【間章】アカノとクロノの休日
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【グングニル】が2人パーティーだった頃のお話です
◇ ◇
「姉さん、今日は依頼を受けないの?」
「そうだな。偶にはそんな日が合っても良いだろう!!仕事ばかりしていると何のために生きているのか分からなくなるからな!!」
2人で【グングニル】を結成して1カ月余りが経過した
私は強くなりたいと鍛錬をしたがるクロノを引きずって商業街に来ていた
「でも姉さん、今日の晩御飯は仕込み完了しているから、晩御飯は家で食べるよ?」
「あぁ、分かっているさ!!・・・・・・(主夫か?!)」
「なんか言った?」
「いや!な、何も言ってないぞ?!見てみろクロノ、中々趣のある武具屋だぞ!!」
クロノに追及されそうになるのを避ける為に、取り敢えず目に留まった店に話題を転換させた
「話を代えようとして…確かに、趣がある…というか…古いね。」
「意外と腕は確かだが頑固なおじさんが経営しているかもしれないぞ?一度覗いてみよう!」
話題をすり替えた事には気付かれたが、そのまま押し通していく様にした
◇
「ビックリする位…充実していなかったね…」
「あぁ…うん…」
趣があるというか、単純に経営難だったみたいだ
品質は駆け出しの冒険者でも買うか怪しい位の品質に加えて、店主は気弱な感じで強く勧める事も出来ない様子、従業員の人が接客もせずにカウンターでお茶していたのが衝撃的だった…
「だ、だがああいう店もあるんだという事を知った事が収穫だな!!ほらクロノ、屋台で肉串を焼いているぞ!」
「ほ、ホントだね!確かに少しだけお腹空いたかも!」
微妙な空気を変える為に話題転換をはかるとクロノも乗ってくれる
「おじさん、肉串2つお願いします。」
「はいよ!!嬢ちゃん冒険者かい?!」
「まぁ博打要素が強い職業だが頑張りな!!ほら2つ!!」
「有難う御座います。」
購入した肉串を持ってクロノ方へ近づいていく
クロノは、自分の髪と目を気にして自分から必要な時以外に店舗を巡ったりしない
だから屋台に行ったりするのは私の役目だ
クロノが1人で、どうしても買い物が必要な時は帽子を被り髪色を隠して購入する
そんなクロノを見ていると痛ましくなり、以前私は一緒にいる時には帽子を取って一緒に居て欲しいと告げた
クロノは「姉さんに迷惑が掛かる。」と言って頑なに拒否していたが、お願いし続けた事により今はもう私と一緒の時は帽子を取って横に居てくれる
「はい、肉串だよ。」
「有難う、ねえさん。」
そう言って2人で肉串を頬張りながら屋台巡りを続ける
歩き回っていると1組のカップルに目に写った
「クロノは…恋人はつくらないのか?」
クロノはハッキリ言ってかっこいい
若干かわいいに寄っていなくも無いがかっこいい
「今はその気は無いけど…こんな容姿だからね。多分欲しくなっても出来ないよ。」
そう言いながら苦笑する
この世界は黒髪黒目に相変わらず厳しい
私自身は全く気にしないが、世界の目で言うならば彼のいう事は正しいのだろう
「そうか…だ、だったら…」
「そういう姉さんこそどうなの?好きな人、いないの?」
私が心の準備をしているとクロノが質問してくる
「わ、私か?!私はいないぞ!!今は冒険者として何より大事だからな!!恋や愛に現を抜かす暇はない!!」
咄嗟の事で頭が真っ白になり早口で否定してしまう
「うん…そうだね。まだまだ冒険者として安定してないしね!頑張うね!!」
そう言ったクロノの顔が少しだけ寂しそうに見えたのは…
『この姉は大丈夫か?』という心配なのか、それとも…
けれども出鼻をくじき、冒険者が第一と今言った私には訂正出来る勇気は無かった
…
……
………
ねぇ、クロノ
あの時に
勇気を振り絞って告げていたら
私たちは
何かが変わっていただろうか?
それとも
なにも変わっていなかっただろうか?
そんな事を今でも思ってしまうよ…
いつも有難う御座います!!
【間章】をもう1話挟んでⅥ章へ移行します!!
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