クロノの追跡と追撃
「【魔王】様ご無事ですか?!」
着地した僕に向かってルーシャと近衛兵が近づいてきた
「是。些事故、気を病むな。・・・民草は息災か?」
「今確認中ですが、大事にはなっていないかと。騎士団達が頑張ってくれましたので。」
ルーシャの言葉に頷く
「兵及び、民草の、安否を確認報告せよ・・・その後、我は羽虫を追撃する。」
「で、ですが・・・あの魔族は既に逃げてしまいましたが・・・?」
ルーシャは驚きながら疑問を投げかけてくる
「転移により、追撃可能だ。」
そう、僕の最後の攻撃はローエルを倒す事を目的としていない
攻撃に目を向けさせて転移マーカーに気づかれない様にする布石だ
「それでは今から追撃されるのですか?」
「非ず。泳がせれば羽虫の巣を、炙り出せるやもしれぬ・・・」
ローエルは、魔族化し、この国の事情を知って襲撃してきた
という事は協力者や後ろ盾がいる可能性が高い
定期的に襲撃されるのも面倒なので纏めて倒せるのならば倒しておきたい
幸い、ローエルは消耗しており、協力者も襲撃は予期していない
僕は今から魔力と体力の回復を行い万全に奇襲をかける事が可能だ
「ですが・・・危険では?」
「非ず。羽虫の巣に、火をくべるだけの、容易な作業よ。」
「我は、暫し休む故、兵及び、民草の、安否を確認し、報告せよ。」
「はっ!!」
僕はそう言い残して城内に入っていった
◇
「クロノ様、今宜しいでしょうか?」
ノックと共にルーシャの声が聞こえる
「うん、大丈夫だよ。」
僕は私室でチェックしていた【神ヘノ冒涜】を閉じながら返事をする
「失礼します。先程の襲撃の件ですが、兵士の重傷者が16名、国民の重傷者が3名、軽傷者は多数となります。但し兵士、国民共に命に別状はないとの事です。」
「・・・うん有難う。やっぱり獣人は強いね。ここまで被害が少ないとは思っていなかった。」
「これもクロノ様が空中からの襲撃を防いで下さったお陰です。国民達も新たな【魔王】様に助けて頂いて非常に喜んでおります。」
「いや、今回は兵士たちの功績が大きいよ。財務担当と相談して可能であれば報奨金を与えてあげて欲しいな。」
「畏まりました。」
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。」
そう言いながらローブを羽織る
「クロノ様、大丈夫だと信じておりますが御身を第一に・・・」
心配そうな表情でそう告げてくる
「大丈夫、僕は【魔王】だからね。あいつがアジトに戻っているかも不確かだしね。戻っていないとしても御礼だけはキッチリして戻って来るさ。」
そう言いながら私室に転移マーカーを付ける
「それじゃあルーシャ、後は頼んだよ。どんなに遅くとも2日位で戻って来るから。」
そう言いながら仮面を装着する
「【魔王】様、ご武運を・・・」
そう言って臣下の礼で僕を見送ってくれる
その様子を見つめながら転移を起動させ、ローエルの元へ向かった
◇
◇
◇
「クロノ様・・・」
私はクロノ様の私室を後にして執務を行う部屋へ移動しようとしていた
「姫様、どうかなさいましたか?」
「グーガ、私はもう姫様ではありませんよ。宰相と呼びなさい。」
「いや失礼しました。宰相様が【魔王】様のお名前を呼んでいたものですから。」
そう言いながら悪気のない笑顔で言い返しされる
「いけない・・・気を付けます。」
「いやいやいや、宰相様にも春が来た様で喜ばしい限りです。」
「もう!!」
私が文句を言う様な表情をするとグーガは少し笑った表情をし、そして真顔に変わる
「【魔王】様は向かわれたのですか?」
「・・・はい。」
「あの御方でしたら大丈夫ですよ。人族どころか【魔王】相手にも圧倒しておりましたからね!ただの魔族なんざ一捻りですよ!!」
「そうですね・・・」
その通りだ
あの程度の魔族やぞの仲間等、クロノ様の相手になり筈がない
ないけれど・・・
何か無性に嫌な予感がする
それが何かはわからないけれども・・・
私は廊下の窓から見える風景に目を向けた
「どうかご無事で・・・」
思わずそう呟いてしまった
いつも有難う御座います!!
蛇足ですが、魔族では自国の魔王は「魔王様」
他国の魔王は魔王
プライベートでは名前で呼ぶ様になっております。
また、畏怖させる事と情報隠ぺいの為に基本的には名前を口外致しません。
(魔王同士の会話では同格の存在として名乗ります)
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