#25 その名は善徳女王/召西奴/柳花
「ま、マリアナ様!」
「これは……仮想世界であって!?」
「く……」
空中要塞内に乗り込んだ凸凹飛行隊法機群だが、そこで邂逅した牛男の騎士団長アベルの術により何やら奇妙な仮想世界へと引き摺り込まれていた。
「ああ、貴様らが空中要塞と呼んでいたこの幻獣機飛甲城シャンバラ! その名にし負うがごとく貴様らには味わせてやると言うのだ……シャンバラを!」
凸凹飛行隊が混乱する中、平然とアベルは幻獣機フルフルにて空中に佇んでいる。
「皆……怯むことはないわ! 凸凹飛行隊、全機前進! 敵を!」
「ま、待ちなさい魔女木さん!」
「魔女木!!」
「青夢!!」
青夢は怯まず。
アベル騎乗の幻獣機フルフルに、法機ジャンヌダルクを突撃させ。
凸凹飛行隊の他の面々も、それに続く。
しかし。
「な……これは!? あの騎士まで、たどり着けない!?」
青夢たちは驚く。
法機群が、いつまでもアベルの元へ到達できないのである。
「ああ、言っただろう! ここは楽園だ……争いなどあり得ない!」
アベルはそんな凸凹飛行隊を、嘲笑う。
◆◇
「我日你! 効いていない……」
「싫어……空中要塞が回復を!」
「く……これは、魔女木が言っていた通り仮想通貨の救世主捕縛の鎖が!」
一方、空中要塞外部では。
凸凹飛行隊がこじ開けた誘爆の穴に向けて日中韓共同戦線は弾幕を展開しその穴を広げようとしていたが。
先ほどのひどい誘爆に多少は遅れながらも、空中要塞が回復していく様を見て日中韓共同戦線は歯軋りしていた。
それは今しがた巫術山が気づいた通り、青夢から事前に聞いていた救世主捕縛の鎖の技術によるものに他ならなかった。
「ふん、小癪な日中韓共同戦線だ! 人虎艦艦隊再集結せよ!」
「ええ、人狼艦艦隊も再集結です! 全砲門を開き、日中韓共同戦線に艦砲斉射!」
「む!?」
その隙にいつの間にか虎男・狼男両騎士団の艦隊も体勢を立て直しており。
それらは空中要塞周囲に戦列を成し、艦砲斉射を行う。
「ぐああ!」
「く……後退! 全艦隊、後退!」
日中韓共同戦線はそれに対し、またも後退を余儀なくされる。
「开始了! 行かなければね!」
「是!!!」
が、そんな中でも。
鬼苺率いる法機西王母を始めとする中国代表アポストロス法機群が飛び出し、空中要塞へと突撃していく。
「クロー騎士団長! 一時の方向より敵法機群接近!」
「ふん、命知らずですね……艦砲射撃をより強めなさい!」
「はっ!」
それに気づき人狼艦艦隊は、砲撃を強める。
「任せて、ここは私が! hccps://yangguifei.wac/、セレクト 安史の乱 エグゼキュート!」
「是、私も! hccps://jiangqing.wac/、セレクト 文化大革命 エグゼキュート!」
そこで金東・呪華が各自機を内包した法機マリアを前に出し、攻撃を放つ。
すると。
「ぐっ!? き、騎士団長! 敵法機がバリアか何かを展開したのか砲撃の一部を跳ね返しつつ向かって来ます!」
「な、何ですと!?」
クローは驚く。
法機楊貴妃・江青の、敵攻撃をそのまま跳ね返す防御技である。
「ファング騎士団長! 人狼艦艦隊の体勢が乱れています!」
「ふんクローめ、口ほどにもない……人虎艦艦隊! 今のうちに」
「多好、金東・呪華! 私も!hccps://wuzetian.wac/、セレクト 則天文字 エグゼキュート!」
「む!? ぐ、何が起こった!?」
ファングは今こそと躍起になるが。
そこへ女夭も自機武則天より、ハッキング攻撃を放つ。
それを受けた人虎艦艦隊の各艦体も体勢を崩す。
「多好、皆! 私も負けていられないね……hccps://xiwangmu.wac/、セレクト 金方白虎咆哮、エグゼキュート!」
「ぐっ!?」
