アカノの初心と所信
あの騒動の後、ギルド支部長が出て来て正式にロールは謝罪されていた
彼女自身がその謝罪を受け入れた為に、私としてはそれ以上に憤慨する理由はない
その際に受付嬢に頼んでいる依頼を可能な限り早く行ってほしいと要望を出すと、せめて15日前後は猶予が欲しいとの事だった為にそれは承諾した
…15日は長いとも思えるが、首都本部に伝達する事を考えればそれ位の期間を要するだろう
この世界での通信手段は限られている
馬を走らせて伝達する方法とは別に、『魔法鳥』という魔道具の一種を使い伝言するかの2パターンだ
馬を使用すると私の足でもルナールのいる【フィングルス王国】まで向かうだけでも15日前後は掛かる
魔法鳥を使用すればここからであれば4日程度で行く事は出来るが、如何せん高価な魔道具の為にギルドでも首都圏にしか置かれていない
ここから【サンドール商業国】まで約6日、魔法鳥で約2日と考えると15日前後でも急いで貰っている方だ
ギルドを出てロールと2人で評議会支部へ向かう
「アカノ様…何度もお助け頂いて申し訳ございません。」
そう言って心底落ち込んだ表情を浮かべる
「いや、今回は私の落ち度でもある。ロール、気が回らなくて済まなかった。」
そう言って謝罪すると彼女は両手を振って否定する
「いえいえ!!アカノ様は何も悪くないです!私が無理やりついてきた様なものですし!!」
…まぁ一概に否定はできないが、こちらにも利があると思って了承したのだから注意不足であった自分が悪いだろう
私がどう答えるな悩んでいるとロールがポツリと質問を投げかけてくる
「あの…アカノ様は黒髪の方をお探しなのでしょうか?」
「あぁそうだ。弟なのだが黒髪黒目の青年を探している。」
ロールはそれを聞いてビックリした表情を浮かべる
「く、黒髪黒目ですか?!そ、それは…大変ですよね…」
黒髪の彼女だからこそ思う事があるのだろう
2人で冒険者をしていた時に絡まれる事も少なくなかったし、村でも差別されていた
初めていった街では奇異な視線も投げかけられていた
クロノは言わなかったけど、私の知らない所で迫害に合っていた事もあるだろう
「そうだな…だが彼は大切な弟だ。彼の所在がハッキリするまで諦めるつもりは無いさ。」
そうロールに告げてハッとする
そうだ…生きているかもしれないのに諦めるなんて有り得ない
状況的?時系列?常識?そんなものは後回しだ
まずは目撃情報を全て探しつくす
全てはそれからだ
ロールがクロノでなかった失望からか、そんな私にとっては当り前の事を失念していた…
ルナエラや【サンドール商業国】評議会から新たな情報が無ければ帝国でも聖国でも向かえば良いのだ
「ロール…有り難う。大事なことを思い出したよ。」
そう言って彼女に微笑むとキョトンとした表情をする
「え~と…良かった、のですかね?」
「あぁ!間違いなく良かったことだ!!」
そう告げると顔が赤くなり俯きだして「私は女、私は女…」と何かを呟いているが、よく分からないのでスルーしておこう
それから暫し歩いていくとローエルが1つの建物を指さした
「アカノ様到着しました!あれが【サンドール商業国】評議会支部です!!」
そう言われた建物は白い壁に覆われた貴族の邸宅の様な建物だった
私たちはそのまま建物に入り、窓口らしき所に向かう
先程の失敗を繰り返さない様にロールも一緒に連れていった
「こちらは【サンドール商業国】評議会支部です。どの様なご用件でしょうか?」
窓口の女性がにこやかに応対してくれる
だが、目に私の冒険者の身なりとロールの黒髪を見て若干侮蔑の色があるのを見逃さなかった
「私は【サンドール商業国】の【名誉騎士】となったアカノ=エンドロールです。支部長にお会いしたいのですが可能でしょうか?」
ここは少し強気に肩書を使用するべきだろう
押し付けられたとは言え、使えるものは使わなければ要らぬトラブルが巻き起こる
私の判断が功を奏したのか、彼女は驚いた表情を浮かべた後に「少々お待ちください!」と言い残して確認を取りに行ってくれた
その後ろ姿をロールと顔を見合わせて苦笑してしまったのは秘密だ
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