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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜新たな女王編  作者: 朱坂卿
新・第三翔 トバラ族自治区独立戦争 
23/74

#22 その名は武則天/楊貴妃/江青

「ははは、見たか! これが魔男の戦艦の力だ!」


 カンツォは自身がいる飛甲城(フォートレス)から、足元の海域を見つめる。


 人虎艦(ウォータイガー)艦隊が尚も海中・水上・空中と、隙と容赦のない砲撃を放ち続けているからである。


「我日你……後退! 総員、後退!」

「は、はい!」

「싫어……私たちも後退だ!」

「네、네!」

「く……自衛隊艦隊も後退!」

「はい!」

「ば、凸凹飛行隊も後退!」

「了解!!!!!」


 これにより、日中韓共同戦線や凸凹飛行隊は後退を余儀なくされていく。


「那个不可能……トバラ族や魔男! よくも私たちの国を……」


 海域にはいないためにその砲弾幕の圏外にいる鬼苺らは、自分たちの法機内にて歯軋りしている。


 自国を救おうとする勢力が、今は敵の攻撃により危険に晒されている――


 更にそれを、自分たちは指を咥えて見ているしかないという状況。


 それらが彼女たちを、苛立たせているのだ。


「我日你……女夭! ()()()()()()であるあなたたちは退却して!」

「什么!? し、小鬼!?」


 が、鬼苺は女夭にそう告げ。

 女夭が戸惑う間に。


「さあ行くよ西王母……私たちが! この中国を救わないと!」


 鬼苺は、中国代表アポストロスの中で唯一法機マリアではなく個別に授かった法機の持ち主であるという自負もあり。


「hccps://xiwangmu.wac/、サーチ、クリティカルアサルト オブ 空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)! セレクト 、金方白虎咆哮ホワイトタイガーハウリング、エグゼキュート!」

