 以前ファングらが発動させた術句は雷の暴雨サンダリングサイクロンであるが、今回は雷の雨(サンダリングストーム)


 威力は、確かに落ちていた。


「是……今よ凸凹飛行隊長! 奴らにあの技を!」

「……了解、行くわよ皆! 矢魔道さんもお願いします!」

「了解!!!!!」

「よし……幻獣頭法機(マジックノーズアーツ)レッドサーペント、行くよ!」


 しかし、戦いは待ったなしとばかりに。

 鬼苺からの言葉に、青夢は凸凹飛行隊と矢魔道に命じる。


 そして。


「hccps://camilla.wac/……セレクト サッキング ブラッド!」

「……hccps://jehannedarc.wac/……セレクト、ビクトリー イン オルレアン!」

「……hccps://crowley.wac/…… セレクト アトランダムデッキ! 女帝(ザ エンプレス)――女帝の暴挙エンプレシーズプレッシャー!」

「……hccps://rusalka.wac/…… セレクト、ゴーイング ハイドロウェイ!」

「hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark/、セレクト 火刑による怨念業火パニッシングカタストロフ! エグゼキュート!」

「hccps://diana.wac/、セレクト 月の弓矢(マンスボウ)!」

「hccps://aradia.wac/、セレクト 叛逆の魔術(リベリオンズアーツ)!」

「エグゼキュート!!」


 そうしてマリアナ・青夢・剣人・法使夏が編んだ火球が海中より踊り出て、更に真白・黒日の攻撃が空中要塞雷撃とぶつかり合い隙間を作り。


 そのおかげで空中要塞下部に雷撃の隙間を縫い火球が、かつてと同じく着弾する。


「く……空中要塞十時の方向より来たりし敵弾により被弾!」

「お、恐らく例の擬似火炎誘爆砲デトネーションボルカニクスかと思われ、高エネルギー被弾箇所より続々噴出! 誘爆していきます!」

「ふうむ……ふふふ!」


 部下より空中要塞司令室に齎される報告に、アベルは何故かほくそ笑む。


「矢魔道さん、お願いします!」

「了解したよ、魔女木さん! …… hccps://redserpent.mna/edrn/fs/samael.fs?demon_freezing=true――

 セレクト、魔王の氷獄(デモンフリーズ) エグゼキュート!」


 そんな敵の内部事情も知らぬまま、青夢は矢魔道に指示を送り。


 それにより矢魔道は幻獣頭法機より極大の冷気を放ち、今しがた被弾し大きな穴を開けつつあった空中要塞の箇所周囲を凍結させる。


 これにより、あの救世主捕縛の鎖(ブロックチェーン)の仕組みによる回復を更に遅らせ、穴を保つためである。


 そうして。


「是……中国代表アポストロス法機群、全機全速前進!」

「是!!!」

「네! 韓国代表アポストロス法機群も、全速前進!」

「네!!!」


 中韓代表の両アポストロスは、その穴めがけ攻撃を仕掛ける――


 と、これこそが日中韓共同戦線の今回の作戦であっ

 た。


「よし……行っけー、中韓代表アポストロス!!」

「行け!」

「!? 待って、あれは……?」


 が、その時である。


 法機ジャンヌダルクより穴内部を遠巻きながら見ていた青夢は、異変を感じた。


 というのも。

 穴内部の構成幻獣機スパルトイたちが、多数何やら滑らかにかつ素早く動いているのだ。


 それは一見すれば、まだ先ほどの誘爆の余波を受けてのものにも見えるが。


 よくよく見れば、そうではなく見える。

 言うなれば、それは。


「変形している……? 何に……ハッ!? ま、まさか!」


 青夢はその刹那、察する。

 そう、これは――


「……鬼苺さんたちに陽玄さんたち! 皆逃げて、これは罠よ!」

「什么!?」

「뭣!?」


 青夢は、両アポストロスに呼びかけるが。


「口を開けたからと言って、安易に入って来てはいけませんよ……喰われるかもしれないというのに!」

「な……!?」

「まさに飛んで火に入る夏の虫だな……火炎誘爆砲デトネーションボルカニクス発射用意!」

「了解! ……hccps://baptism.tarantism/、サーチ クリティカル アサルト オブ 幻獣機! セレクト ファイアリング 火炎誘爆砲デトネーションボルカニクス! エグゼキュート!!」

