#18 決着、そして世界へ
「くっ、シャルル陛下!」
「ははは、さあどうだ魔女共!」
青夢たちはまたも苦しむは、爆煙の中より現れたシャルルら馬男の騎士団たちの音波攻撃である。
「なら……hccps://jehannedarc.wac/、オラクル オブ ザ バージン! hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark、セレクト 騒がしき託宣! エグゼキュート!」
ならばと青夢は、音波を防ぐ術を発動するが。
「む!? ふん、術を発動させるか……だが、甘い! hccp://baptism.tarantism/、セレクト 悪魔の交響曲 エグゼキュート!」
「hccp://baptism.tarantism/、セレクト 悪魔の交響曲……」
「くっ!? お、音が防げない!?」
シャルルは負けじと、より強大な音波を発し。
青夢の力でも、防げなくなる。
「hccps://emeth.makeda.wac/! セレクト 、 神移し エグゼキュート!」
「くっ……!? こ、これは!」
「おお……アブラーム卿、感謝する!」
そこへ追い討ちをかけるかのごとく、パールも法機マケダの力を発動して魔女の法機たちに干渉し。
それによりシャルルも、勢い付く――
「くっ!? な、何だこれは!」
が、何と。
マケダの力は、魔男の幻獣機にまで干渉してきた。
◆◇
「な、何をするのかアブラーム卿!?」
「ヴィクトリュークス卿、ここは撤退です。」
「なっ!? 何故かアブラーム卿、我らがこれから押そうという時に!」
パールが高空の法機マケダより呼びかけ、シャルルはそれに対し抗議する。
「いいえヴィクトリュークス卿、魔神艦を破壊された時点で既にあなた方の負けです。まあデータ収集の首尾は上々ですので、その点では勝ちとしてもいいでしょうが。」
「な……ふん、ああそうだ! 我らは負けていない、だからこれから」
「ならば、尚更にお退きくださいなヴィクトリュークス卿! これ以上食い下がれば、汚名の上塗りともならないとも限りませぬし。」
「く……アブラーム卿!」
続けてのパールの言葉に、シャルルは尚も食い下がるが。
「私の言葉は新たな女王陛下のお言葉とお思いになられた方が……身のためやも知れませんが?」
「く……アブラーム卿! 如何な卿と言えどそのようなことでは越権ではないのか……!」
「あら、申し訳ございません。私の言い方が悪かったようで正しく伝わらなかったようです……これは、現に新たな女王陛下がおっしゃられた言葉ですわ!」
「く……ぐ!」
この言葉は、シャルルをさすがに閉口させる。
「決まりですわね……hccps://emeth.makeda.wac/! セレクト 、大蛇殺し エグゼキュート!」
「ぐっ! ……あ、魔男たちが!?」
そのままパールは、援護としてマケダの大蛇エネルギー体を再び発動し。
それに魔女たちが怯んだ隙に、シャルル以下馬男の騎士団の幻獣機群は跡形もなく消えていた。
◆◇
「Hey、girls and guys! DJセレネーの、ウィッチオンエアクラフト〜魔女は空飛ぶ放送電波に乗る〜張り切って行くyo!」
この様子を実況中継していたDJセレネーは、またも配信を再開する。
「今日は、日本が誇る世界的企業魔法塔華院コンツェルン・王魔女生グループ・龍魔力財団傘下の三学園によるマイニングレース! でもそのさなか襲って来たのは、あのサイバーテロリスト魔男! だけどそれも、三学園の法機たちが片付けてくれたわyo! そして……」
DJセレネーは、少し間を置き。
「三学園によるマイニングレースは、魔法塔華院コンツェルンの勝利に決まったわyo! これにて三学園の代表決まりい! うーん、この胸の高まりい! さあさあ、これからも目が離せないマイニングレースよろしく頼むわyo!」
三学園マイニングレースの、結果を発表する。
◆◇
「ふう……」
「お疲れ様です、DJセレネー。」
「あら……魔男の騎士団長方。」
そうして、DJセレネーが配信を終えた頃。
何とウィヨルとフィダールが、スタジオに現れた。
「マイニングレースを本日も、布教してくれて精が出ますな。」
「ええ……これも他ならぬ新たな女王の意思。ならば、果たさなければなりませんから。」
DJセレネーはウィヨルとフィダールに、笑いかける。
◆◇
「やりましたね、マリアナ様!」
「ええ、まあ当然ですわ。」
「やったよね、青夢!!」
「う、うん……」
「?? 青夢??」
三学園マイニングレースの直後。
真白と黒日の言葉に、青夢は煮え切らない態度を見せる。
「(やっぱり何かあるわ……このマイニングレースには。)」
――……待ってください! これは……ユダマイニングです! そのイスカリオテのユダは……メンバーのトモです!
――そ、そんな! と、トモ君がユダマイニング?
――ち、違う俺は!
――トモ、残念だけどよお……俺たち、ザラストサパーマイニングもやっててもう証拠上がってんだよ!
――!? ……な、ち、違う! ほ、本当に俺はやってない!
―― 本当に、私何も知らないんです!
青夢の頭に浮かぶは、やはりこれまで彼女が見てきたマイニングレースにてイスカリオテのユダとされた者たちの様子だ。
「(あれはやっぱり……マイニングレースに何かあるってことかしら?)」
青夢の頭は、そんな疑問に支配されていたのだった。
「……さあて、わたくしたち以外にも。アジア予選や欧米予選もまだ控えていますわ! どなた方がわたくしたちの敵になりますやら……」
「!? え? 私たちアジア予選に含まれてないの!?」
が、マリアナの言葉に。
青夢は、目を丸くする。
「はあ、まったく何も知らなくってよね魔女木さん! わたくしたちは世界的企業であるが故に、国とは関係なくあくまで三学園――ひいては三企業代表ということになってますの。」
「そうよ魔女木! まったく、そんなことも知らないで!」
「ちょっと、魔法塔華院さんに雷魔さん!」
「青夢にそんな言い方して!」
マリアナからの言葉に、怒った真白と黒日との口論に発展してしまう彼女たちだが。
「(そう、まだ世界各地で予選が……だとしたら。ますます嫌なことが起こる気がする……)」
しかし、そんな彼女たちをよそに。
青夢は一人、思索に耽っていた――
◆◇
「ふうむ……何かあるぞ飯綱法。」
「ああ、お前もそう思うか獅堂……」
その頃、飯綱法邸では。
総佐と獅堂が、そう話していた。
「魔男の、ことですか?」
盟次が、そんな二人に問い質す。
「ああ、そうだ。マイニングレースを集中的に狙ったり……これは何があったのだろうな。」
やはり、親子というべきか。
獅堂もまた、青夢と同じ違和感を抱えていた――
◆◇
「……これだけの援助をしてくれるとは、本当か!?」
その頃。
マイニングレースのアジア予選舞台となる、中国。
そこの少数民族、トバラ族自治区にて。
自治区主席は、目の前の書類を見て目を丸くしていた。
「ええ、もちろん。」
「これも新たな女王陛下の御意思です、お受け取りください……」
その主席の目の前には。
何とウィヨル、フィダールの姿が。
かくして、青夢親子の嫌な予感は的中しようとしていた――




