8話
8話
獄乃坂「上履きよし!コップよし!汚れ物よし!エモノ(おもちゃ)よし!お昼寝道具よし!」
元極道のアニメ演出、獄乃坂が保育園で帰り支度をしている。息子を迎えに来たのである。
獄乃坂「さ、ヒロくん帰るでー」
獄乃坂「ん、おらんな…」
保育士1「あ、ヒロくんのお父さんお帰りなさい。ヒロくんならさっき飛組さんの方で見ましたよ」
獄乃坂「おお、こりゃどうも…」
獄乃坂が飛組に行くと、息子のヒロ(4歳)が年長さん用のおもちゃで遊んでいる。
獄乃坂「おう、ヒロくん…保育園楽しかったか…?ほら、帰るでー」
ヒロ「や!まだあそぶー」
獄乃坂「遊ぶ言うたかて、もうセンセイ方のご迷惑になるし…」
ヒロ「やー!」
獄乃坂「…しゃーない…家の近くの公園でブランコでもするかー?」
ヒロ「ぶらんこするー!」
保育園児の体力は無限。まず家に帰り着くまでが大仕事である。
人混みを避ける。交通量の多い交差点の横断歩道を渡る。吸い込まれることなくコンビニの前を通過する。近葉公園に着く。
ブランコ、滑り台、シーソー、ジャングルジム、ブランコ、のローテを繰り返す。
獄乃坂「ヒロくーん、いよいよ暗くなってきたでー、帰ろー」
ヒロ「いや!まだあそぶー!」
獄乃坂「ヒロくん、今日の夕飯チャーハンやでー?」
ヒロ「(無視)」
獄乃坂「餃子、餃子もあるでー?」
ヒロ「(無視)」
獄乃坂「超光薬剤師あんぱーむメン始まるでー?」
ヒロ「(無視)」
辺りがますます暗くなる。獄乃坂、遊び続ける4歳児を見て。
獄乃坂「しゃーない…お風呂の時間が遅れてしもーたら絵本を読む時間が無くなってしまう…」
獄乃坂「ごめんなー、ヒロくん。ほな、帰るで」
獄乃坂が息子のヒロを抱え上げる。
ヒロ「やー!行かなーい!!ばーか!!行きたくなーいー!!」
獄乃坂「堪忍やで、な?ヒロくん」
ヒロ「やーだー!!」
ヒロが大暴れする。獄乃坂は抱きかかえたヒロを落とさないように気を付ける。
獄乃坂「あ、暴れたら危ないからな?もうちょっとおとなしゅうしてな?」
ヒロ「いーやー!!」
獄乃坂「家着いたら父ちゃんと遊ぼうな?」
ヒロ「いーやー!!おとうさんじゃなーいー!!おとうさんちがうー!!」
獄乃坂「お風呂に好きなおもちゃ持ってってえーから、な?」
警察官1「どうしましたー?」
警察官2「ちょっといいですかー?」
誤解を解くのにだいぶかかる。スマートフォンに写っている息子の写真は息子しか写っていないので親子を証明するのは大変。