アカノと黒髪と八束水
ロールに同行されてギルドへ向かう道中から大変だった
「旅の御方、お名前をお伺いしても宜しいですか?」から始まり
「アカノ様、あの露店は中々良質な食材で調理してますよ!!」を挟み
「あの時のアカノ様は騎士様の様で本当にカッコ良く、見惚れてしまい鉄格子から出るのを忘れておりました!!」までいった
「はーーーー……」
なのにまだギルドに着いてもいないのだから深い溜息が出るのも致し方ない…
「まぁまぁアカノ様、溜息をついたら幸せが逃げていくと昔の偉い人は言っていたそうですよ。ここは前向きに私みたいキュートで明るい女の子に好かれた事に喜びましょう!!」
ロールはそう言いながら横でニコニコと笑っている
「はは…そうだね…」
そう曖昧な返事をし歩いていくと、ロールが声を上げる
「アカノ様、到着しました!ここがギルドです!!」
そう言いながら指を差す先には確かに「サンドール商業国ギルド バスガ支店」と書かれた看板が見える
首都のギルドとは違い、少し大きめの民家程度の大きさしかなく、どことなく年期を感じさせる建物だった
扉を開き、受付の場所を確認しそちらに向かっていくとロールもそれに続いてくる
「ロール、悪いけれども少しだけ待っていてくれないか?簡単な伝言だけだから…」
プライベートなことな為にロールにも余り聞かせたくないと思い、そう言うと素直に従ってくれた
「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」
マニュアル通りに受付嬢が応対してくれるのでルナエラ宛てに所在地の報告とクロノの情報を求める旨のメッセージを伝えた
◇
「………!!!」
ギルドの入口付近が妙に騒がしい…そう感じて見てみるとロールが冒険者たちに囲まれている
「おいおいおい!!!黒髪がなんで此処にいるんだよ?!」
「お前が此処に居ると縁起悪ぃんだ!!さっさと出ていけ!!」
その言葉を聞いて自分の愚かさに気づいてしまった
黒髪黒目のクロノ程ではないにせよ、黒髪であるロールも忌諱される存在だ
半魔族と呼ばれたり、不幸になると言ってくる輩はどこにでもいるだろう
そんな彼女を人目に付く扉付近で待たせてしまった…これは完全に私の失敗だ…
「おい!何とか言えよ!!」
「ひっ…」
私はロールに振り上げようとした冒険者の拳を素早く掴む
「な、何だお前…」
「私は彼女の連れだ…」
そう言うと男の顔が卑屈な表情に変わる
「お前…こんな半魔族と連れあってんのか?よく今まで無事だったなぁ~?!」
そう告げてくる男の表情が私をよりイラつかせる
警告の意味も込めて、掴んでいる腕に力を少しいれると
「いてててて!!!や、止めろコラ!!」
そう言いながら腕を振りほどこうとする
「3つばかり教えてやろう…私と彼女は昨日に出会ったばかりだ。」
「へっ!だったら今すいててててててて!!!」
「2つめは彼女のお陰で彼女の仲間は命が助かった…彼女が黒髪でないと私と出合う事はあり得なかったからな。」
私が少しばかり圧をかけると周りの冒険者は怯えた表情で見てくる
「最後に…弱い冒険者ほど不確かな言い伝えを重視しているものだ。強い者ほど自分の目で確かめて結論を導き出す。」
私が少しばかり意識して低い声を出しそう言うと、誰も異議を申し立ててくる輩はいなかった
「アカノさまぁ…」
ロールが涙を目にためてこちらを見つめてくる
私はもう片方の手で彼女の頭を撫で「もう大丈夫。」とだけ告げる
「あ、アカノ?!アカノ=エンドロール?!!」
「【剣聖】が何故ここに?!!」
「あの赤髪、あの強さ…本物だ!!」
そう言いながら周りの冒険者は驚いた表情で
私の存在は【サンドール商業国】だけでなくこの町にも伝わっているみたいだな
ただ…
「アカノ=エンドロール様?!!アカノ様に腕を掴んで貰えるなんて有難い!!もっと強く掴んで貰えませんか?!!」
ただ…こいつは心底気持ち悪いなと感じてしまった
いつも有難う御座います!!!!
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