クロノの観念と鑑定
「やっと少しずつではあるけれど国の事が決まってきたね・・・」
僕は城の私室でルーシャに自分に言い聞かせる様に話しかける
「はい。これもクロノ様が民の事をお考えくださっているからです。」
その言葉に僕はゆっくりと首を振り否定する
「いや…僕がした事はロキフェルと同盟を取り付けた事くらいだよ。それにまだ会議で決まっただけで実際に行動を起こした訳じゃない。皆に浸透して初めて国として機能してくるからね。」
僕のこの言葉は事実だ
ロキフェルと同盟を取り付けた影響は凄まじく、次の日には近隣諸国の知る事となった
なんでも【遊戯国トリクトリロ】から【黒家クロノス】と同盟を組んだと次の日には発表があったらしい
それによりクロノスを牽制していたトリクトリトは勿論、他国も牽制を一旦中止し自国に戻っていった
「いえ、同盟こそクロノ様しか出来ない事です。恐らく父であれば、あの【魔王】から同盟を取り付ける事は出来なかったでしょうから・・・」
「まぁ、お父さんが健在であれば同盟そのものが不要だっただろうからね。」
そう言いながら苦笑してしまう
ルーシャからすれば父はまだ亡くなったばかりだし、あまり話題にしない方が良いかな
「そ、それより明日は改めて国民の前で演説をしないと駄目なんだよね?」
「は、はい!城内の役職者は、勿論全員クロノ様の事を存じておりますが民たちは何も知りません。明日はご尊顔頂き、同盟の件を宣言して頂きます。」
そうなんだよね・・・
即位した数日前は何も知らな過ぎたし、いきなり獣人ではない僕が国民の前に立つと諍いが起こる可能性があると考えて、ルーシャと家臣の人達に報告とクロノス建国の宣言をして貰っていた
「ルーシャ・・・国民の皆から文句とか言われないかな?」
僕のそんな心配を彼女はハニカミながら否定する
「有り得ませんよ。先日の建国宣言でもしっかり説明しましたし、獣人は強い者には従います。国の精鋭7人を瞬殺された旨も伝えておりますから懸念は不要です。」
「殺していないけどね・・・」
「ところでクロノ様。クロノ様の仮面とローブは【真祖】様から賜ったものですよね?」
僕がそう言うと、また話題をすり替える
まぁ面白いから良いんだけど・・・
「そうだよ。この仮面とローブにも大分慣れてきたなぁ。」
「仮面は話し言葉の変換機能ですよね?ローブには何か機能は付いているんですか?」
「いや、そこら辺の説明は一切無かった。ブロウドさんは魔族っぽいものとしか言わなかったからさ。仮面の変換機能も付けてから分かった位だし。」
僕がそう告げるとルーシャは真剣な面持ちになる
「・・・宜しければ、私が鑑定しても宜しいでしょうか?」
「え?!ルーシャ鑑定スキルもっているの?!」
「はい、私の称号は【豪商人】となっております。獣人の中では力と直結しない為にハズレ称号と言われておりましたが・・・」
「何を言ってるんだ?!【豪商人】なんてレアスキルだよ!!ルーシャには宰相を頼んでいるんだから交渉にも力になって貰えるし、収支に関しても役に立って貰える!今回みたいに鑑定だってして貰えるし!!本当に助かるよ!!」
そう言いながら暗い表情で俯いてしまう彼女の肩を思わず掴んでしまった
「ク、クロノ様・・・」
「あ・・・ご、ごめん!!」
ハッと我に返り慌てて肩から手を放す
駄目だ・・・興奮しすぎた・・・
「ご、ごめんね!思わず・・・」
「いえ・・・嫌ではなかったですから・・・」
そう言いながら彼女の顔が真っ赤になっていた
そんな表情を見ると思わず本能に身を委ねたくなるが必死で自制を試みる為に話題を変えてみる
「じゃ、じゃあ悪いんだけど仮面とローブの鑑定お願いしても良いかな?!!」
「そ、そうですね!!早速鑑定してみますね!!」
そう言いながらルーシャは鑑定スキルを発動させた
「・・・因みに今まで僕に対して鑑定しなかったの?」
素朴な疑問が生じたので鑑定中に悪いと思ったけど声を掛けてみた
「恩人である方の装備品を鑑定したり、【魔王】様に鑑定なんて恐れ多くてできませんよ。」
そりゃそうか・・・
発動すれば今みたいに視覚的にもバレるしな
「ク、クロノ様!!この装備凄いですよ?!!」
そんな事を考えていると、ルーシャの驚いた声で我に返った
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