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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
最終章【解体神書】
628/640

【観測・対策】


「記録・・・」


その言葉はクロノの心のかなり深い所まで抉っていく

その心情を対面に座する【神】では知り得ないだろうが・・・


「お前の言う記録とは・・・僕らの事を言っているんだよな?」


「あぁ、勿論。」


「この世界に居る万物には目を向ける事は無く、ただ淡々と記録をとっていたと・・・そう言うんだよな?」


「その通りだ。」


サイクスはクロノの質問の意味を理解しているのかしていないのか、罪悪感など皆無である様な口ぶりですんなりと肯定する


「お前の言う、次の世界・・・次の次の世界の為に・・・詰まりこの世界には何の感情も抱いていないという事だよな?」


そしてクロノは突き刺す様な視線をサイクスに浴びせながら、より責め立てる様な口調でそう口を開いた

だが・・・その言葉に晒された当人は「どうだろね・・・」と呟きながら暫し思案顔を浮かべる


「そうだね・・・何の感情も抱いていないと言えば・・・それは嘘だね。君たちの世界は君たちの世界としてちゃんと感情を抱いているよ。」


「・・・・・・どんな、だ?」


「そりゃあ、『あぁ、こうなっちゃうのかぁ』だったり『本当に愚かだなぁ』だったり『次の世界ではこの思考は要らないかなぁ』だったり・・・色々だよ。」


「お前はっっ!!!!」


「まぁ待ちたまえよ。」


激高し殴りかかろうとするクロノを、サイクスは手を広げて制止させる

そして・・・暫しの沈黙を孕ませ、徐に口を開いた

それも先程の気軽な口調ではなく、真剣な、そして侮蔑を孕んだ口調で・・・


「君たちの居る世界・・・それは私からすれば今までで1番完璧からほど遠い失敗作である世界だったよ。」


「なっ?!!」


「私は先ず【真祖】を創った。そして自分ではなく彼らが用意した世界であればまた違う視点で完璧な世界がアプローチされると考えたんだ。飽くまで私の要望を彼らに伝えた上で、ね。・・・彼らに任せて数百年が経った。私はプレゼントボックスを広げる前の期分の様にドキドキしながらこの世界に降り立ったよ。」


「・・・・・・」


「するとどうだい?人族と呼ばれる脆弱な存在が小賢しく生きており、魔族と呼ばれる存在は魔族領だけで力を誇示し、龍族とよばれる存在は我関せぬを貫いている。・・・私は此処まで混沌とした阿鼻叫喚を世界を席巻する様な世界など見た事が無いよ。プレゼントボックスの中身はゴミ・・・まさにそんな気分だったよ。」


クロノは即座に否定する言葉を投げかけようとした

・・・が、そんな言葉を投げかける事が出来なかった

この世界は美しい・・・そんな陳腐な言葉すら出てこない世界がこの世界である事を彼は知っている


人族であったときは迫害され、虐げられ、無意味に殺された

魔族であった時に他領でみた魔族達は、瘦せこけ、目は虚ろで、【魔王】は誰もが例外なく傲慢だった

そんな世界が素晴らしいと、美しいとはとても言えなかった


「だから私は【真祖】に頼るのは止め、この世界をどうすれば良いのか、どうすれば素晴らしくなるのかを考えた。この世界が少しでも素晴らしくなるその1つの結論が・・・【不吉ノ象徴】である黒髪黒目である君たちだったのだよ。」


「・・・どういう事だ?」


彼の突飛な回答で思わず思考は一瞬停止する

黒髪黒目はこの世界で忌み嫌われる存在だ・・・

それがどうしてこの世界を素晴らしくする要素があるのだろうか?

そもそも彼は人族と魔族のハーフとして生まれ落ちたとあの時に聞いていた

様々な疑問が脳裏に過ぎる


「なぁに、非常に簡単な回答さ。この世界を少しでも良くするその答えを、ね。その時に私が最善だと思えた結論が、『この世界を単一民族だけにすれば良い』だった。」


「なっ!!」


「そして私は考えた・・・人族はどうだろう?とね。いやいや彼らは小賢しく生き長らえ、この世界を傲慢にも利用して絶滅するだろう。なら魔族はどうだろう・・・いやいや彼らは力に溺れるだけの民族だ。私の求める完璧な世界には何も齎さない。・・・龍族はどうだろう?一見、彼らは私からすればアリだ。アリだが・・・彼らは結局の所何も考えていない。であればそこにはただ在るだけの世界しか存在しない。・・・じゃあどうすれば良い?」


そう言っていつか見た様なニチャァァァとした表情を浮かべて次の言葉を断言する


「だったら魔族の力と人族の小賢しさを兼ね添えた存在のみが居れば私の求める完璧な世界に近づくのではないかと私は考えたのだよ。」



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