#24 空中要塞の隙間を縫う
――……なんてな。今だ! 全幻獣機飛行艦艦隊、火炎誘爆砲発射用意!
――了解! ……hccps://baptism.tarantism/、サーチ クリティカル アサルト オブ 幻獣機! セレクト ファイアリング 火炎誘爆砲!
「あれを……やってみたいのよね!」
時は、少し遡る。
青夢が空中要塞が、戦闘飛行艦の集合体たることからかつての馬男の騎士団と相対していた頃を想起していた時である。
「そう……母艦型幻獣機は幻獣機の集合体! いわば究極の密集戦法。だけど、ご存じだったかしら? 白兵・白刃でチャンバラやってた頃密集戦法とは攻防両方を高める効果があったわ、だけど! 今は火器でドンパチやる時代、すなわち密集戦法とはまとめてやってくださいというような自殺行為なの!」
青夢はそこから、空中要塞へ有効打撃となるのがかの火炎誘爆砲であると気づいたのだった。
「hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark、セレクト VictoryInOlrean.hcml エディット! リネーミング 火刑による怨念業火! リライティング URL、FamiliarSpiript:(faculty(){var a =witchery.open().document;a.write(!……」
青夢はそれにより弾かれたように、新たなグリモアマークレットを紡ぎ始める。
そして。
「さあ……行くわよ皆!」
「ま、マリアナ様!」
「雷魔さん、むしろここで状況を切り開くぐらいの気概がなくては魔法塔華院コンツェルンの名折れであってよ!」
「は……はい! マリアナ様がおっしゃるのなら! さあ行くわルサールカ……水流、最大深度! 急速潜航!」
「よし……地獄まで付き合うぞ魔女木!」
「うん、青夢!!」
「大丈夫……地獄なんて行かせないから!」
凸凹飛行隊はすったもんだありつつも。
空中要塞による斉射激しき海域へと、乗り込む。
「きゃあ!」
「大丈夫……さあ皆! それぞれに術句を!」
そうして最大深度でも避け切れはしない雷撃に揉まれつつも。
「hccps://camilla.wac/……セレクト サッキング ブラッド!」
「……hccps://jehannedarc.wac/……セレクト、ビクトリー イン オルレアン!」
「……hccps://crowley.wac/…… セレクト アトランダムデッキ! 悪魔――悪魔の幽閉!」
「……hccps://rusalka.wac/…… セレクト、ゴーイング ハイドロウェイ!」
ジャンヌダルクの高エネルギーが、クロウリーにより圧縮され。
それはカーミラにより周囲のエネルギーを奪う性質を与えられ、ルサールカの泡により包み込まれ。
「hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark/、セレクト 火刑による怨念業火! エグゼキュート!」
「hccps://diana.wac/、セレクト 月の弓矢!」
「hccps://aradia.wac/、セレクト 叛逆の魔術!」
「エグゼキュート!!」
そうしてマリアナ・青夢・剣人・法使夏が編んだ火球が海中より踊り出て、更に真白・黒日の攻撃が空中要塞雷撃とぶつかり合い隙間を作り。
そのおかげで空中要塞下部に雷撃の隙間を縫い火球が着弾する。
「げ、原因は不明ながらも被弾箇所より爆発多数!」
「ひ、被弾箇所に大爆発発生! そこより高エネルギーが噴出し、構成艦次々に誘爆!」
「!? 今……誘爆と言ったか?」
「は、はい!」
「……そうか。 これは……!」
動揺が走る要塞内だが、報告の数々からファングはすぐさま事態を察する。
そう、これは。
「……火炎誘爆砲を!」
◆◇
「よし、効いたみたいね!」
かくして、現在。
青夢は擬似火炎誘爆砲とでも言うべき技が、首尾よく空中要塞に命中したことを確認する。
「じゃ……凸凹飛行隊法機群、全機全速前進! 目標、敵空中要塞被弾箇所!」
「りょうか……え!?」
続けて青夢が叫んだ指令を凸凹飛行隊一同が承服しようとして、戸惑う。
全速前進?
あの誘爆により滾る炎の海となっている空中要塞被弾箇所へと?
