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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
ⅩⅧ章【ボクトアナタトワタシトキミト】
624/640

EPILOGUE【II】


「・・・・・・」


山の山頂脇にある崖に腰を下ろした人物はただ風を感じていた

全身ローヴを身に纏い、何をするでもなく、何を言うでもなく、ただ其処に在る

ただ・・・そのローヴの汚れや解れがどれだけの期間、其処に在ったのかを物語っている様でもあった


「・・・・・・」


「・・・見つけましたよ。」


そんなただ在るだけの日常をどれだけ過ごしていたのだろうか?

気が付けばそんな存在である人物に対し、1人の女性魔族を後方から声を掛ける

ただその声色は探し求めていた存在を見つけた様な感動的な声色ではなく・・・どちらかと言えば対極的な、仇を見つけ出したかの様な声色だった


「・・・・・・」


そんな女性魔族の声にもピクリとも反応せず、ただ虚ろに前方に視線を向けている

だが・・・声を掛けた女性魔族はそんな反応も意に返さず言葉を続ける


「貴方様の事ですからこの2年間、ただウロウロと彷徨っていただけでしょう?」


「・・・・・・」


「私は・・・この2年間で強くなりましたよ。血反吐を吐く思いで戦場の最前線を駆り、自分よりも格上だと思える魔族にも一切臆しませんでした。」


「・・・・・・」


「そんな私に対し貴方様は・・・何て体たらくなのですかっっ!!!!」


女性魔族がそう叫んだ瞬間、周りの空気が震えたかの様に振動していく

だが・・・声を掛けられた当の本人はそれすらも気にしていない様に映る


「・・・・・・マリトナ。」


「・・・はい」


それからどれ位の時間が経過しただろうか?

不意に虚ろな視線を前方に向け続けていた魔族は言葉を発した


そしてその言葉を受け、マリトナと呼ばれる女性魔族も呼応する

相手の視線はマリトナを捉えない・・・だがそれでも存在を認知した様だ


「僕は・・・何かを間違えたのかな・・・?」


「・・・私には分かりかねます。」


マリトナがそう答えると同時に「ハハッ」と渇いた笑いをあげる

当の本人からすれば、正しかろうが間違っていようが、分からなかろうがどうでも良いのだろう

それはまるで独り言の延長戦上にある様な・・・そこに壁があれば壁に語り掛けている様な会話だった

だが当のマリトナはその渇いた笑い声を聞くと同時に一気に雰囲気を変化させる


「ロキフェル様・・・私はこの様な世間話をする為に貴方様を探していた訳ではありません。」


「あぁ、分かっているよ・・・僕との約束を果たしに来たんだろう?」


「はい。」


名を呼ばれた事でロキフェルと呼ばれた男性魔族は初めて視線をマリトナと交える

そして用件なんて最初から分かっていると言う様に軽口で回答した


彼からすればその程度の認識なのだろうという事は容易に窺える

若しくは・・・誰かに自分を殺してほしいと考えているのかもしれないが・・・

そして彼は徐に立ち上がり、身体ごとマリトナの方へ向ける


「じゃあ、始めよっか。」


「この様な骸も同然である貴方様と刃を交えるのは甚だ遺憾ではありますが・・・仕方ありません。」


マリトナはぼやく様にそう呟いて短剣を携え、その言葉を聞いてロキフェルは力なく笑いながら魔力を練り上げた


「始める前に1つだけ・・・クロノ様の件です。」


「っっ?!!」


クロノという名前を聞き、ロキフェルは驚愕した表情を浮かべる

先程までの虚空を見つめる様な目線に忽ち生気が宿る

そして、マリトナはロキフェルのそんな目線を見逃す筈も無かった


「ふふっ・・・クロノ様の名を挙げただけで、ですか。」


「・・・ウルサイ。」


ロキフェルは照れているのか、若干投げやり気味にマリトナの言葉に対しぶっきらぼうに返答する


「・・・ではこれ以上は私を見事倒す事が出来ればお伝えする事に致しましょう。」


「・・・・・・マリトナお前・・・本当に性格悪いよ。」


ロキフェルのその言葉にマリトナは渾身の笑顔を浮かべる

そして、刃を構えると同時にたった一言の言葉を発した


「悪魔ですから」


と・・・

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