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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
Ⅵ章【クロノショウドウ】
88/640

クロノの動揺と抱擁


転移は無事に完了し、僕は自分の私室に到着した


無事に戻って来たし、ローエルは倒した

黒幕が判明させる事は出来なかったが上々の成果ともいえる


(でも・・・)


気分は全く晴れない

理由は自分でも自覚している・・・

あの女性が頭から離れない


(・・・!!)

何だったら考えすぎて頭痛がしてきた位だ

多分、彼女こそがアカノなんだろう

根拠も何もないけれども確信がある


彼女と僕の関係は?


僕の記憶には転移した町へは行った事は無い


なら彼女はあの町で何を?


全てを投げ出して彼女に会いに行きたい気持ちが増幅する


あの時、躊躇わずに転移マーカーを付与すれば良かったと少し後悔もする


その考えを首を振って必死に否定した

付与した対象に何らかのデメリットが無いとも断定できない

それに、今の僕は一国の王だ

助けて、手助けして自立させるまでが助けた者が行う責務だ

少なくともブロウドさんは僕にそうしてくれた

それにブロウドさんの課題もある・・・

文字通り命の恩人から与えられた課題を無下にする事は僕にはできない



考えすぎて眩暈を起こしそうになっていると、扉からノックする音が聞こえた


「・・・入って良いよ。」

一瞬、無視してしまおうかと考えてしまったがそう答えた


「クロノ様!!ご無事ですか?!」

勢いよく扉が開いたかと思うと開口一番そう叫び出す


「うん、幸いケガは無いよ。ただ・・・相手の黒幕とは出くわさなかったけどね。」


「そんな事より御身の方が大事です!!!どうか気を患わせないでください。」


「うん・・・有難う・・・」


「・・・クロノ様、どうかなさりましたか?」


「いや、大丈夫だよ。」

ちゃんと笑えているかは分からないが笑顔を意識してルーシャを見つめながら答える

彼女はおもむろに僕に近づいて来て手を握りしめてくる


「・・・クロノ様。」


「私はクロノ様をお慕いしております。そんな貴方の機微も分からない様な鈍感な女だとお思いですか?」

そう言いながら真っ直ぐ僕の目を見つめる彼女に僕は勝てる気がしない


「・・・降参だよ。」

苦笑しながらそう答えると彼女も笑う


「初めて貴方に勝てましたね?」


「そうだね・・・ここまで敗北感を感じたのはブロウドさん以来かな?」


「意外と最近ですよね?」


「ハハッ、そうだね。」

そんな軽口を叩いていても彼女は僕の手を離さなかった

その挙動で観念して自白を始める


「・・・僕が魔族化した時に大切な記憶が抜け落ちているかもしれないという話をしたよね?」


「はい。アカノという方の記憶が抜けているのですよね?」


「うん。でも転移先にそのアカノという人族らしき者がいた。」

僕がそう告げると彼女は驚きで目を見開く


「クロノ様は記憶が戻られたのですか?!」


「いや、記憶は戻っていないし、本人に確かめてもいない。でも・・・彼女はアカノだという確信があるんだ。」


「・・・・・・」


「頭の中から彼女が離れない。懐かしい様な感情が頭に湧き上がってくるし会いたい気持ちもある。でも僕は身体は魔族だしこの国の【魔王】だ。ブロウドさんの課題もあるし、彼女がいた転移先の国も分からない。」


「・・・・・・」


「優先順位を付けるならば、間違いなくこの国を自立させる事が最優先だ。そしてブロウドさんの課題だね。ブロウドさんに説明を受けた時に諦めた筈なのに・・・なのにどうしても、胸を締め付けられる・・・」


「・・・・・・」


「ルーシャ・・・僕は・・・どうすれば良いと思う?」


「・・・クロノ様。」

彼女の声色を聞くとビクッとしてしまう

何を言った所で、【黒家クロノス】を軽んじていると思われても仕方ない


「私は貴方様に【魔王】即位のお願いを申し上げた時、こう申し上げました。クロノ様の行動を制限しない、この国をいつ捨てて行っても良いと・・・」

確かに彼女はそう言っていた


「その言葉を反故にするつもりは毛頭御座いません。・・・御身の心のままに行動なさってください。」

そう言った彼女の表情を見て固まってしまう

泣いてしまいそうな・・・でも微笑んでいる様な・・・神々しさと愛おしい感情が入り混じる


「ルーシャ・・・」

僕は彼女の手を離して、ゆっくりと彼女を抱きしめる



・・・その瞬間は、あの女性の顔は頭の中から消えていった



いつも有難う御座います!!

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ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!

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