クロノの提案と懸念案
・・・夢を見た
僕は赤い髪と赤い目をした女性と共に暮らしている
彼女が何かを言うと僕はたしなめている
僕が魔物に襲われていると彼女に助けられる
そんな日々が続いくと思ったら・・・
彼女は泣いていた・・・
夢の中で彼女は僕に何かを語りかけるが僕は何を言っているのか分からない
そんな僕を尻目に彼女は去っていく
その瞬間、僕は焦燥感を募らせるが足が動かずに追い掛ける事が出来ない
そんな幸せと絶望を味わった夢だった・・・
「・・・ノ様。」
誰かの声が聞こえる
「・・・ロノ様。」
僕の名前を呼んでいるのだろうか?
「クロノ様!!」
その声を聞いてハッと目を覚ます
「お早うございます。大丈夫ですか?随分魘されておいででしたが・・・」
「おはようルーシャ。どうやら夢見が少し良くなかったみたいだ。」
僕がそう言うとルーシャは心配そうな表情で見返してくる
「体調は如何ですか?」
「うん、体調は問題無いよ。多分、ローエルの事が知らず知らずのうちに影響していたかもしれないね。」
・・・嘘だ
ローエルの事は罪悪感も達成感も何もない
でもルーシャに昨日合った女性の事を告げるのも憚られた
「・・・そうですか。ご気分は如何ですか?」
「目が覚めたから問題無いよ。ところでルーシャ、今日、僕の予定はどうなっているかな?」
そう尋ねると彼女の表情が強張る
「昨日早々にお戻りになると予想しておりませんでしたので、本日は何もご予定は入れておりません。」
「うん・・・だったらいつものメンバーの予定を確認して召集して貰っていいかな?皆に言いたい事があるんだ。」
「・・・畏まりました。それでは早速確認してまいります。」
「うんお願いね。また時間が決まったら準備するから教えてね。」
「はい・・・」
そう言って部屋を出ようとしたルーシャがこちらを向く
「クロノ様・・・」
「何?」
「私はどの様な結論を出されたとしても、クロノ様の味方です!!」
健気なほどに瞳を潤ませながら真っ直ぐに見つめてくる視線を逸らせる事は出来なかった
僕がその視線を受けて無言で頷くと少しだけ笑って去っていった・・・
◇
◇
◇
「皆さん、お集まり頂き有難う御座います。早速ですが昨日に受けた襲撃の顛末を含め【魔王】様から緊急招集が御座いましたのでお集まりいただきました。」
会議場には家臣達やグーガ、バルデインが集っている
皆、緊急招集という事でどこか顔が強張っているな・・・
「まずは昨日に受けた襲撃ですが、【魔王】様が逃亡した首謀者を追撃し抹殺して頂けました。」
「おぉ・・・」
皆が感嘆の声を上げる
「その事も踏まえ、これより【魔王】様よりお言葉を賜ります。心してお聞きください。」
ルーシャはそう言って一歩後ろへ引く
僕はそれと同時に立ち上がり全員の顔を見渡すと、皆どこか緊張した面持ちで僕を見ている
この視線だけはやっぱり慣れないな・・・
「此度の襲撃に対し、兵共、大義也。」
そう告げるとバルデイン、グーガ、近衛兵が頭を下げる
「襲撃の後、業務に対し、文官共、大義也。」
さらにそう告げるとルーシャや家臣たちが頭を下げる
「されども、我は、現状が不満也。【黒家クロノス】に我有りと、周知されていないが故の、事象となる・・・」
そう告げると全員の表情が更に強張る
ローエルはこの国の現状を知らなかった
新たな【魔王】の存在を知らなかった
だからこそこの国に襲撃してきたのだ
「我は、【黒家クロノス】の【魔王】の名の下に、此処にて宣言する。【ズファイオ魔帝国】までの、国と言う国を侵攻す。」
そう僕が告げると全員が驚いた表情を浮かべる
「我に降る国は、安寧と平和を、刃向かう国は、暴力と無慈悲を与えよう・・・」
「・・・・・・」
全員が緊張した面持ちでこちらを見つめる
グーガに至っては蒼白の表情を浮かべている
「其等は、選択せよ・・・我と共に行くか、我と、道を違えるか・・・」
僕がそう告げるとざわざわと話し出す
彼らからすると寝耳に水という様な状況だろう
けれども何の前情報も渡さずに選択して貰わなければならない
僕が説明する理由は彼らからすると正に同じ様な理由なのだから・・・
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