クロノの再会と散会
「おぉ・・・」
クロノスの私室で転移した僕は何故か空中に転移される
ここは・・・ローエルの協力者がいる場所ではなさそうだ
空から見た風景は比較的のどかな印象だし、下を見下ろせば町が見える
『じゃぁ死んじまえよぉぉぉぉおぉぉ!!!!』
下の方からローエルの叫び声が聞こえる
どうやら生物にマーカーを付けると反動で放り出されるみたいだな・・・
(思わずマーカーしたけど・・・最悪、融合しちゃう可能性も僅かながらあったな・・・)
ローエルと融合・・・想像しただけで最悪だ
そうなると僕は迷わず自死しようとするだろうな
そんな事を考えながら落下していると、ローエルが誰かに襲い掛かろうとしている
(彼を殺すのは僕の責務だ。ましてや彼が誰かを殺すの看過は許されない・・・)
僕は無造作に先程に彼から奪った剣を握りしめて落下する
『しねぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇ!!!!』
「其がな。」----シュパッ-----
僕の斬撃と言葉がローエルに向けて同時に放たれ、ローエルの首が飛ぶ
それを掴んだ僕を見るなり
「・・・・・・へ?」
間抜けな声を発していた
その無防備な声が僕を苛立てさせる
無遠慮に国に襲い掛かる
不用心にこの様な醜態を晒す
厚顔無恥に人族だった頃、僕を虐げる
(そして・・・無様に死んで逝く・・・)
首だけとなったそれに対して発する言葉は一文だけ
「其に、慈悲は、無い・・・」
「お…おおおお前…何で此処に…何でお前が此処にぃ!!」
「我が国を、撫で回す羽虫を、許容す訳が、なかろう?」
それだけを告げ【暴喰ノ口】を発動させる
「や…止めろ!!やや、止めてください!!やや止め」
首だけになってもこんなに喋れるのは魔族化したからだろうか?等と変な事に感心してしまう
【暴喰ノ口】を起動させ、ローエルの顔に触手が巻き付けられる
「さらばだ…愚かな、【勇者】よ…」
「いやだいや…ま、まおうぅぅぅぅ-----------!!!!!!」
・・
・・・期せずして殺された復讐を遂げたけれども心に達成感は無い
(ライアやヴァリアにも復讐出来たら何か変わるかな?)
正直、そんな感情も湧かないし、達成感を味わえる気もしない
そんな事を考えながら無意識にローエルの身体がある方へ視線を移す
その瞬間、思考は停止した
ローエルの身体から黒い炎が出ていたからではない
そのすぐ傍にいる赤髪赤目の女性に目を奪われた・・・
誰かは知らない
知っている気はするが僕は思い出せない
不意に懐かしい様な・・・泣きたくなる様な感情がこみ上げる
この人が・・・この人こそが・・・
「其、は・・・」
そう言いながら無意識に手を伸ばす
すると彼女は警戒して剣をこちらに向けてくる
(それは、そうか・・・)
僕は仮面を装着し、ローブで身を隠し、魔族となっている
彼女が本当に僕の思っている人族だとしても・・・分かる訳がない
でも・・・それでも・・・
少しだけ哀しい・・・
よく見ると、彼女は僕を見ながら震えている
その瞬間、ブロウドさんの言葉が頭の中で回顧された
負傷している彼女にとって今の僕は害以外の何者でもない
(でも・・・)
せめて合っているのか確認だけでもしたい
そう思った瞬間、何処からともなく声が聞こえる
「魔物がいなくなったぞ!!」
「おい!無事かーーー!!」
「おかあさーーん!!」
この瞬間、どうやら僕は人族の国へ転移してきた事を自覚した
(不味い、人族がこっちにやって来る!)
僕は急いで自分の私室へマーカーした場所へ転移を開始する
・・・彼女に転移マーカーを付与するか刹那悩むがやめておこう
彼女がアカノとは限らないし、身体に付与する事で付与された者にデメリットがある可能性も拭えない
僕の身体が徐々に地中に沈んでいく
「さようなら・・・」
聞こえたかどうかは分からないし、変換されているだろう
それでもそう言わずにいられなかった・・・
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