アカノの交渉と同行
Ⅴ章本編はここで終了です!!!
「お願い、ですか…」
「はい。【サンドール商業国】は他国との貿易流通に秀でているとお聞きしております。」
「勿論その通りです。」
「そこでお教え頂きたいのですが…【インスラント聖国】とは商売されていらっしゃいますか?」
私がそう尋ねると支部長は少し思案した表情となる
「勿論、聖国ともお付き合いはさせて頂いておりますが…アカノ様のお話は要領を得ませんね。」
彼の言わんとせん事は当然だ
だが確認もせずに本題には入れない内容でもある
「失礼致しました。何分、あの聖国の事ですので…単刀直入にお願いしたいのですが、【インスラント聖国】行きの荷馬車護衛として、私を雇って頂けませんでしょうか?」
私がそう尋ねると目を見開いて驚く
「アカノ様は…【インスラント聖国】がどの様な国かご存知なんですよね?」
私は無言でうなずく
「であれば尚更…よりによって聖国ですか…」
そう言いながら彼は色々と思案し始める
【インスラント聖国】は唯一神としてインスラン神という神を崇める宗教国家だ
世界でもこの宗教に属する人族は多くいるかなり有名な神だが徹底した宗教ぶりな国でもある
まずは入国できるのは、インスラン神を崇拝している敬虔な教徒に限られる
そこに他国の【名誉騎士】だろうが王族だろうが国に入る事は教徒で無い限りは許されない
それに加えて商売に関しても窓口の人族は教徒でなければ商売しない
にも関わらず国として成り立っているのは高い自給自足率と鉱石や魔石が豊富な場所なのが理由だ
あらゆる点で鎖国に近い状態の国にも関わらず発展されている国だった
「私にその様な頼み事をしているという事は、当然アカノ様は教徒では無いのですよね?」
「そうですね。神に近しいという意味では【真祖】は信じておりますが、インスラン神は信仰しておりません。」
「形だけの信仰はあの教徒は出来ないですからね…」
そう、あの宗教の面倒な所は形だけの信仰は認められない
【インスラント聖国】内にある収容所の様な場所でミッチリ勉強し、試験を受けなければ国に認められる事は出来ない…
逆に他国の人族が認められるのは一種のステータスとなっていた
「アカノ様、今回のお話は我が国としては非常にリスクの高いお話だと思わざるを得ません…」
「はい…」
その言葉は当然だろう
万一バレてしまえば、最悪国家間の取引が停止される
「ですが、貴女には国として大きな借りがあるのも事実です。そこで提案なのですが…貴女には国境付近までの警護をお願いしたいと思います。国境付近まで警護して頂いた時点で依頼達成となりますので、後はお好きにどうぞ。」
「つまり…?」
私の質問を手で制して支部長は言葉を続ける
「国境付近では商売柄、あちらの検問者と話し込んでしまいますが、決して【インスラント聖国】側には越境しないで下さいね?」
言葉の意味を咀嚼して私は頷く
「有難う御座います。」
「いえいえ、私たちは国境付近までの護衛依頼をしただけです。」
そう言いながら微笑む支部長に頭が下がる思いだった
「タイミングが良いと申しますか…明日に【ギスファール魔導国】を通り【インスラント聖国】へ向かう荷馬車が御座います。そちらの護衛をお願い出来ますか?」
「宜しくお願い致します。」
その言葉に頷くきながらそう答えた
◇
評議会支部を出て、私は思わず拳を強く握りしめた
「私は…弱い…」
思わずそう呟いてしまう程に私は弱い
ロールが後ろにいるだけで十分に力を振るえない…打開する術がない…
【魔王】に比べるとどうしても勝てる気がしない…
旅の果てに【真祖】と戦闘になる可能性も十分にあり得る
「私は、弱くなったのかもしれない…」
クロノがいなくなってから私は心身ともに弱くなっている気がする
【インスラント聖国】に到着するまでに、クロノがいた時の強さに、いやそれ以上に強くなる事を決意して私は歩き出した
…今の私の心には決意と渇望の炎が渦巻いていた
いつも有難う御座います!!
Ⅴ章本編はここで終了です!!
【間章】を挟んでⅥ章にいきたいと思います
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