「くう! て、敵法機群の攻撃全艦隊に命中していきます! ち、中央を突破されます!」
「くそ……」
「調子に、乗らないで下さい魔女共!」
中国代表アポストロスはそうして、空中要塞周囲の護衛艦隊を突破し。
空中要塞に迫る。
「ふ、ファング騎士団長!」
「ふっ、だが……クロー! 調子に乗ってこの飛甲城を離れ自ら最前線に出たのが間違いだったな! 飛甲城、雷雲形態に移行!」
「了解!!」
「我日你!? 中国代表アポストロス法機群、高度上げ!」
「收到!!!」
が、そこで。
ファングの命を受けた空中要塞に、動きが生じて雷雲を纏い始め。
それに気づいた鬼苺の指示により中国代表アポストロス法機群は、より高空へと退避し。
「……hccps://jiangqing.wac/、セレクト 王老五 エグゼキュート! 开始了、皆!」
「是!!!」
まず呪華が、幻惑攻撃により空中要塞上空に制空権を確保し。
「hccps://xiwangmu.wac/、セレクト! 死鎌爪 エグゼキュート!」
「hccps://wuzetian.wac/、セレクト 武周建国 エグゼキュート!」
「hccps://yangguifei.wac/、セレクト 甘美な茘枝 エグゼキュート!」
次に鬼苺の法機西王母による斬撃。
女夭の法機武則天による空中要塞構成艦爆破。
金東の法機楊貴妃が放つ蔦型のエネルギー体よりライチ型のエネルギー弾多数落下による空中要塞爆撃と、続々と中国代表アポストロスによる攻撃が高空より炸裂する。
「小癪な中国代表アポストロス――漢民族め! どこまでも私たちを……だが。」
カンツォは歯軋りしつつも。
息を整える。
「貴様は私たちを最後は救い出してくれるだろう……なあ?」
カンツォはこの期に及んで、何故かふと笑いを漏らす。
◆◇
「ううむ、あれは中国代表アポストロスの法機群か! 中々だ。」
「教官! 私の法機滝夜叉なら」
「駄目だ! あれは四機も強力な法機があればこそ……お前の一機だけでは!」
「そんな……」
自衛隊も凸凹飛行隊や中国代表アポストロスの戦いを見て、戦意を高揚させるが。
巫術山は戦力の不足を理由に、それを制する。
◆◇
「陽玄아! 私たちも」
「않이! 駄目よ。さっき止められたでしょ?」
「……」
一方、韓国代表アポストロスも。
先ほど、自衛隊と同じく戦力の不足を理由に空中要塞への突撃を止められており。
その事態に昭賢・艮麻・相錬は歯軋りしていた。
「私の法機九尾狐の力だけでもあるから、何とかなるのに……」
「싫어!!! 駄目よ、陽玄だけ行かせるなんて!!!」
「皆……」
陽玄の言葉に三人は、激しく異議を唱える。
親友だけを、そんな目に合わせるなどと。
「네……そうよ、力よ! 力が私たちにもあれば、今のあの中国代表アポストロスみたいに!」
「네!! その通りね!!」
昭賢・艮麻・相錬の三人全員共、同じ思いであった。
そうして。
「忌まわしき者共め! ここは一気に焼き尽くすぞ……hccps://baptism.tarantism/! サーチ」
「……ザ パワー トゥー ビー ア マッチ フォー アザーカントリー!!!」
中国代表アポストロスに痺れを切らしたファングが空中要塞から再度攻勢を展開しようとして術句を唱えたタイミングと、昭賢たちが願いを唱えたタイミングはほぼ同じだった。
ザ パワー トゥー ビー ア マッチ フォー アザーカントリー――他国と互角に渡り合う力を、という願いを。
そうして。
「어머!? こ、これは!!!」
昭賢たちは、奇妙な感覚に襲われ――
◆◇
「こ、ここは……」
「ど、どこ……?」
「ま、まさかここって!?」
そうして昭賢たちが、目を覚ますと。
光の線で繋がれた網のようなものが下に見える。
しかし三人には、見覚えはないが聞き覚えはあった。
