クロノと旧知の窮地
街の外れから爆発音が鳴り響くと同時に獣人たちに動揺が走る
「な、なんだ?!!」
「しゅ、襲撃か?!」
「あ、あれを見ろ!!何か来るぞ!!」
その声に呼応する様に数百も陰影が空中からも地上からもこちらに向かってくる
その陰影を凝視すると虫型の魔物だと分かる
僕は即座に後ろで護衛していた騎士団に声を掛ける
「騎士団よ、魔物を、滅せよ。」
「「はっ!!」」
騎士たちは呼応すると同時に地上から向かって来る魔物の方へ向かっていく
(獣人は空は飛べないな・・・)
そう思い【暴喰ノ口】を2回発動させる
すると黒い球体が2つ出現し、黒い触手で近づいてくる魔物を捕縛し喰っていく
(さて・・・)
襲い掛かってきた魔物たちは突然襲ってきたのかそれとも・・・
そう思考しようとした瞬間、
「おいおいおいおい!!!!何だこの黒いのは?!!!邪魔だぁ!!!」
突然上空から大声が聞こえ、触手が引きちぎられた
その声を聞くと同時に僕の心臓がドクンーーと高鳴る
(まさか・・・)
僕はこの声を聞いた覚えがある
仮にも数年間、毎日の様に聞いていた声だ
聞き間違える筈がない
確信に近い気持ちで声がした上空に視線を向ける
すると相手もこちらに気づき、視線が合うと不敵に口角を上げてこちらの方へ近づいてきた
「お前が薄汚ねぇ獣人の親玉かぁ??」
「・・・ローエル。」
ニヤニヤとした表情でこちらを挑発してくる言葉を聞ける余裕もなく、人族だった魔族の名前は発してしまう
「ん?お前、俺様を知っているのか?」
ローエルは嘲る様な表情を止め、こちらを凝視してくる
こいつは間違いなくローエルだ
人族にはなかった角を頭に生やし、翼が付いてはいるが間違いなく【勇者】ローエルだ
だが、奴は僕の事が分からないのだろう
仮面を付けて、ローブを纏い姿形が分からない上に獣人の王になっている僕を彼の知るクロノ=エンドロールと結びつけるのは無理があるだろうな
「人族の、【勇者】ローエル・・・我の敵足り得る、其の存在は、認識しておる。」
僕が半分誤魔化しながらそう告げると途端に機嫌がよくなる
「そうか!!俺様の名声は魔族にも知れ渡っているか!!薄汚ねぇ獣人の親玉の癖に勤勉じゃねぇか?!」
ローエルがそう発すると同時に後ろに控えていたルーシャや近衛兵が殺気だつ
「驕るな、【勇者】・・・否、元【勇者】。【勇者】は人族固有の称号よ。其は最早、名も無き魔族と同類よ。」
ルーシャたちを手で制しながらローエルに対して言い返すと明らかに怒りの表情を醸し出す
「違う違う違う違う!!!!俺は【勇者】だ!!【勇者】で魔族だ!!俺こそが最強なんだ!!」
「何を否定す?其は魔族だろう?【勇者】等ではなし・・・其のステータスボードを、確認でもするが良い。」
「う、五月蠅い!!俺は【勇者】だ!!【勇者】なんだーーー!!!」
そう叫びながら魔力を込めた拳を振り上げ突進してくる
(それにしても・・・)
ローエルの攻撃が単調且つ大振りの為に造作も無く避けつつ思案する
彼は普段はどちらかと言えば冷静な奴だった筈だ
僕を殺すときは感情を剥き出しにしてはいたが、余程切羽詰まった時でないと感情がここまで昂る事は無かった
明らかに性格が変わったのは本性を出したのか、魔族化した事に関係しているか・・・
(・・・探るか)
「どうした【勇者】?其の力は、その程度か?」
「うるせぇ!!!俺様の力はこんなもんじゃねぇ!!」
「魔族化して、その程度とは・・・【勇者】とは羽虫と同類か・・・」
「まだ力に慣れていないだけだ!!俺様が使いこなせればお前如き・・・あぁーーーめんどくせぇ!!」
ローエルは打撃を諦め帯刀していた剣に手を掛ける
「大体、この国は【魔王】はいないんじゃなかったのかよ?!!お前は何者だーーー!!」
そう言いながら剣を振りかぶり斬撃を飛ばしてきた
土煙が巻き起こり視界でローエルが見えない
追撃が入るかと思い気配を感知しようとすると前方から
「・・・はっ!!雑魚が!!」と勝ち誇った声が聞こえてきた
自分が強者となったと勘違いして傲慢になっているな
僕は斬撃を喰った【暴喰ノ口】をそのまま帯同させ、敢えて反撃をせずに立ち尽くした
僕はこれから宣言する
クロノスの国民ではなく
同盟相手でも無く
敵対関係を起こしている相手に対して
「なっ!!!」
土煙が晴れ、僕の姿を確認したローエルは驚愕の表情を浮かべる
「・・・我は【魔王】、【黒家クロノス】の【魔王】也。」
そう告げると同時に、僕は魔力を敢えて噴出させた
いつも有難う御座います!!
「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非とも宜しくお願い致します!!
ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!