が、青夢はそれらの疑問を既に見透かしており。
「ええ、むしろこんな時だからよ! 敵は今混乱している、だから! 私たちが今ようやく空いたあの穴から、突っ込んでってやらないと!」
「ふ、ふん! そんなやり方をされるならば! むしろ、ここから先ほどの技をあの空中要塞に放ち続ければいいのではなくって?」
青夢の言葉にマリアナは反論する。
しかし。
「ダメよ! あの空中要塞にはトバラ族自治区の一般市民も乗っているかもしれない……だけど! さっきの技はいわば、大量殺戮兵器よ。それを続け様に撃てば中の人たちは分からない、だから! ここは直接乗り込むの!」
「青夢……」
「魔女木……」
青夢も、そう反論する。
「しかし……魔女木さん!」
「マリアナ様! ……恐れながら、ここは魔女木の言う通りかと。」
「!? な……雷魔さんまで!」
そこで法使夏も珍しく青夢に迎合し。
「ああ、俺もそうすべきだと思う! 魔女木は……全てを救おうとしているからな!」
「うん、私たちも!!」
「な……あなたたちもであって!?」
剣人や真白・黒日も青夢に迎合する。
「決まりね……さあ、もう一度! 凸凹飛行隊法機群、全機全速前進! 目標、敵空中要塞被弾箇所!」
「了解!!!」
「もう……何があってもわたくしは知らなくってよ!」
これにより、凸凹飛行隊は。
その法機群を、包み込む水流諸共海中より躍り出させ空中要塞に突撃させる。
◆◇
「く……おのれ魔女め! 我らが火炎誘爆砲を猿真似するなど」
「!? て、敵法機群が十時の方向より突撃して来ます!」
「何!? く、早く迎撃を」
「だ、駄目です! 空中要塞十時の方向は只今誘爆中! 被害状況不明につき!」
「な……まさか、誘爆箇所に突っ込むというのか!?」
一方。
空中要塞内はてんやわんやとなり、それに輪をかけて凸凹飛行隊の突撃により混乱に拍車をかけられていた。
「狼狽えるな! 侵入されたところで即座にこの飛甲城シャンバラは陥されはせぬ! あくまで魔女共が乗り込んで来るというならば歓迎せねばな!」
「!? レッドラム殿!」
しかし、その場をアベルが治める。
◆◇
「く、急げ! 早く!」
「こら盟次! ……すみません。」
「しかし……確かに早くしてほしいのは事実なんだ!」
「魔女木さんたち……」
その頃。
自衛隊の船で中国へと向かっているのは、飯綱法父子に獅堂に矢魔道である。
「しかしカイン……いや、矢魔道君すまんな。君まで」
「いいえ、僕は頼んで来させてもらっている立場ですから!」
獅堂の言葉に矢魔道は、そう返す。
恐らくは双子の弟たるアベルの存在を感じ取ってか矢魔道は、自分も今独立戦争の舞台に赴かねばという思いになっていたのである。
◆◇
「よし……何とか侵入できたわね!」
そうして。
誘爆の火の海に多少は邪魔されつつも、凸凹飛行隊は空中要塞の被弾箇所より侵入を果たす。
そこは無機質にも、幻獣機がひしめき合う構造物となっていた。
「ようこそ……我が幻獣機飛甲城シャンバラへ。」
「!? あなたは……」
と、その時である。
声が響き、凸凹飛行隊が見れば。
そこには、幻獣機フルフルに乗り降下して来るアベルの姿が。
「我が名、牛男の騎士団長アベル・レッドラム! 以後、お見知りおきを。」
「アベル・レッドラム……ん!? ま、まさか矢魔道さんの」
「おや……あの裏切り者の兄を知っているとは!」
アベルはしかし、青夢の口から出た兄の名を聞き顔を顰める。
「裏切り者、ね……なるほど! 確かにあなたたち魔男にしてみればそうかもね。」
「ふん……なるほど、貴様らにしてみれば仲間という訳か!」
青夢の言葉に、アベルは口元をやや緩める。
そうして。
「丁度いい、ならば……我が楽園に溺れよ! hccps://baptism.tarantism/、セレクト 楽園建設 エグゼキュート!」
「ん!? な、何ですって……くっ!?」
「こ、これは何であって!?」
「ま、マリアナ様!」
「く、おのれレッドラム!」
「青夢!!」
術句を唱えるや、たちまち凸凹飛行隊一同は何やら光に包まれ――
◆◇
「ん!? こ、ここは……」
やがて青夢たちは、ふと目を覚ます。
彼女たちは法機に乗ったままではあるが、その周囲の景色が違っていた。
それは辺り一面に広がる、草原や森林であり――
「まさか……仮想世界!?」
「ご明察。しかし……抜け出せるなどとは考えないように!」
「!? アベル・レッドラム……」
そしてアベルも、やはり幻獣機フルフルに乗り空に佇んでいた。
◆◇
「ち、長官! 魔法塔華院コンツェルンが空中要塞に穴を開けました!」
「네! 誘導銀弾駆逐艦、誘導銀弾弾幕展開!」
「我ら中国艦隊も遅れるな! 弾幕展開!」
「是!」
「自衛隊艦隊も追撃だ!」
一方。
凸凹飛行隊が空中要塞に開けた穴に気づいた日中韓共同戦線はその穴を更にこじ開けようと、攻撃を加えていく。
「네! 私たちも行こう……私たち、韓国代表アポストロスも!」
「네!!! 陽玄아!」
この様子を見ていた韓国代表アポストロスも、奮起する。