それは陽玄から聞いていた、あの――
「ようこそ……ダークウェブへ。」
「!? ……あ、あなたは?」
ふと声をかけられ、彼女たちは面食らう。
そう、やはりそこにいたのは。
「……私はアラクネ、あなたたちの望みをもう一度。」
「……え???」
アラクネは優しく微笑む。
「あなたは……そうよ! 陽玄が言っていたアラクネさん!」
「あ、あなたがアラクネ씨!? な、なら私たちにも!」
「ち、力を주세요! 早く」
「ヤカマシイ……シズマレ、ムシケラゴトキが!」
「헐!? ひ、ひいい!!!」
アラクネに食ってかかるような昭賢たちを。
アラクネが騎乗するタランチュラが毎度お馴染みというべきか、彼女たちを叱責する。
「こらこら私の王! めっですよ、いつもの悪い癖が出ていて。」
「オオスマン、アリアタン♡」
「は、はあ……」
そんなタランチュラを、アラクネは優しく窘める。
しかし。
「でも……あなたたちも駄目よ、ただ力を求めるだけじゃ。」
「……헐???」
アラクネは昭賢たちも、窘めた。
「……これを、見て。」
「헐??? ……어머!?」
そう言ってアラクネが見せたビジョンに、昭賢たちは驚く。
それは。
「……セレクト、ビーイング トランスフォームド イントゥ 雷雲形態 エグゼキュート! セレクト! ファイヤリング 雷の暴雨! エグゼキュート!」
「我日你!? く、この!」
「だ、大丈夫小鬼! 私たちには法機があるから」
「舐めるなよ魔女共……いつまでも、そうそうこの空中要塞を攻め切れるなどと!」
「!? きゃあああ!!!」
「皆! ……く、撤退!」
先ほどまで善戦しているかに見えた中国代表アポストロスが、空中要塞の猛攻を前に退けられてしまう光景だった。
「……分かったかしら? 力があっても、それだけじゃ勝てないことも多いの。今戦っている力ある人たちも、必死にその力を絞り出しても中々勝てなかったりはしょっちゅうよ。」
「う……」
アラクネは一通りビジョンを見せた後、三人にそう言う。
「力があれば、全てを解決できるという訳じゃない……それでも、力が欲しいかしら?」
「……네!!!」
「……どうして?」
アラクネは改めて聞くが尚も、三人は力を求めている。
「私たちに力がまだまだないばかりに、陽玄だけに戦わせることになってしまってる……それが嫌なの!」
「네! 私たちは陽玄の重荷になりたくない!」
「그래……力があればそれだけでなんて思ってない! だけど、私たちは少なくとも! 陽玄と一緒に他国と互角にやり合うべく努力したいの!」
昭賢たちは尚も、自分の願いを訴える。
そうして。
「分かったわ……さあ、あなたたちの願いを唱えて!hccps://baptism.tarantism/! サーチ」
「……ザ パワー トゥー ビー ア マッチ フォー アザーカントリー!!!」
思いは、アラクネに通じ。
そのまま昭賢・艮麻・相錬は検索ワードを唱える。
すると。
「!? こ、これは!?」
hccps://seondeokyeowang.wac/
hccps://soseono.wac/
hccps://yuhwa.wac/
「これがあなたたちに与えられた力よ……さあ!」
「네、네!!!」
三人は、目の前に浮かんで来たURLに戸惑いながらも。
「セレクト、hccps://seondeokyeowang.wac/!」
「セレクト、hccps://soseono.wac/!」
「セレクト、hccps://yuhwa.wac/!」
「ダウンロード!!!」
「hccps://maria.wac/、セレクト 仔羊の誕生!!! hccps://maria.wac/GrimoreMark、セレクト 受胎告知 エグゼキュート!!!」
そのまま彼女たちは、術句を唱え――