【間章】ロキフェルの感想と想像
「いやー、クロノスの【魔王】は本当に面白いね!!」
【黒家クロノス】の【魔王】との同盟締結帰りの馬車でマリトナに対して感想を漏らした
「ロキフェル様のお眼鏡にかなった様で何よりですが、あの場で同盟締結をお約束されて宜しかったのですか?」
マリトナがこんな質問をしてくるのは至極当然だ
僕が【魔王】になってから近隣諸国から同盟の呼びかけは何度かあった
だけど僕はそれらすべてを袖にしている
「問題無いよ。クロノは強い。そして賢しい。そして何より面白い!!僕が求めている要素を全て満たしていたからね。」
そう、僕が今まで同盟に応じなかったのはそれが理由だ
強いだけでは振り回されて面白くない
賢しいだけでは見ているには退屈で面白くない
けれど彼は違う
僕を短時間での制限手合わせにも関わらず、彼は僕に奥の手を使わせる一歩手前まで追い詰める位に強い
僕の興味を引く為の会話は秘密を簡単に暴露しない賢しい
そして突然現れた獣人ではない【魔王】…
僕自身が興味をそそられるのも仕方が無い事だろう
そんな僕を見ながらマリトナは少し神妙な表情をする
「ロキフェル様…先程に【黒家クロノス】の属国になるというお言葉は本気でしたよね?」
「うん、半分はね。」
そう言いながら笑うと彼女は真面目な表情で言葉を続ける
「ロキフェル様…【遊戯国トリクトリロ】が属国となりますと今までの様に面白い事に首を突っ込み辛くなりますよ?」
「うーん…それはそうかもしれないけどね、クロノの下に就く方が面白そうな気がするんだ。」
これは僕の直感だ
彼は何かしでかす
そんな彼の下にいれば、彼のやる事を間近で見る事が出来る
だが飽くまで直観だ
だからこそ彼を知る為に冗談を言う様な言葉で濁した
「ロキフェル様、この問いが不敬であれば処罰して下さい。アナタ様と【魔王】クロノ=エンドロールが対峙した場合…どちらの方がお強いですか?」
そう言いながら真っ直ぐ僕の目をみてくる
生真面目な彼女の事だから本当に処罰される事を覚悟で聞いているんだろうな…
「う~ん…本音で言うと分からない。僕が奥の手を隠していたのと同じで彼も奥の手を隠しているだろうしね。でもあの感じを見ると彼の方が対抗手段の手札は沢山持っていそうなんだよな~…」
「なんと…」
そうなんだよ、彼は奥の手の更に奥の手を持っている気がする
僕も今ある13ヶ国の中で弱い【魔王】だと思わないけど…
彼はもしかすると上位の強さを持っているかもしれない
「マリトナ、僕は今後クロノの動き方次第では本気で属国になっても良いと思っているよ。君が言った強さもそうだし、国内に対する動き方もそうだ。彼はもしかすると魔族領を統一する可能性すらあると個人的には思っているからね。」
「ま、魔族領統一ですか?!それは流石に…」
目を見開いて驚くのも無理がない
それはどの国の【魔王】であっても成し遂げられなかった事だ
理由は多々あれど、大きな要因の1つは明確だ
「マリトナ、クロノが獣人にしている事は知っているだろ?」
「は、はい。偵察部隊からの報告書を見ました。」
彼女がそう言うと僕は頷きながら言葉を続ける
「クロノは新参者でましてや獣人でないにも関わらず、国の中心部から反対も起きず即位し、国庫を開き国民の生活を考え、地方領土に対して騎士団を派遣している。これが何を意味するか分かるだろう?」
僕がそう言うとハッとした表情に変わる
そう、魔族は自分の種族を第一と考える
どんな名君といわれた【魔王】でも他種族に対して手厚くした例は無い
それは源流で考え方が違ったり、選民意識で首都部分の反乱リスクを下げさせたり、手軽に扱いやすい奴隷が手に入ったりと様々だが、どうしても区別したがる
その区別による死んでも属国にならないという理由からどの国も侵攻に対しては死んでも反抗する為に攻めきれない
なのに新たな【魔王】の動きにはそれがない
今日従えていた獣人たちも本気でクロノを守ろうとしていた事から忠誠を誓っているのだろう
自己種族以外に忠誠を誓っているという事は偵察部隊の報告は正しい
「僕はね、クロノが獣人も悪魔もその他の種族も区別する事なく扱ってくれる様な【魔王】であり続け、容易に自国を脅かさない強さと賢しさがあるならば……分かるだろう?」
そう言いながら窓の方へ視線を向けると自然に口角が上がる
「さて、【魔王】クロノ=エンドロールは、どれだけ面白い【魔王】だろうね…?」
これからの事を考えると面白くて仕方なかった
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