「! ろ、六時の方向より敵機の攻撃が!」


 自機たる法機西王母を突撃させ、飛甲城(フォートレス)へと衝撃波攻撃を浴びせかかる。


「ねえ……金東、呪華! これって……何かもどかしくない?」


 女夭は、金東、呪華に呼びかける。


「是、女夭!」

「是……そうね。」

「? 呪華?」


 呪華は女夭の声にややそっけない態度を取り、女夭は首を傾げるが。


「ふん……ファング殿! あのような法機一機ごときに!」

「ああカンツォ殿……六時の方向の構成艦、対空防御!」

「我日你! くっ……!」

「!? し、小鬼!」


 目の前を攻撃して回る法機西王母に空中要塞より攻撃が加えられ、女夭たちは動揺する。


「ふふふ……さあ! 海域の敵艦隊もあの忌々しい法機群もここまでだ! hccps://baptism.tarantism/! サーチ」

「……ビーイング アシスト フォー マイ ベスト フレンド!」

「セイビング マイ カントリー フロム ディファレント エスニック グループ!」

「……セイビング マイ エスニック グループ!」


 が、それが彼女たちの背中を押した。


 女夭は親友を支援したいと願い。

 金東は自国を異民族から救いたいと願い。

 呪華は自民族を救いたいと願い――


 ◆◇


「ここは……?」

「だ、ダークウェブ? し、小鬼が言っていた……?」

「什么!?」


 三人がそうして一瞬気を失い、次に目を覚まして見れば真っ暗な空間に。


 光の線で繋がれた網のようなものが下に見える。 


 目の前の光景に女夭・金東・呪華はただただ混乱するばかりだったがそれでも女夭だけは、鬼苺が言っていたことを思い出しここがダークウェブであると確信する。


「ようこそ……ダークウェブへ。」

「!? ……あ、あなたは?」


 ふと声をかけられ、彼女たちは面食らう。

 そう、やはりそこにいたのは。


「……私はアラクネ、あなたたちの望みをもう一度。」

「……え???」


 アラクネは優しく微笑む。


「あなたは……そうだわ! 金東、呪華聞いて! この人が、小鬼に法機西王母をくださった人よ!」

「!? 你说什么!? じゃあ」

「是! 早く、私たちにもより強力な法機を」

「アリアタンニ、ナレナレシイゾムシケラドモ!」

「什么!? ひ、ひいい!」


 そのまま前のめりに、アラクネに法機を要求する女夭たちだが。


 アラクネが騎乗しているタランチュラの声に、怯えて引く。


「こら、私の王! ……ごめんなさいね、あなたたち。でも、まだあなたたちに力を与えられないわ! 改めてここで、あなたたちが自分の切なる願いと向き合わないとね!」

「! わ、私たち自身の願い???」


 アラクネがタランチュラを諌め、三人に改めて問いただす。


「私は……小鬼を助けたい!」

「私は……私たちの国を襲ったあんな民族をどうにかしたい!」

「……私は……」

「!? ぞ、呪華?」


 それを聞き、それぞれに思いの丈を話す女夭と金東だが。


 やはり何か煮え切らない呪華に、彼女たちは戸惑うばかりだ。


「あなた……いま何か隠しているのね?」

「!? っ……」


 そんな呪華にアラクネがかけた言葉に、彼女は顔を背ける。


「でも、いいわ……何にせよ、あなた自身が望んだことは変わらない。だから……全てをさらけ出す必要なんてないから、あなたは信じる願いを言えばいい!」

「!? あ、アラクネさん……」


 呪華はその言葉に、涙ぐむ。


「そうね……私は、私の民族を救いたい!」

「是! そうよ呪華、私たち漢民族を守らないとね!」

「あ金東……是、そうね!」


 呪華は改めて、そう思いを新たにし。

 続けての金東の言葉には一瞬戸惑いつつも、彼女に笑顔を返す。


 そうして。


「うん、その意気よ皆! さあ皆……また検索して! hccps://baptism.tarantism/! サーチ」

「ビーイング アシスト フォー マイ ベスト フレンド!」

「セイビング マイ カントリー フロム ディファレント エスニック グループ!」

「セイビング マイ エスニック グループ!」


 アラクネの呼びかけに、三人は改めて検索ワード(切なる願い)を唱える。


 すると。


「!? これは……」


 hccps://wuzetian.wac/

 hccps://yangguifei.wac/

 hccps://jiangqing.wac/


 女夭の法機武則天と、金東の法機楊貴妃に呪華の法機江青のURLが浮かび上がる。


「これがあなたたちの力よ……さあ、お行きなさい!」

「し、是!!!」


 戸惑う三人だが、すぐに。


「セレクト、hccps://wuzetian.wac/!」

「hccps://yangguifei.wac/!」

「hccps://jiangqing.wac/!」

「ダウンロード!!!」

「hccps://maria.wac/、セレクト 仔羊の誕生(セイヴァーズバース)!!! hccps://maria.wac/GrimoreMark、セレクト 受胎告知(アヌンシエーション) エグゼキュート!!!」


 そのまま彼女たちは、術句を唱え――


 ◆◇


「! ここは……」

「わ、私たちの法機よ! さあ……小鬼!」

「くっ……うん!? え……ぬ、女夭たちまさか!」


 そのまま、現実世界にて。


 女夭の呼びかけに鬼苺が振り返ると、そこにはアラクネの幻影が一瞬重なった彼女たちの法機マリア三機の姿が。


「さあ、リーダー! 私たち中国代表アポストロスにご指示を!」

「女夭たち……是!」


 女夭たちの呼びかけに、鬼苺は一旦彼女たちの法機たちの所に戻り。


「さあ……中国代表アポストロス、全機敵空中要塞の上を取る! 制空権は私たちが握るの!」

「! 敵法機群、新たに六時の方向より三機接近!」


 鬼苺は中国代表アポストロスの法機群を率いて、空中要塞に再度突撃を仕掛ける。


「ふん、忌々しい! 中国代表アポストロス……我らの民族をコケにした者たち! 許すまじ……六時の方向の構成艦隊、全艦隊群生(フォーメーショ)形態(ンクラスター)に移行! 敵法機群に対空砲火を浴びせよ!」

「了解!」


 それには空中要塞側も、動き出す。


 たちまちパーツ群に分かれた飛甲艦(ワゴンフォート)のパーツ一つ一つより対空砲火が放たれ中国代表アポストロスの法機群を襲う。


「我日你! これじゃ」

「安心して、鬼苺! ……hccps://jiangqing.wac/、セレクト 王老五コンフュージングアクト エグゼキュート!」

「む!? ろ、六時の方向視界が歪んでいます!」


 まずは呪華の法機江青が、幻惑攻撃で惑わす。


「是、小鬼! 次は私が……hccps://wuzetian.wac/、セレクト 武周建国(テリトリービルト) エグゼキュート!」


 次に女夭の法機武則天が、周辺の空中要塞構成艦を爆破する。


「さあ、私も! hccps://yangguifei.wac/、セレクト 甘美な茘枝(スイートライチ) エグゼキュート!」


 続いて金東の法機楊貴妃が放つ蔦型のエネルギー体よりライチ型のエネルギー弾多数が落下し、空中要塞を爆撃する。


「く……構成艦隊、次々に被弾!」

「おのれ……!」

「今よ……凸凹飛行隊、全機突撃! 同時に、雷魔法使夏!」

「言われなくたって! ……hccps://rusalka.wac/…… セレクト 儚き泡バブリングパニッシュメント! hccps://rusalka.wac/GrimoreMark、セレクト ! 儚き泡魚雷霆(バブリングトーペッド)、エグゼキュート!」

「な!? く、人虎艦(ウォータイガー)たちが!」


 空中要塞が揺らぎ、人虎艦(ウォータイガー)艦隊に出来た隙を突き。


 そのまま、凸凹飛行隊の水流が艦隊の隙間を縫いながら水面下から雷撃を加えていく。


「さあ電使翼機関(ジェットエンジェン)、全速! 皆、遅れないでよ?」

「ふん! あ、当たり前であってよ!」

「舐めないで魔女木!」

「ああ、魔女木!」

「もちろん、青夢!!」


 青夢はそうして、電使翼機関(ジェットエンジェン)を自機にインストールし。


 更に加速しながら、水面下の攻撃を加えて行く。


「く……おのれ!」

「やれやれ……しょうがないですねえファング殿! ここは我々の人狼艦(ウォーウルフ)がお相手をしてあげねばね!」

「!? この声は……クロー殿か!?」

「!? あれは……新手の母艦型幻獣機!?」


 しかし、その時である。


 突如として、空中要塞の上下よりまたも半人半艦の母艦型幻獣機――曰く、人狼艦(ウォーウルフ)が多数躍り出る。


 それらは狼男の騎士団長クローが率いる艦隊である。


「さあ……hccp://baptism.tarantism/、セレクト 狼牙砲(ウルブスファングズ) エグゼキュート!」

「ぐっ!?」

「きゃあ!!」


 たちまち空中要塞の上下にいる人狼艦(ウォーウルフ)艦隊どちらからも主砲塔からの砲撃があり。


 それらが炸裂する空中、海中の全勢力は苦しめられる。


「ははは! 魔女の者たち……まだまだ、勝負はこれからだよ!」


 クローは人狼艦(ウォーウルフ)艦隊旗艦より、高笑いをする。

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