「!? きゃあ!」

我日你(くっ)、総員散開!」


 直後、穴の奥にエネルギーが滾り。


 それを察知した中韓代表アポストロスは、自機たちを瞬時に撤退させる。


 が彼女たちが避けた、穴から放たれしその高エネルギー弾は。


「か、回頭! 全艦隊、全速回頭!」

「我日你!」

「싫어!」

「ぐっ……な、何だこれは!?」


 日中韓共同戦線の艦隊へと、襲いかかり。


 それは空中にて炸裂し広範囲に火の雨となって降り注ぎ、艦隊のいくらかを誘爆により壊滅させていく。


「ま、マリアナ様!」

「ええ、これは……」

「くっ、火炎誘爆砲デトネーションボルカニクス!? 本家本元を出してきたという訳ね……」

「我日你……よくも、私たちの国の艦隊を!」

젠장(くっ)……」


 青夢は歯軋りする。

 もっと早く、自分が気づいていれば。


 が、そんな暇はないとばかりに。


幻獣機飛甲城クリプティッドワゴンフォートレスシャンバラ、全速前進! 南シナ海上空へと進出せよ!」

「はっ、レッドラム騎士団長! 飛甲城(フォートレス)、全速前進!」

「!? 空中要塞が動き出した!?」


 アベルの指示により、空中要塞が全速力で移動を始め。


 やがて空中要塞本体にも、これまでにない動きが生じる。


 まず円盤状のその艦体外周部が、ベルトコンベアのように回転し。


 雷雲を、再び纏い始めたのである。


 かと思えば、その外周部側面は次々と大口――先ほどの穴と同じく、火炎誘爆砲デトネーションボルカニクスの砲口である――を開けている。


「まずい! ああやって周囲に、さっきみたいに高エネルギーを放つ気よ! だとしたら狙いは……日中韓に横たわる東シナ海だわ!」

「な、何ですって魔女木さん!」

「ま、マリアナ様……」

「奴ら……日中韓を手早く火の海にする気か!」

「あ、青夢!!」

「什么!?」

「뭣!?」


 青夢の推測に、凸凹飛行隊及び中韓代表アポストロスは驚く。


 あれが日中韓の海に?


 そうなれば今の剣人の弁にある通り、三国に甚大な被害を及ぼすことは言うまでもない。


「ははは……さあ、魔女狩りの、ひいては漢民族狩りの開始だなカンツォ殿?」

「ああ……我らトバラ族の屈辱、また思い知らせてやらねば!」


 青夢たちの法機群や日中韓共同戦線艦隊が動けぬ様を見て。


 アベルは、満足げに微笑む。


 ◆◇


「これは……」


 その頃。


 南シナ海上の自衛隊艦隊所属ウィガール艦よりこの様子を見ていた巫術山だが。


 空中要塞の予想外の攻撃に、他国の艦隊同様てんやわんやである。


「教官! やはり私も法機滝夜叉で行きます」

「!? 妖術魔二等空曹、またか……」


 しかし、そこで。

 力華が巫術山に、そう進言する。


「私たちも行けます、教官!」

「行かせてくださいよお!」

「!? またお前たちもか……時祈祷(ときとう)伊武数奇(いぶすき)両二等空曹……」


 いや、力華だけではない。


 日本代表アポストロスメンバーでもあった自衛官たる、時祈祷命(ときとうみこと)伊武数奇(いぶすき)術那(じゅな)の両名もである。


「……今お前たちが行っても、味方を混乱させるだけだ! 今は待て!」

「!? は、はい……」


 しかし巫術山も、止める。

 それは彼女の弁に今あった通り、混乱が目に見えているからである。


 ◆◇


「さあて、どうすればいいかしら……あの砲口から侵入できれば……」


 その頃。

 最前線で青夢は、自機ジャンヌダルクより空中要塞を見て考える。


 やはり侵入できそうなものは、あの砲口として空いた穴しかない。


 盟次の法機パンドラは、ある程度侵入するものに近づかねば使用できない。


 しかし、今近づいてもあの砲口から侵入しようにも。


「レッドラム騎士団長! 魔女の奴ら、攻めあぐねいているようです!」

「ふふ、もはや打つ手なしか……良かろう! ならば東シナ海の前座として予行演習だ…… 火炎誘爆砲デトネーションボルカニクス発射用意!」

「了解!」


 アベルは今にも、空中要塞外周部側面に展開された全砲口より火炎誘爆砲デトネーションボルカニクスを放たんとしている。


 このままでは――


「……いいえ、待って! あのエネルギーには……」


 しかし青夢は、ふと打開策を思いつく。

 それは。


「矢魔道さん、あの冷気を!」

「……え?」

「幻獣頭法機レッドサーペントの冷気は、あの高エネルギー弾を撃ち出す技に対して効果的です! お願いします!」

「り、了解したよ、魔女木さん!」


 矢魔道に、指示を出す。

 そして。


「……hccps://baptism.tarantism/、サーチ クリティカル アサルト オブ 幻獣機! セレクト ファイアリング 火炎誘爆砲デトネーションボルカニクス! エグゼキュート!!」

「…… hccps://redserpent.mna/edrn/fs/samael.fs?demon_freezing=true――

 セレクト、魔王の氷獄(デモンフリーズ) エグゼキュート!」


 空中要塞外周部側面の全ての穴にエネルギーが灯る中、その穴の一つに矢魔道の幻獣頭法機による冷気が襲いかかり。


「!? て、敵法機より攻撃が! ほ、砲口の一つが発進準備のまま凍結しました!」

「!? 何!? く、ただちに」

「隙ありよ! さあ皆、矢魔道さんが凍らせてくれた砲口めがけて凸凹飛行隊全機攻撃開始!」

「り、了解!」


 その隙を、凸凹飛行隊は見逃さず。


「hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark/、セレクト 火刑による怨念業火パニッシングカタストロフ! エグゼキュート!」

「ぐ!? 凍結したじ、十時の砲口に敵弾あり! 爆発多数です!」

「な……おのれえ、兄に凸凹飛行隊めえ!」


 再び放たれた擬似火炎誘爆砲デトネーションボルカニクスが砲口に炸裂し、起きた大爆発による誘爆で空中要塞の一角は大炎上する。


「では……魔女木さん、行くのであってね!」

「マリアナ様!」

「ええ……凸凹飛行隊、全機全速前進! 目標、敵空中要塞被弾箇所!」

「……了解だ、魔女木!」

「了解、青夢飛行隊長!!」


 マリアナら凸凹飛行隊メンバーも、了承した上で。


 青夢は自分以下全飛行隊メンバーに、敵被弾箇所への突撃を指示したのだった――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