【間章】ロールの決意と誓い
Ⅴ章最終話です。
「ロール・・・もう見えなくなったよ。」
「はい・・・」
荷馬車に乗ってアカノ様と別れの挨拶をしてからも暫し風景を眺めていた
荷馬車の後ろから離れ皆の居る場所でちょこんと座る
「しっかし、今回はロールのお陰で九死に一生を得た様なもんだなぁ~。」
そう言いながらガハハと笑う仲間のスルバさん
「そうね、ロールが居なければ【剣聖】様はこの荷馬車を追って来なかったでしょうし・・・言い伝えなんて信頼に値しないって身を以って体感したわ。」
同意してくれたのが品の良いいで立ちをした仲間のバルミアさん
「そうですね。こういう事が世間にも広まれば黒髪でも黒目でも住みやすい世界になると思うのですがねぇ。」
そう言葉を続けるのは行商人の長であるパーストン様
「はい・・・」
言葉少なめに回答してしまう
この商人の人たちは黒髪の私でも差別しない凄く良い人たちだ
今まで商人として育てて貰った恩もある
それでも・・・あの時はそれら全てを投げ出してもあの人と一緒にいたかった
私を救ってくれた人
人違いだったけど、私を探してくれた人
強いけれども・・・心は繊細で優しい人
私だけが知っている
あの人は宿に帰り自室に戻る度に泣いている
同室では無く隣の部屋だから声が少し聞こえるだけだけど・・・
私と違い、世界から完全に否定される黒髪黒目の弟を想って泣いている
そんなあの人の慰めでも代用品でも構わない
私といる事で少しでも安らいで貰えれば・・・
ほんの少しでも助けて貰った恩を返す事が出来れば・・・
そんな気持ちで同行を申し出た
町で同行させて貰った時は楽しかった
なんだか私がはしゃいでしまった
ギルドに行った時には冒険者の人の怒鳴られたけど、アカノ様に助けて貰った
助けて貰ったという事実が嬉しくて嫌な事は忘れてしまった
でも・・・
そんな毎日でも夜は隣の部屋にこもり、時々泣き声が聞こえるのが辛かった
遂に別れの日が訪れてしまった
一緒にいた時間でも心から笑ってくれた瞬間は一度も無かった
だから思わずアカノ様と一緒に行くと言ってしまった
でも分かった・・・
分かってしまった・・・
アカノ様の旅には私は足手まといだ
それを魔族が襲撃に来た時にいやでも理解した
そして私は・・・あの人を一度も笑わせる事なく別れてしまった
「ロール、アカノ様の事を考えているんだろう?」
気付けばパーストン様が私に微笑みながら話しかけてくれていた
「いえ!あっ・・・はい・・・」
「君の事は多少理解しているつもりだ。君はあの人に恩を返しきれていないのが辛いんだね?」
「はい・・・」
「でも魔族に襲われたときに君を庇って負傷してしまった姿を見て大人しく諦めたんだね?」
「・・・はい。」
「うん、君の判断は正しいよ。仮にあのまま付いて行ったら・・・アカノ様も君も良い結末を迎える事は出来なかっただろうからね。」
「そうですよね・・・」
「君がアカノ様の助けになりたいと言うならば・・・アカノ様の弟さんを探す手伝いをしてあげればいい。」
「弟さんを、ですか?」
その言葉でパーストン様の顔を見る
「そうだよ。商人として大事な事は情報と人脈、そして誠実さだ。君は誠実さに関しては満点だが、まだまだ情報と人脈が足りていない。それを武器にアカノ様を手助けしてあげなさい。」
「・・・はい!!」
私が随行しなくてもお力になれる事がある!!
そう思うと視界が明るくなる
「そうだぜ!アカノ様は俺たちの恩人でもあるんだ!アカノ様より先に弟さんを見つけて驚かせてやろうぜ!!」
スルバさんはそう力強く鼓舞する
「はい!!」
「私も一緒に協力するわね。私たちが人探しすれば百人力よ!」
バルミアさんもそう言って元気づけてくれる
「はい!」
返事をした所で大事な、言わなければならない事を思い出した
「あの・・・パーストン様。先程は商団を抜けようとして・・・申し訳ございませんでした。」
私がそう言うと3人はキョトンとした表情を浮かべて・・・
そして大声で笑ってくれる
私はその雰囲気が本当に心地よかった
(アカノ様、私は商人として、商人の武器で貴女をお助けします)
誰に聞かれるわけでもなく、私はそう呟いた
いつもお読みいただき有難う御座います!!!
次回からはⅥ章となります!!
ここからは若干シリアス要素が入る予定となりますが、引き続き宜しくお願い致します!!
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