【生命・説明】
「それって・・・だから・・・」
「そう、君の考えている通りだよ。」
まるでクロノ思考を読み取ったかの様にサイクスは肯定する
だが、彼の先読みは決して間違えていない
その言葉を裏付ける様にサイクスは答え合わせもしていない答えの解説を始める
「だからこそ私は魔族と人族、あと僅かながら龍族との交配を始めた。いやぁ、実際大変なんだよ?先ずは人族の雄と魔族の雌を交配させたが、結果は思わしくなくてね。サンプル30組中、交配に成功したのは僅か1組だった。更にその子も流れてしまってね・・・」
何故か得意げな表情を浮かべて己の実験の失敗談をつらつらと嬉しそうに話し始める
目の前の【神】・・・いや、クロノ自身は【神】だと思ってはいないが・・・
その【神】が最早異物にしか見えなくなってきていた
「龍族はサイズがデカすぎてね・・・人族化できる龍族を探すだけでも一苦労だったよ。個体数が少ない上に人族化できるとなるとどうしても限られてしまってね、だからこそ私は先ず人族と魔族の交配を主軸に置いたんだ。いやぁ・・・私の眷属が創ったモノだから簡単に出来るだろうと思っていたのだけど、他者が介入すると中々上手くはいかないモノだねぇ・・・だからこそ遣り甲斐があるんだろうがね。そうそう、やりがいと言えば・・・」
「・・・・・・」
クロノはサイクスの話を聞き流しながら、絶句するとはこの様な状況を指し示すのだろうと俯瞰的な感想を頭に浮かべた
この世界は狂っている・・・当然だ
この世界を創ったモノが狂っているのだから、どうしたって正常である筈が無い
そんな至極当然な結論を頭に浮かべ、クロノはただ黙る事しか出来ないでいた
「・・・そうして私は別のアプローチに取り組んでみた。生物の進化とは須らく危機的状況を乗り越える為、若しくは環境適応の為に起こり得る事だという事は君も理解できると思う。であれば魔族と人族の各々を危機的状況に追い込んだ場合は成功率が上がるのではないか?と僕は予想した。するとどうなったと思う?!」
「・・・・・・お前は」
クロノはそんな己の表情を省みる事なく、饒舌に話続けるサイクスに対して徐に口を開く
するとクロノの言葉を聞き逃すまいとする様にサイクスはピタッと口を閉じる
「お前は・・・何処から・・・いつから計画を始めたんだ?あの時、ブロウドさんが言ったお前の生い立ちは・・・嘘だったのか?」
そう尋ねるとサイクスはキョトンとした表情を浮かべて固まった
そして徐々にこみ上げてくる笑いを堪えるかの様に顔を真っ赤にし・・・最終的に「プフゥー」と笑いを堪え切れずに発したかと思えば唐突に笑い出す
「クックックッ・・・クロノ君・・・其処からかい?其処から説明しなければならないのかい?」
その言葉は知っているモノが知らないモノを卑下するかの様な声色を含んでいた
彼の表情を見た瞬間、クロノは怒ろうとするものの、自分が知らない事を真実である為にその嘲りを甘んじて受け入れる
「クックックッ・・・まぁ良い。クロノ君、君のその素直な性格に免じて簡単に説明してあげよう。良いかい?先ず私は【真祖】である出来損ないの眷属が創った世界に絶望した。これは良いね?だったら私が次に行うべき選択肢は幾つかある・・・1つ目、この世界を消去する。2つ目、この世界を出来損ないから取り上げて改変する。3つ目・・・この世界の内側から改変する。」
「・・・お前は3つ目を選択した訳だ。」
クロノがそう答えるとニンマリとした表情を浮かべて言葉を続ける
「その通り。1つ目は即座に却下したよ。消去するのは簡単だが直ぐに別の世界を創造出来る訳じゃないからね・・・無駄な空白期間が生まれてしまう。それに私の創っていない世界の記録も見方によっては貴重だからね。」
サイクスは得意げにそう言い放つと言葉をつづけた。