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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
最終章【解体神書】
638/640

【浮上・無情】


「ハァ・・・ハァ・・・主、まだですか?」


【神】の眼前には満身創痍にも拘わらず未だ刃を離さずに射る様な目つきで対峙するマリトナが映る

足元には血だまりが出来上がってしまっており、彼女には最早勝機など欠片もない事は誰にでも想像できた


「もう・・・ちょっとだ。もうちょっとで・・・」


切羽詰まった声をあげながら額の汗を拭う事もせず、クロノに向かって必死に【色欲イザナウ目】を発動させる姿は、当人を知る者からすれば凡そロキフェルらしく無い立ち居振る舞いに映るだろう


「やれやれ・・・曲がりなりにも私に血を流させたのだ。もう少し粘ってくれ給えよ?」


そんな剣呑とした雰囲気の中、【神】は緊張感を一切感じさせない姿勢でぼやく様に話しかける

その姿には焦燥感などは一切見当たらず、何処か退屈しのぎに指遊びをしているかの様な気楽さすら感じた


「くっ!!!」


「君たちの努力に免じて、私は君が生きている限りはロキフェル君の邪魔はしない。但し・・・君が死んでしまえば其処で終了だ。私は一切の躊躇なくロキフェル君の首を刈り取るよ。」


「そんな事・・・分かっているっっ!!!」


「だったらもう少し粘り給え。今の君は高水準の能力を有してはいるものの、凡庸の域を出ない。このままだと私は君に飽きて・・・一瞬で終わらせるよ?」


【神】がそう宣告すると同時にマリトナは背後に回り込む為に駆けていく

瞬間的な素早さでは間違いなく世界を見渡しても高位に位置する程の素早さではある

ではあるが・・・


「【無知ナ脳】。」


だがそれでも瞬間的にとは言え、走行方法を忘却させられてしまう

そしてその結果、スピードにのった状態で足がもつれて自爆してしまった


「どうしたんだい?さっきから私は此処から一歩も動いていないよ。」


「黙れっっ!!!!」


そう断ずると同時に短刀を投げるも短刀が短刀である事を忘れ、一気に霧散してしまう


「先程から同じことばかり・・・君には学習能力というものはないのかな?」


「くっ・・・」


マリトナとしてはそうは言われるものの対抗手段が見当たらない

自分は【魔王】ではなければ選ばれた何かを持っている訳では無いのだ

だからこそ自分が持つ凡庸な能力を極限まで磨き上げ、選ばれた誰かに対抗していくのだという信条があった


そして事実、彼女はその凡庸な能力を極限まで磨き上げた結果、【魔王】にすら倒し得る存在えと自身を昇華させた


昇華させたが・・・目の前の【神】にはそのどれもが遊戯扱いされてしまう

今までの努力も苦悩も血反吐を吐く様な体験も・・・やってもやらなくとも同じだと断ぜられてしまっているのだ


「主っっ!!!!」


「~~~・・・・っ?!!!!来た・・・来た来た来た来た来たっっ!!!マリトナッッ、もう直ぐだ!!もう直ぐお兄さんがやって戻って来るっっ!!!!」


マリトナの苛立つ声に呼応する様に、ロキフェルは喜色を孕んだ声色で返答する

そしてその声を聞いた【神】は意外そうな表情を浮かべた


「・・・・・・本当にクロノ君が戻って来る?私の【無知ナ脳】を受けて?・・・・・・ふむ。」


暫し思案の表情を浮かべた後、【神】は躊躇する事なくロキフェルの方へと歩みを進めた


「っっ?!!!」


「クロノ君の事例も非常に興味深くはあるが、効率を考えるとさっさと終わらせた方が良さそうだ。・・・・ロキフェル君、残念ながらさっさと終わらせて貰うよ。」


「なっ!!??私はまだ「あぁ、さっさと死んでくれ。」


鼻歌でも口ずさむかの様に相手の死を願い、剣を振りぬく

当然の様にマリトナは回避を試みるも、【無知ナ脳】の効力により斬撃をまともに受けて倒れ込んでしまった


「・・・ちく・・・しょう・・・」


「今は別れの言葉すらも惜しい・・・では、ね。」


【神】はそう淡々といい放ち、ロキフェルに無情の一撃を振りぬいた

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